■ [大事なこと]解決方法(自戒)

ある先生とのメールのやりとりです。問題の解決方法に関して具体的な示唆に富んでいると思うので、差し障りのあるところは削除・修正してアップしています。いつもながら思うのですが、理屈を言うのと、やるのは大きな違いです。私自身も同じ悩みを抱えています。そして、メールの先生と同じようなあやまちを繰り返します。このメモは、他の誰よりも、自分自身への自戒としてメモりました。そしてにしても、この先生は、どんどん実践で成果を上げているので、ビックリします。
『恥ずかしい事、書きます。体育のハンドベースボールです。体育の時間に「ハンドベースボール」をしています。チーム分けからルールまで子供たちに任せてやっています。クラスを4つのチーム(身長別番号順)に分けて一気に2ゲームしています。ボールは子供たちが打ちやすいようにソフトバレーボールを使って体育館でやっています。はじめの1時間は体が不自由で今まで体育からはほど遠いBが活躍し、盛り上がり、本人も喜び、「A君に教えてもらって、打てた。これからいろいろなことに挑戦してみる。」と日記に書いてきました。他の子供たちも「先生、Bさんすごいよ!」とかたくさんの子供の日記にも「なんでもやればできると思った。」とか「私も勇気を出してがんばる。」とか書いてあり、うれしいことがたくさんありました。そのA君というのが野球部の子供で、勉強ができる子で算数で「習熟度別にしてほしい」と言ってきた子でした。
しかし、その後の授業で他のチームは大声をだしながら声をかけあい笑い声もあり、しかもみんな汗をたくさんかいてプレーしているのに、その子のチームだけジャッジをめぐっていつももめていました。その子は、いつも自分の知っている野球のルールを持ち出してトラブルをおこしていたのです。よく見ると守備では全部一人でやろうとして他の子がボールをとろうとするのをじゃまするし、チームの友達にプレーさせないという感じでした。またトラブルが起きたので思わず集合させて、なんのトラブルなのか確認しどうしたらいいか話し合いました。子供たちはルールについてみんながわかるルールじゃないとダメだということを確認し、A君がいつも一人でやっているから、ちゃんとパスをしてアウトをねらった方がいいという意見を出しました。そこで、私は「他の子を信じる事も大切だよね。」とか「早く上手になる方法はみんながたくさんボールのさわることだよね。」と子供の意見に解説をしたつもりでした。にもかかわらず、次に同じような事があったとき、私が割り込んで思いっきりキレてしまいました。「Aさん、何回言ったらわかるの?だいたい周りの人だってじ~と見てないで声出すとかボールの方に動くとかしようよ!!」その後の授業の暗かったこと、すごかったです。他の3チームまで暗くなり、問題のチームではAは思いっきりボールのこない所につったってるし、他の子は顔が固まって体を動かすどころじゃありません。最悪でした。よくよく考えて、この時間の課題がはっきりしていなかったのでは、またチーム分けはこれでよかったのだろうか?と反省でした。いいかげんな気持ちで授業していました。教師が怒っても、ろくなことがないと思い私までくら~くなりました。なのにそういう日に限って給食当番が2人しかマスクを持ってこないとか、やたらに給食準備中にうるさくてわさわさしていて、牛乳をこぼしてビンを割るとかいうことになっちゃって、またキレてしまいました。西川先生の以前のメモに給食中に静かに・・・ということ書いてありましたよね。情けない一日でした。恥ずかしい事です。
その後、ハンドベース3時間目になり、みんなが楽しめるハンドベースボールを作ろうとはじめに言って、気をつけることやルール、チーム分けなど話し合いました。みんなが楽しくできるようにがんばろうと話をおわりました。また、子供から「ジャッジをめぐってもめ事が多いから、もめたらすぐじゃんけんにしよう。」と意見が出ました。結構楽しくできて、技能面でも話し合いをしていい感じでした。が、ゲームが終わる直前、またAの事でもめ事が起きました。ボールを持ってランナーにタッチしようとAが走ってランナーにタッチし押し倒して、泣かせてしまいました。感想発表という名目で、すぐ話し合いをしました。みんなからA君は攻められました。不安を感じながらも、Aなら大丈夫だろうと思い、また周りの子供が立派なことを言うので聞いていました。
