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2003-12-18

[]悪知恵の正体 17:29 悪知恵の正体 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 悪知恵の正体 - 西川純のメモ 悪知恵の正体 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 「喧嘩の仕方」のメモを書き終わって、私の悪知恵自己分析しました。まず、直感的に「頭にくる」相手が何故、「頭にくるか」を分析します。次に、出来る限りの情報を得ます。具体的には、相手側がやっている「頭にくる」ことを細大漏らさず調べ上げます。次に、その一つ一つがどのような法的根拠があるかを確認します。次に、その法的根拠が上位法に整合しているか否かを確認します。これらの情報は、秘密ではないので、直ぐに知ることが出来ます。特に、事務の人に問い合わせれば、極めて誠意ある回答をいただけます。その結果、分かるのは、相手方のやっていることのそれなりの根拠があることです。同時に、相手が思いこんでいるほど立派な根拠はないことも分かります。そこで、相手が強固な法的根拠があると思いこんでいて、実は脆弱部分がどこかを特定します。あとは、その脆弱部分を破るための正当な手順は何かを特定し、しつこく、かつ、手を代え品を代えて攻撃し続けるんです。

 でも、この悪知恵研究の方法と全く同じです。私の修士論文テーマにして比較しましょう。私が教育研究の世界に足を踏み込んで、頭に来たのは、その研究手法です。理学の場合、一定の前提の元に論理を組み立てていきます。ところが、その当時の理科教育研究では、著者の思いこみを元に、気分の赴くままの随筆を書いているとしか思えませんでした。そのため、一定の実証的データを元に、一定の手続き(私の場合、統計分析の手法)によって結論を出だす研究をしたいと思いました。次に、先行研究(私の場合は電気概念)に関する内外の文献をデータベースと腕力によって、手当たり次第に集めまくりました。次に、どれだけの人数のデータによる研究であるか、そして、統計的手法を用いているかの二つに絞って先行研究を調べました。その結果、従来の研究では調査対象校も少なく、人数も100人程度に限られていたこと、そして、統計的手法が殆ど取られていないことが分かりました。そして、前者原因は、大学研究者現場学校ネットワークを持っていないため、調査協力を得られないためであることが分かりました。後者に関して、先行研究の時代において統計分析は大型コンピュータ自作プログラムを必要としていたため、その能力を持つ人が少ないためであることが明らかになりました。さらに、理系統計分析と、教育における統計分析が異なり、教科教育関係でそれらを使える人が少ないためであることが分かりました。そうなれば、攻撃の仕方は決まります。それは、多数の現場学校の協力を得ること、そして、統計分析の手法を会得することです。前者に関しては、私の指導教官が元文部省(現 文部科学省)の役人であったという関係から、解決できます。後者に関しては、私が大型コンピュータを使いこなせるという特殊能力を持っていたため解決できます。あとは、攻撃あるのみです。私の持っている攻撃の武器が強力であったため、修士論文でありながら二つの学会誌と、一つの紀要に掲載されることとなりました。

 このように喧嘩における悪知恵研究の手法は極めて似ています。ただし、喧嘩研究の違いは、研究の対象は反撃しない点です。私が電気概念の実態を明らかにする手だてをいくらしたとしても、電気概念が私を攻撃しません。研究においては、研究者は攻撃し続ければ良いんです。そのため研究者は、攻撃することは得意な一方、防御の全く不得手な人が少なくありません。つまり、いくら相手を攻撃したとしても、相手が反撃することを予想できないんです。そのため、議論で相手が反論しようものなら、パニックになって怒りまくる人がいます。でも、そうなると面倒なので、相手が怒りそうなところを直接攻撃することは避けるようにします。周りからジワジワと表立たないで攻めると、あっさりと負けてくれます。今までにも、そういう経験が何度もあります。

 数年にわたって徐々に形成した努力の成果として、相手が拠って立つ根拠を無力化する決定が会議でなされるとき、私は平静を装いながら、相手方の顔を見ます。あまり盗み見すると悟られるのではと危惧しますが、そんなことは無いようです。議長が「これでよろしいですね」という確認の後の沈黙を、息を止めて待っていますと、相手方はつまらなそうに「早く終わらないかな~」という顔をしています。心の中で、「おまえはバカか!」と思います。その決定が利いてくるのは早くて半年、大抵は1年後です。それが利き始めると文句を言い出すのですが、その原因が1年前の何気ない決定によるものだということを、その時点になっても気づきません。そこまでくるとおかしくなってしまいます。

 しかし、自戒です。実は、私も攻撃は強いが防御が不得手という研究者の特質を持つ一人です。だから、喧嘩上手の第三者に常に危険評価をしてもらい、多種多様情報を収集し続けるという現在の行動は続けなければなりません。ちなみにこの種のメモを公開すること自体、リスクがありますが、そのリスク評価を受けています。

追伸 大学という職場が怖いところだと私が言うわけが分かったでしょ。でも「喧嘩の仕方」で書いたように、「学習者の利害」を守るためには、戦い続けなければならないんです。あ~しんど・・