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2002-08-04

[]詩の朗読09:19 詩の朗読会 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 詩の朗読会 - 西川純のメモ 詩の朗読会 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 ある学会大会に参加しました。戸北・西川研究室院生さんが等しくビックリしたのは、そのプレゼンテーションの方法です。分厚い資料を配り、発表者が「文字通り」にそれを読み上げるという方法です。両研究室ではゼミ発表でも、パワーポイントを使い、多様な情報を提示し、当意即妙の間を使って語る発表をしています。ずーっと、そのような発表を見ていて、また、自分自身も発表していたので、それを当然のこととしていました。それが文字通り読み上げる発表を見て、「なんだ?」と思われたのは当然です。修士2年の方は、昨年の学会で両研究室以外の発表を見ているので、パワーポイントを使うのが一般的ではないことや、プレゼンがうまくない発表があることは知っていました。しかし、その院生の方も文字通り読み上げる発表を見て愕然としていました。

 私の方は、それほど驚きませんでした。私が初めて学会に参加した20年ほど前は、理科教育関係学会でも読み上げ形式の人が少なからずいました。また、我々がパワーポイントを利用したのも5年程度の歴史に過ぎません。しかし、その私もビックリしたことがあります。それは、それを語っている人の中に、現職教員がいることです。

 学会での発表は、プレゼンで評価されるものではありません。あくまでも内容で評価されるのが学者の世界です。したがって、プレゼンに力を注ぐことは邪道だという考えは学者社会では少なくありません。でも、教師は違うと思います。語っていることが正しいか否かではなく、それが学習者に伝わってなんぼの世界です。その教師が大学院研修を受け、学会発表するとき読み上げ形式になっていることにゾッとするものがあります。これに関しては、3つの可能性があります。

 第一は、その教師は現場において読み上げ形式で授業をしている。それを聞かされている子どもたちが不憫です。

 第二は、その教師は現場においては説明に努力しているが、大学院での期間は学者の方法でやっている。郷には入れば郷に従え、は正しい教えです。しかし、教師が教師であることを捨てて学問をしていたとしても、プロの学者に勝てるわけはありません。

 以上は、ちょっと救いがない可能性です。私としては最後の可能性を信じたいと思います。

 それは、「読み上げ形式とは別な方法があるということを知らない」という可能性です。そうであれば、来年はだいぶ変わるように思います。我々だって、他の人の方法を見ながら、真似しながら変わってきたんですから。

追伸 以上はプレゼンに関することであり、読み上げ形式の人も、内容に関しては高いものであることを申し添えます。

[]よくある質問 09:19 よくある質問 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - よくある質問 - 西川純のメモ よくある質問 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 昨日、Yさんはジェンダーに関する発表をしました。それに対する質問を聞いて「ああ、よくある質問だな~」と思いました。その質問とは、「そのクラス子どもたちのジェンダー社会や親や教師の指導に基づくものであるので、それが明らかでないので不十分だ」という趣旨のものです。

 社会や親が影響するのは予想に難くありません。当然そうでしょう。でも、社会や親がどのように影響するかを明らかにすることが本当に出来るんでしょうか?絶対に無理とは言いませんが、それだけで一つの研究テーマになってしまいます。結局、それまで研究を広げたとした場合、何がなんだか分からない状態に陥ります。私の失敗(01.3.31)というメモを書きましたが、それと同じことになってしまいます。

 次に、仮に社会や親の影響が分かったとします(無理でしょうが)。分かったとして、どうなるんでしょうか?その結果に基づき、法律を成立させることは我々の目的ではありません。親を学校に呼びだし、コンコンジェンダーに関して「説諭」しようとするのでもありません。我々は、教師が普通に出来ることを通して、教育改善を目指しています。しっても教師がどうしようもないことを、あれこれ調べたとしても意味がないように思われます。

 また、「教師の指導」に関しては、一面、正しいような響きがあります。しかし、質問者言葉には、教師が行った個々の指導の指導履歴を云々していました。しかし、そんなこと分かるでしょうか?分かったとして、教師は日々変わる状況で、ジェンダーを意識した指導を積み上げなければならないのでしょうか?そんなの現実の教師には無理です。だから、我々は個々のテクニックではなく、子ども観・授業観に着目しています。場面を取り上げるとしても、その時に行った個々の指導がどうのこうのという意図はありません。その個々の指導を通して、子ども観・授業観を理解しようとしています。

 子ども観・授業観は、一見、ありがた~いお話ではあるが、実際には役に立たないと思われがちです。しかし、我々は、その子ども観・授業観が、極めて有効に働くことを知っています。Yさんの発表も、現状分析の段階で止めているから分からないんだと思います。今年やった実践を見せれば、それを分かってもらえるのにな~と感じました。Yさんの研究の本当の意味が伝わらず、エスノの一種としてとらえられているんだろうな~と、ちょっと悔しく、残念に思いました。でも、しょうがありません。時間の関係から、そこまで話せないのは、物理的制限ですから。

 でも、我々の目指す研究は、そのような人たちも分かってもらえる研究なんですから。そのためにがんばりましょうね。