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2004-09-14

[]誕生日 13:52 誕生日 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 誕生日 - 西川純のメモ 誕生日 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 本日は私の45歳の誕生日です。目が覚めたら、横にいる家内から、誕生日おめでとうと言われました。暫く立つと、息子がもぞもぞします。目が覚めると、「今日はお父さんの誕生日、お誕生日おめでとう」と言われました。それから、お誕生日の歌をうたったりしました。昼職後には院生さんから、おめでとうを言われました。帰宅すると、今日のメインディッシュは鯛のお刺身です。いつもだったら焼き肉というところですが、ダイエットをしようとする私に気遣ってのメニューです。でも、お誕生日は焼き肉とケーキと思っている息子のために、焼き肉を少し用意してくれました。家内の手作りのチーズケーキで〆です。

 私は18歳の時に筑波大学に入学してから、33歳で結婚するまで、15年間は一人暮らしです。その殆どを一人の誕生日を過ごしました。自分の誕生日を忘れたこともあります。その間に、45歳の今の誕生日の姿を予想できませんでした。家族が仲良く、健康で、腹一杯に食べてお酒も飲める、そして関わる人と良き関係を結べる、これに勝る幸せはありません。神様、仏様、ご先祖様、家族、皆様に感謝します。

[]お約束 13:52 お約束 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - お約束 - 西川純のメモ お約束 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 息子からの誕生日プレゼントは私の顔の絵です。私の宝物です。ビックリしたのは、絵になっている点です。今まで、息子が絵を描いているそばにいましたが、絵といえるようなものはありません。単に、○をぐるぐるといつまでも繰り返し書いているようなものです。だから、目と鼻と口と耳と髪の毛がそれなりに描いてあり、どう見ても人の顔に見える息子をの絵を見てびっくりしました。おそらく、家内がだいぶ手伝ったものだろうと想像しました。ところが、家内に聞くと違うそうです。家内は、「お父さんの顔は丸いよね」(息子、○を書く)、「目をかこうか」(目の位置に黄色いクレヨンをごじごし書く)、「鼻をかこうか・・」(鼻の位置に赤いクレヨンでごしごし書く)というように、ポイントポイントで語りかけただけだそうです。

 息子の描く力量は限られています。クレヨンを微妙に動かすなどは無理です。それは、息子は承知しているでしょう。息子の目の前にいる私の顔は複雑です。それを目に見えるよう(つまり写真のように)写実することは無理であることは息子も理解しています。だから、書こうとしません。ところが、家内からポイント、ポイントを指示され、それを下記さえすれば良いことを教えられることによって息子は書く勇気を与えられたのだと思います。我々の描く絵には一定のお約束があります。それを写真のように書かなくても、それなりに書くことが出来ます。そして、その絵を見ている人は、それが何かを理解できます。想像してください、もし、太陽を写真のように描ける人がいるでしょうか?無理です。でも、本当は赤くはない太陽であっても赤く書き、何個かの黄色い突起を描けば、大人は太陽と判断できます。なぜなら、太陽の絵のお約束があるからです。

 小さい子どもの絵を不思議に感じていました。なぜ、あんな捨象した絵を掛けるのだろう、と。そして、浮世絵のディフォルメした絵を見て不思議に思いました。子どもや江戸時代の人には、あんな風に人の顔が見えるのだろうか、と怪訝に思いました。でも、今は分かります。子どもにも江戸時代の人にも、見えるものは私と同じなんです。でも、お約束にしたがって絵を描いているに過ぎないんです。江戸時代の人は、そのお約束が分かっているので、あのデフォルメした絵を見て、実際の画像が想像できるのだと思います。息子は家内から顔のお約束を教えてもらったから絵を掛けるのだと思います。

 本日の学年ゼミではNちゃんが、子どもが分かったというときのプロトコルを語ってくれました。プロトコルを聞きながら、改めて分かった人は、分からない人の気持ちを分からないな、ということを再確認しました。我々は、知らず知らずのうちに「お約束」を持っています。だから、了解し得ます。でも、自分がどんな「お約束」を持っているかは、忘れてしまっています。だから、その「お約束」を知らない人を理解できません。