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2003-12-26

[]博士の学位の条件 08:14 博士の学位の条件 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 博士の学位の条件 - 西川純のメモ 博士の学位の条件 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 最近博士の学位を取りたいという話が舞い込むようになりました。これも、私が博士の学位を出せる資格(○合資格)を得たためです。それを受け入れる、受け入れないという条件を公にするということがフェアーであると思ったので、メモることにしました。以下で述べる基準は、上越教育大学が所属する兵庫教育大学連合博士課程の基準に則って述べています。この連合での基準は、博士認定資格基準、博士指導資格基準(○合、合)とも、他の博士課程より厳格です。

 まず、博士の学位を取得する方法は、課程博士論文博士があります。前者は、3年間の就学を行い、必要な単位を取得し、博士論文を作成し学位を取るという正規の方法です。ただし、小学校中学校のように、毎日毎日、学校に来なければならないと言うわけではありません。かなりの自由度があります。それゆえ、現職の先生が、勤めたまま入学し、入学・修了されることは可能ですし、事実、何人も学位を取得しています。もう一つの方法は、論文博士です。この方法の場合は、就学をせず、論文を提出して認定を受ける方法です。不謹慎な例えとは思われますが、運転免許状を教習所に行って取るのと、一発検定で受けて取るのとがありますが、課程博士論文博士に対応します。

 二つを比較すると、課程博士は指導を受けて博士論文を作成するのに対して、論文博士の場合は、基本的な部分は既に自身で出来る人の論文作成をする方法です。前者の場合は、3カ年の年数と、その期間の学費が必要です。後者の場合、『完成した論文』があるならば、おおよそ1年程度で取得出来、学費は必要ありません(ただし、認定料は必要です)。その一方、前者の場合は、3カ年の中で2つのレフリー付き学術論文の業績があれば博士の学位を取得出来ます。後者の場合は、博士論文に直接関わるレフリー付き学術論文を5つ以上で、そのうち2つは5年以内(実質は3年以内)の業績があることが最低条件です。ちなみに私は論文博士で学位を取りましたが、「巨視的時間の距離関係性に関する研究」という博士論文に直接関係するレフリー付き学会論文として35があり、うち14が5カ年(実質3カ年)の業績でした。以上が基礎資格であり、これが成り立たなければ話になりません。

 次に、教育上の縛りがあります。上越教育大学では学習臨床コースという教科横断のコースに所属して、理科以外の院生さん・学生さんを受け入れています。しかし、博士課程ではそのような組織はなく、旧来の教科縦割りの組織があります。そして、私は理科に所属しています。そのため、博士研究テーマでは「理科」の内容に関わるものでなければなりません。次に課程博士に関しては、1年間に受け入れられる博士課程の学生さんは最大一人であり、3カ年の間に受け入れられる学生さんは最大二人という内規があります。したがって、私は退職まで21年間ありますが、その3分の2である14人が課程博士の最大の指導人数となります。また、退職間近は学生さんを受け入れられないので、12、3人というのが上限となります。

 次に私個人の基準があります。第一に、受け入れる学生さんの人生をかけられても、責任を負い切れません。従って、退職(または休職)して入学するしたいという現職者は受け入れられません。同様に、就職状況の厳しい研究者希望する、無職学生さんを受け入れることはしません。悲惨な博士修了者を多く見ていますので・・・・

 第二は、見ず知らずの人から、いきなり頼まれても受けるつもりはありません。学位を与えるというのは、時間と労力、そしてリスクを受けなければなりません。私がその人の能力と人格に関して、ハッキリとした判断が出来るだけ、長く、かつ濃密につきあっている人でなければ責任を負えません(つまり、たまに会う程度であれば、十年つきあっても駄目です)。

 ということで私が受け入れる条件は以前のメモに書いたように、「修士課程で指導した経験がある現職者で、2年間、宇宙一厳しい西川研究室を生き残れた人」、「義理人情のしがらみがあり断れず、実績において研究能力を証明出来(つまりレフリー付き学術論文を書いたことがある人)、私と仲良くできる現職者」です。ちなみに、不義理の私が「義理人情」で断り切れない人なんて、この世の中で5人(その内のお二人はご自身で学位を出せる人です)もいません。上記以外の方の場合、とりあえず修士課程の2年間で見させていただいて、ということになります。かなり利己的な基準とは思いますが、もともと私が学位を必要とした理由は、目の前にいる学生さん・院生さん、そしてその集団を守り、戦いに勝つためです。そして、その集団を守ることによって、中長期の観察によって学習者・教師を見るという方法論による教育研究を推進し、学習者・教師を救いたいという願いがあるからなんですから。

 だいぶ偉そうなメモで、不快に思われる方もおられるかもしれません。でも、ご容赦を。世の中には、いきなり箱いっぱいの資料を送りつけ、「博士の学位を取りたい」という手紙を同封するような、非常識な見ず知らずの人が少なからずいます。その人に対する防波堤の意味でのメモです。それに、私と違って大らかな○合資格保持者もおります。このメモの前段に記載した博士取得の基礎資格を参考に、そのような大らかな先生にお願い出来るか、否かを判断する情報としては有効なのではと思います。

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 もうすぐお正月です。正月になると、ねじりはちまきした学生さんが集まって勉強している予備校の様子がテレビで放映されます。そこでは、「受験生正月は4月だ!」と叫んでいます。

 本日仕事納めです。といっても、修士2年のOさん、Iさんは私からの新たな宿題に対応するため、どたばた状態です。Kさんに対しては、今のところ宿題は出していません。理由は、今の私の能力では、そこまで行けないからです。でも、年明けには研究お年玉あげるから、Kさん待っててね。ということで、修士論文作成であたふたしている院生さんをおいて、正月モード入ります。頑張ってね。期待し、信じてますよ。第一段落の文章との繋がり、わかるよね。