「勝ってうれしかったけど、(相手チームの)Aの個人プレーが多くて楽しくなかった。」
「○○が泣いたのは、Aがパスすればいいのに、無理矢理自分で走っていったからだ。」
「もっと協力しあえばいい。」
「一塁に人がいなかったからだもん。」とAが言うと
「うそ、いたよ。2人もいたよ。」「こんなに見た人いるのになんで認めないの?」
「個人プレーで友達を信頼しないから、みんな自分でやらなくちゃいけないと思うんだ。」
「でもA君は本当に見てないかも・・・。」
「だったら一塁に行くように呼んであげたらいいのに。」
「かけても聞いてくれないモン。」とAが言うと
「あんたが声かけないから、みんな私なんかいなくてもいいんだって思うんだよ。」
A君がかわいそうになったので、私は「でもさあ、こうやってみんなから非難されても一生懸命きいてるじゃない。Aは自分のことこんなに言われても泣かないしおこらないし、ちゃんと聞けてえらいねー。い~ぱい言いたいことあるだろうに。」と言って「次の1時間でハンドベース終わりだよ。楽しくやろうね。」と終わりました。授業15分もオーバーでした。
体育の授業では子供がすごく熱くなります。ともするとトラブルはつきものです。これまでは特に経験差のはっきり出る球技では、そうならないようにはじめは私がしきってきましたが、今回は最初から話し合わせました。子供たちは、私が入らなくても、ちゃんとみんなが楽しめることを大切にして、ルールを決め、声をかけあいながらゲームを進めました。(A君のチーム以外は)この時間にAが集中的に攻撃されたのは、その前に私が思いっきりAにきれたからだと思います。そうじゃなかったら、子供たちは同じトラブルも大なり小なり自分のチームでもあるわけですから、もう少しAから離れて自分たちのチームの問題として話し合ったかもしれません。教師の言ったことは、すごく影響がありますから。あんなこと、言って割り込まなきゃ良かったと今も気分が悪いです。やっぱりこういうの良くないですね。ちょっといい気になってるA君にとっては良い経験だとも思っていますが、実は翌日彼が学校を休んだらどうしようと心配しました。全然、元気に学校に来て、相変わらず人のことをどうのこうの言っています。次の最終のハンドベースが楽しみであり、不安でもあります。
だらだら長いメールですみません。全然、整理できませんでした。また、メールさせてください。よろしくお願いいたします。』
以下が、私の返信です。
『メール読ませて頂きました。「恥ずかしい」こと、はけっして恥ずかしいことではありません。私も、よくやることです。でも、殆ど全て自分で解決されているようですね。以下で書くことは、「私はできる」ということではありません、自分にとっても自戒のために書いているようなものとして捉えてください。
問題の根本は、○さんが知りすぎている点です。あまりにも子どもを見過ぎているため、自分なりの解決策を思い描き、それを先走ってしまうために起こるように思います。その結果、目標を忘れ、方法に走ってしまいます。
冷静に考えましょう。もしかしたら、○さんの予想とは違って、A君は原因では無いのかもしれません。教師は子ども集団の表面しか見えないものです。そうだとしたら、どうします?でも、おそらく、○さんのお考えの通り、A君の問題かもしれません。でも、そうだとしても、教師が何とか出来るものではありません。どうしようもないことは知らない方がいいように思います。むしろ、解決策は子どもに任せた方がいいように思います。
それではどうすればいいか、それは、目標を明らかにし、そのことは子ども集団に厳しく求めることです。そして、学び合う教室の最初に書いた「頭のいい人」の話をしたらいいのでは?もうひとつ、取り扱い注意の方法が一つあります。それは、グループの構成を自由グループにして、固定せず、常に改変可能にするんです。早晩、ただ、出来ればいいのではないことを気づくでしょう。』
