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最新理論

 日本の学校の先生は、世界で一番、真面目だと思います。これほど多くの学校で、地道で実践的な研究が行われている国はありません。職業柄、色々な学校の実践報告を聞いたり、読んだりします。実践の部分はなるほどと思う反面、いわゆる理論の部分には唖然とする場合があります。実際には数十年前の古色憤然とした理論にも関わらず、実践報告の中では最新理論としてうやうやしく紹介されていることがあります。大学で現在行われているな最先端の理論と、現場で知られている理論には30年以上の時間のずれがあるように感じます。

 色々な原因がありますが、私の独断と偏見でまとめると理由は二つです。

1.大学の研究者は比較的狭い領域の専門家である。

 これは一般的には「専門馬鹿」と言われます。私は理科教育を専門としていますが、理科教育学全体を分かるわけではありません。私の専門とする領域以外の知識は、下手をすると大学の教養レベル程度です。そのため、学会で専門以外の発表を聞いても殆どチンプンカンブンです。一言弁明しますが、狭い領域に特化することによって、その領域を深めることが出来ます。全領域を深めることは一部の大天才のみが可能なことです。

2.仕事は特定の人に集中する。

 仕事は仕事が出来る人に集中する傾向があります。暇な人に仕事を頼むと約束の期限は守らないが、忙しい人に仕事を頼むと、あっという間に仕上げます。なんとなれば、忙しい人はあっという間に仕上げなければ、後から来る仕事に押しつぶされることをよく知っていますから。

 我々教師の持つ教育理論、心理理論の多くは大学における教職免許科目で学びます。その多くは、100人以上の学生を前にしたものです。先に述べたように、大学の研究者は自分の専門とする特定の内容を講義することは好みますが、概論的に広い範囲を講義することは嫌がります。結果として、それでも引き受けようと言う先生が担当することになります。そのような先生も研究者ですので、教える内容の全ての領域に関して最先端の理論を知っているわけではありません。さらに、みんなが避けるような講義を担当しようとする先生は、人柄からも仕事が集中します。そして、先に述べたように仕事は仕事を呼び込みます。結果として、自分自身が大学・大学院で学んだ、20年以上前の内容を話すことになります。それを聞いた学生が10年~20年後に、学校の研究主任となります。そのため、30年以上の時間のずれが生じてしまうのだと思います。
 これを解決するには、大学の研究成果を、いち早く教育現場に還元する努力を大学人がしなければなりません。その努力をされている方もおられますが、十分ではありません。その原因の一つが、大学人の評価システムでは、対大学人への論文等は評価されますが、対社会への情報発信は殆ど評価されません。そして、前者の論文評価の圧力は、多くの大学人にのしかかってきます。これが30年以上のずれを生じる第三の理由かもしれません。