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2002-08-31

[]涙腺 08:56 涙腺 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 涙腺 - 西川純のメモ 涙腺 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 福井大学非常勤講師をしました。学部2年生対象の授業です。可愛い学生さんたちでした。昼に「おいしいラーメンが食べたい」と言いましたら、車でつれてってくれました。なかなかの高級車ですが、双葉マークが付いているのが「2年生だな~」と思わせます。また、出席者の殆どが福井市内および近隣の出身で、自宅通学だと聞いてビックリしました。上越教育大学全国区大学ですので、上越近辺(通学可能域)の出身者は1割もいないと思われます。毎日、親御さんの監視下におかれているので「悪さもしていないのでは」と感じました。実際話してみると、実に良い学生さんたちばかりでした。

 授業の内容は、前段は認知心理学関連で、「子どもが分からないのは当たり前」という内容です。中段は学び合い研究の中で既に本に書いている部分コンパクトにまとめました。このあたりまでは快調に話すことが出来ました。歌って、踊ってという感じです。学生さんからは「あついな~」という声が聞こえます。ちなみに、今の学生さんたちにとって「熱く語る」というのは、「うざったい」ということと同義語の場合があるので、あまり喜ぶべきことでもありません。しかし、それでも、「あつく語り」ました。しかし、中段までは熱く語っても、自己制御の中での熱い語りです。ところが、後段になって、その制御が出来なくなりました。

 数日教えているうちに、福井大学学生さん対する情が生まれます。簡単に言えば、「良い学生さんだな~、先生になって欲しいな~」という気持ちです。そのため、我々の成果を分かってもらい、子どもを信じて授業をする先生になって欲しいと強く感じ始めました。そのような状態で、現在、我々の研究室で進めている研究のことを語り始めました。まさに、今進行中ですので、そのことを語ると、それを知った瞬間がありありと思い出され、気持ちが高ぶります。さらに、「この子たちに話せるのは、今回が初めてで、最後だ。一期一会なんだ。」と思いつつ、「この子たちに話せるのはあと○時間しかない」と思うと、さらに気持ちが高ぶります。上越教育大学学生さんの場合も、本当は一期一会であることは違いはありません。ところが、毎週一時間づつ話しますので、来週に話そうという気持ちになることが出来ます。さらに、その講義を終わる場合も、「もし、本当にこの先を知りたければ、うちの研究室希望すればいいことだ」と思うことが出来ます。ところが、他大学の集中講義の場合はそれが出来ません。それらが、ゴチャゴチャの気持ちの中で、さらに熱く語ることになりました。結果とし、目はウルウルしどうしです。Kiさんの研究を語ってウルウルし、Koさんの研究を語ってウルウルし、Hさんの研究を語ってウルウルし、Kuさんの研究を語って ウルウルし、Mさんの研究を語ってウルウルし、Yさんの研究を語ってウルウルし続けました。結果として、後段では、涙を拭き拭き熱く語ってしまいました。聞いている若い学生さんにとっては、どう反応して良いのか分からないし、うざったい講義になってしまいました。

 そういえば、今回の非常勤は、助教授としての最後の講義です。たしか、老化の兆候に涙腺(るいせん)がゆるみ、繰り言をするというのがあると思います。つくづく老化したもんだと思います。ともあれ、学生さんにとっては迷惑だったかもしれませんが、自分の中にある研究の思いたけを、ぶつけた授業でした。一つの切れ目と感じる授業でした。