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2001-09-03

[]研究テーマ 15:14 研究テーマ - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 研究テーマ - 西川純のメモ 研究テーマ - 西川純のメモ のブックマークコメント

 我々の研究室では、学びにおける人間関係研究しています。そのため、人間関係に関わる面白い現象はないか探しています。でも、ごくごく身近にもテーマが転がっています。

 昨日は全体ゼミです。発表者のMちゃんが発表し終わった後、修士2年のKさんが質問しました。その後、修士1年のHさん、Mさん、Kさん、Mさんが質問しました。そうすると、修士1年のKさんにみんなの視線があつまりました。その視線に気づき、Kさんは「おれか?」といって質問しました。それが終わると学部学生の質問です。別に学年順に質問するというルールはないのですが、いつの間にかそうなっています。自然発生的なルールは他にもあります。例えば、質問する場合は「お願いします」と手を挙げ、受ける側も「お願いします」と受けます。この受け答えは、おそらく5年以上続いています。これらの中にも、我々の研究室の中の人間関係を探る手がかりがあると思います。

 授業をしても気づくことがあります。20人程度のクラスで授業をすると、殆ど座る席が変わらないんです。社会心理学では、座る席と授業に対する取り組みとの関係を示す研究があります。しかし、そのレベルではなく、本当に殆ど座る席が変わりません。もっと凄いのは、内の研究室に所属するゼミ生の、私の研究室内のイスに座る席です。2年生の最後に、所属希望の2年生が私の部屋に来て、「3年生、4年生の卒研でお世話になります」と私の研究室挨拶に来ます。その時に座る席が、その後の2年間で全く変わりません。

そこらじゅうに研究テーマがあります。

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 昨日のMちゃん(学部4年生)は、ゼミ発表で面白いことを教えてくれました。彼女テーマは、スケッチ場面における学び合いの実態分析です。子どもたちがスケッチをしているときに、教室内でどんな会話をしているかを彼女は記録し、分析しています。それによると、子どもたち同士が話し合っている場合、「これどう書けばいいの?」、「こんなの見えなかったんだけど?」のような書き方、見方を聞く内容だそうです。ところが、先生には、「これでいいですか?」と「いい/悪い」を聞くばかりで、子ども同士のような、どうしたらいいかに関する質問が無いそうです。

 これを聞いて思い出したことがあります。うちの研究室に所属される院生さん、学生さんが最初に研究計画レポートを持ってくるとき、大抵、「これでいいですか?」と私に聞きます。それに対する私の答えは、「君はいいと思うの?」と聞き、そうだというと、「だったら、それでいいんじゃない」とレポートを全く読まずに答えます。そうすると、不安なった院生さん、学生さんは、「先生、いいんですか?」と再度聞きます。それに対しては、「君がいいと思うんだったら、それでいいじゃない?」、「もし、これこれのところが分からないから聞きたい、とかなら相談にのるよ」と言います。

 私としては、あなた任せの研究ではなく、主体的な研究であって欲しいと願っています。だって、「1+1」はいくつかに関しては、自信を持って答えられるけど、「この方法でうまくできるか」なんて私も分かりません。お勉強研究の違いは、前者が既に分かっていることを学ぶのに、後者は誰も分からないことを見出す点です。だれも分からないことを、神様でもない私に分かるわけはありません。せいぜい、相談にのる程度のことです。

 1年もたつと、院生さん、学生さんも慣れたもんです。思わず、「目を通してください」なんて私に言えば、レポート用紙を目の中に押し込むような振りをして、「目を通したよ」といってレポートを突っ返すことにもなれてきます。うちの研究室とは、「いかに指導教官に頼れないか」を学ぶ研究室とも言えるでしょう。