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2002-01-20

[]案内図 11:28 案内図 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 案内図 - 西川純のメモ 案内図 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 2月9日理科学習臨床学セミナーを行います。遠方から参加される方も多いので、会場までの案内図を院生の係りの方にお願いしました。つくられた図を見てびっくり。今まで目にした地図大学作成のものも含めて)の中で、もっとも分かりやすく親切な図です。早速、本ホームページに載せました。ご覧ください。

 この図を作ってもらうようお願いした際、院生のMさんから質問を受けました。Mさんは「うちの研究室子どもを信じて、教師がしゃしゃり出ないようにする研究を進めていますよね」、「それでしたら地図まで、こちらで用意することは、その方針に反するのではないでしょうか?」と質問されました。質問された私は一瞬、言葉を失いました。

 この会話には伏線があります。Mさんの研究は、教師が殆どコンピュータに関して(基本的な操作方法を含めて)教えずに、コンピュータの授業をしようとする方法です。Mさんは、現場では、コンピュータの操作方法に関して丁寧に教えてコンピュータの授業を行っていました。ところが、うちの研究室の方針に触発されて、上記のような教師が一歩引く授業を実践・研究しているところです。その計画を立てる際に、子どもたちが必要となる情報を見つけやすくするため、事前に関連するホームページを教師が検索し、それを整理したデータベースを用意するべきではないか、とMさんは提案されました。子どもたちが適切なホームページを見つけだすまでに、時間がかかりすぎたという経験を、以前の実践の中でMさんは経験されていたためです。それに対して、私は、子どもを信じましょう、それゆえ、そのような教師が先走ったことをするのをやめましょう、と提案しました。Mさんも納得して、そのようなことはやめました。そのような方針の実践の結果によれば、教師が殆ど教えないのも関わらず、子どもたちの進歩は著しかったそうです(その成果の一部は理科学習臨床学セミナー発表されます)。Mさんは、「自分が去年まで必死になって教えていたことは、いったい何だったんだろう!?」という感想を持って大学に帰ってこられました。その経験があるため、「分からないだろうから、地図を用意しよう」という私の提案に違和感を感じられたと思います。

 そのMさんの質問に対して、私は二つの理由を挙げました。第一は、「教室では教師が目標を与える、ひとつのコミュニティーが成立している。でも、今回のセミナーに参加する人たちが、一つのコミュニティーを成立しているとは言えないよね」と言いました。また、「確かに本当だったら参加者を信じて、参加者地図を調べればいいことだとも思えるけど、地図を調べても、大学の場所は分かりやすいとは言えないよね。そんな状態が分かっているから、お願いしたんだよ」と申しました。おそらく納得しがたい部分は多いとは思うのですが、一応、Mさんには納得してもらいました。

 しかし、それ以来、Mさんの質問が頭の中から離れません。自分の説明にも一理あるとは思うのですが、何か引っかかる。Mさんの指摘の方が正しいと感じられます。何か分からないけれでも、このことを整理すると、「教師が教えるべきことと教えるべきではないこと」という、極めて重要テーマの答えがあるように感じてなりません。

 研究において、もっとも大事なのは「直感」です。100の理屈より、1つのあやふやな直感が大事です。特に、現状を乗り越えるには直感しかありません。だって、100の理屈論理的に導き出されるなら、とうの昔に乗り越えられたはずですから。その私の直感が警告ランプを鳴らし続けています。

[]試験監督 11:28 試験監督 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 試験監督 - 西川純のメモ 試験監督 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 昨日から共通一次試験です。私は「一期、二期制度」の最後の年に受験しました。次の年から共通一次試験でした。それが今ではセンター試験です。なんと、現職の院生さんの中には、センター試験世代の方がいらっしゃいます。今でもセンター試験とは言わず、共通一次と言ってしまうところに年齢が出てしまいます。

受験生はもちろん大変ですが、大学教官も大変です。全国の会場の試験獲得として、ほぼ全ての国立大学教官が動員されます。何が大変かと言えば、ジーッとしていなければならないということが大変です。試験開始直後、終了間際にはしなければならないことがあります。ところが、大部分の時間は  受験者を見ているだけです。それも、あまり机間巡視をしすぎれば、受験生邪魔になります。結果として、会場の前の方や後ろの方のちょっと離れた位置から、さりげなく見続けることとなります。

 見ている受験生の殆どは、問題文を見ているので表情は見えません。鉛筆は動いていますが、体は殆ど動きません。時々、咳払いが聞こえるだけです。そんな受験生を1時間、見続けることとなります。他大学のある教官試験会場で寝てしまい、大きないびきをかいて、受験生からクレームが来たという話を聞くことがあります。笑えますが、同時に「さもありなん」という感想を持ちます。

 でも、この試験監督に関して、とても良いことがあります。各受験室の試験監督には、様々な分野の教官が一緒に配属されます。受験室から監督者控え室に戻ると、隣の席に座ります。そこでは色々な話をします。他の分野の先生とは、あまり話す機会はありません。それまで廊下で会釈する程度の先生が大部分です。しかし、控え室の雑談の中で、その先生自身や、その先生の専門について意外な発見があります。そこでの雑談をきっかけに、一緒に論文を書いたこともあります。