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2004-02-09

[]授業中のガム 17:07 授業中のガム - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 授業中のガム - 西川純のメモ 授業中のガム - 西川純のメモ のブックマークコメント

 大学の授業中、ガムを噛みながら聞いている学生がいると、大抵の大学教官はものすごく驚きますし、憤慨します。そして、一定の割合の人は、怒り狂います。しかし、私は平然として対応出来ます。理由は、定時制高校に勤めていた経験から、その子がガムを噛みながら授業中することを注意された経験がないためであることを知っているからです。つまり、全く悪気がないんです。だから、怒らずに、ゆっくりと、じんわりと、ニコニコしながら対応出来ます。

 先ほど、我が研究室のゼミ生さんの掲示板を覗いたら、驚くべきことが書いてありました。それは、発表時間を守らず延々と話し続け、それを悪いと思っていない院生さんがいたと言うことです。さらに、さらに、司会の人が「時間が短くてすみません」というような社交辞令(もしかしたら嫌み)をいったら、「いつものことです」とのたまったそうです。私はそれを読んで、「信じられない」、「バカ野郎」という気持ちがむくむくおこりました。しかし、小一時間たって、それは授業中のガムと同じだということに気づきました。きっと、その人は発表時間を守るべきだということを、一度も注意されたことがないんでしょうね。そういうことを2年間、指導されなかった研究環境を哀れと思います。 しかし、指導だけの問題とも言えません。ちゃんとした家庭に育った子どもは、注意されなくても授業中にガムは噛みません。大人もそうです。結婚式のスピーチで、とりとめもない自己満足な言葉をだらだらとしゃべる人もいる一方、短くも心に残る言葉を贈る人もいます。後者の人の場合は、指導教官に指導されなくても発表時間は守れます。

追伸 その掲示板には、その人の発表の内容に関しては何も書いていませんでした。でも、その必要はありません。発表時間を守らない発表に、内容があったことは、私の過去に「1度」もありません。発表時間を守れないということは、自分の発表を他者の視点からモニター出来ないことを意味します。簡単に言えば、マスターベーションです。他人様がマスターベーションすることは、その人のかってですから結構です。しかし、私は他人様のマスターベーションを見るような趣味も、暇な時間もありません。

[]1.5人論文 17:07 1.5人論文 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 1.5人論文 - 西川純のメモ 1.5人論文 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 「1.5人論文」という言葉をご存じでしょうか?それは、論文を書いた当人(一人)と印刷所の校正担当者(0.5人)しか、その論文を読む人いないという意味です。無意味な研究を示す言葉です。全くの趣味人で、自分のお金で、自分の趣味を研究と称するのはかってです。しかし、いやしくも他人様から給料を与えて頂いて研究するならば、その研究が他人様に還元 されないならば給料泥棒です。もちろん、「直接役に立たなくても、じんわりと役に立つんだ」と言い訳をする人がいますが、私の見るところ、そう言っている人に限って「じんわり」とも役だったように思えません。何故なら、他人様に還元しよう (しなければ)と いう気があれば、それは研究にも現れますし、実際に還元しうるものを「含んで」いるはずです。少なくとも、還元し得ることを「屁理屈」でも言るはずです。それが言えない人は、還元しようと本気で思っていない人です。還元しようと本気で思っていない人の研究が、いつか還元されるなんてことが起こるのは、宝くじで100万円(1億円とは言いませんが)があたるぐらいの確率に過ぎません。

 では、研究をどうやって還元できるでしょうか?まず、多くの人の人の目に触れる学会誌、書籍を通して知って貰うことです。そして、身近な研究団体、研修団体において発表することです。少なくとも、あなたの知っている同僚に理解して貰い、それを利用して貰うことです。もし、一人の教師であっても、本当にそれを理解し、利用して貰えるならば「二人論文」です。たった一人でも共感して貰える人がいるならば、もう少し努力すれば、さらに増えるでしょう。そうなれば「1.5人論文」の汚名を脱することが出来ます。

 先週の土曜日に学習臨床コースの修士論文発表会がありました。私と違って、院生各位の方はジェントルです。思うところがあっても、言わないかもしれません。しかし、このことを覚えておいて下さい。2年間の派遣に際して、地方公共団体は臨時採用教員2年間の給料として1千万円強の投資をしています。発表会で見た発表の中には、「一千万円に値しないのでは・・」と思う論文もあったかもしれません。でも、もし、あなたの論文が1.5人論文だったら、その「一千万円に値しない」論文と50歩100歩に過ぎません。「自分の研究は、あんな研究とは違う」というプライドを持って欲しい。そして、そのプライドを裏切らない今後の活動を「期待」しています。