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2004-07-08

[]競争と協同 08:58 競争と協同 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 競争と協同 - 西川純のメモ 競争と協同 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 先だって、ある先生からメールを頂きました。内容は、最近あった問題場面についてです。状況は七夕飾りを作っている際、子どもたちの間で「何故か」笹の先頭に短冊つけた方が願いが叶うというようになったそうです。そのため、みんながみんな先頭につけたがったため、バランスの関係で笹が「しなり」壊れそうになったそうです。そこで、介入しようかと悩んだのですが、それはしなかったそうです。そして、しばらくして見ると、結局、短冊は全体に配置され、壊れることは避けられました。しかし、よく見ると、先頭にはクラスの発言力の大きい子どもの短冊があったそうです。メールの内容は、このような状況の場合に、教師はどうすべきかということです。

 これを考えるにはドイチェという人の「競争と協同の定義」が参考になります。彼によれば、両者の決定的な違いは、競争の場合は、一部のメンバーにしか達成出来ない目標を与えていることを指します。例えば、相対評価の通知票で「5」を取ろうという目標がそれにあたります。この場合、誰かが目標を達成するということは、誰かが目標を達成出来ないということと同値です。一方、協同とは、全員が達成出来る目標を与えていることを指します。例えば、絶対評価の通知票で「5」を取ろうという目標がそれにあたります。この場合、全員が目標を達成することが出来ます。

 さて、先の話題に戻ります。この場合にとれる教師の方法の下策は、「ジャンケンで先端につける人を決めよう」というルールを提案することです。この場合は、結局、その目標を達成出来る人と、出来ない人が出ます。それでは中策は何かといえば、例えば以下のように語ることです。

 「ねえ、笹の先頭に短冊をつければ願いが叶うなんて馬鹿馬鹿しいと思わない?」

 「それに、人を押しのけて先頭につけた短冊の願いを神様が叶えてくれると思う?」

 「神様にアピールする方法って色々あるんじゃないかな~・・・」

 こうなれば、「短冊に絵を描きたい」、「大きな短冊を作りたい」、「変わった形の短冊を作りたい」・・と様々なアイディアが子どもたちから出るはずです。この場合は、全てのメンバーが目標を達成出来るようになります。

 それでは上策は何か?それは、教師がいわなくても、上記のようなことが子どもたちから出てくるクラス作りをすることです。具体的には、学校教育の大部分の時間を占めている教科学習の中で、教師が常に競争ではなく協同を目指し、それを求めていれば、それは子どもという鏡に写るはずです。

追伸 原典は「Deutsch,M. 1949 A thoery of cooperation and competition. Human Relations, 2, 129-151」です。