以下が、私への返信です。
メールありがとうございます。○です。いつも、すぐにお返事をいただきありがとうございます。グループ編成については、私も失敗だった!と思います。途中で改変可能にするべきか悩んだのですが、そのまま続けてしまいました。今日の最後の授業では、「みんなで楽しく!」ということを強調し、チームごとの作戦タイムの後、ゲームをしました。私はなにもいいませんでしたが、A君はかなり態度が変わり、みんなと協力してゲームしていました。作戦タイムの時は他の子の意見を聞き、打順を変えました。そして彼のチームは初勝利で、かなり盛り上がりました。彼は「チームワークが大事だということがわかった。」と感想に書いてきました。チームの他の子供たちの感想は「今までは楽しくなかったけど、今日はすごく楽しかった。」とか「A君に教えてもらって打てた」などとありました。
「学び合い」と意識していても、また同じ間違いを繰り返してしまいました。教師が出て行ってもろくな事がないのに。まだまだですね。今回のことで、距離を置いて子供を見るということが大切なことがわかりました。なかなか自分でなんとかしようというところは簡単にぬぐい去れていないのですね。自分でなんとかしようとするより、子供を信じて任せた方がずっといいのに。またどんな授業でも、目標がきちん伝わってないとこういうことになっちゃううんですね。気をぬいてなあなあで体育をしている自分を反省でした。』
以下が、私の返信です。
『どんどん良い方向に進んでいますね。
よかったですね。
■ [う~ん]新たな自由研究

本日の午前中は、院生のOさんお一人だけです。二人で昼飯を食べた際、小学生の自由研究の話題が出ました。そのとき、ふと思いついたことがあります。我々がやっている臨床研究で最も必要なのは、健全な常識と、膨大なデータを分析する手間をいとわない熱意です。別に高等数学が必要だというわけではなく、また、スミスだマイケルだというような横文字の文献をすらすら読める能力は必要ありません。となると小学生に臨床研究をやらせたら面白いのではないか、と思いつきました。研究対象は「担任教師」です。これは、とても良いアイディアです。だって、クラスでやるのですから、30~40人の目と耳と頭を総動員出来ます。さらに、当事者として記録を解釈することが出来ます。考えら得ないほど恵まれた研究環境です。
もし、そのような研究が一般的になったら、県の管理指導主事が子どもたちの研究発表を聞きに来るのではないでしょうか?いや、おそらく、「それだけは発表しなでくれ・・・」と子どもたちに懇願する教師が続出するでしょう・・。ここに至って気づきました。これは小学校ばかりのことではありません。私の研究室には、そのエキスパートの院生・学生さんが15人もいます。うっ、まずい!このメモは廃棄しようと・・と思ったんですが、やめました。だって、おそらく既にやっているだろうから・・。
■ [自慢]官軍

数年前のことです。ある国立大学の教育学部での教員の正式採用が、全学部(百数十人)の内、二人だけということを、別な大学の先生から聞いたことがあります。私は、思わず大笑いしてしまいました。そして、「大蔵省(現在の財務省)が教員養成学部の縮小を求めるのも理由があるね」と言いました。ところが、その先生は「西川さんの大学はいいけど、うちの大学も同じなんだよ」と深刻に言われました。その先生の大学の場合、全学部で5人だったそうです。
現状の教員採用の状況は厳しいものがあります。その中で、一発採用は希なケースです。現在、戸北研では院生のK君、学部のTさんが合格しました。先のメールで紹介したように西川研究室のOBのMちゃんも合格しました。本日、うちの研究室の4年のY(名前の方です)に合格通知が来ました。これも、我々がやっている研究が、現場実践に密着していることを表しているものです。
勝てば官軍、負ければ賊です。勝っているうちは、言いたいことを、言っちゃうんだぞ~