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2004-09-27

[]異学年学習 13:32 異学年学習 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 異学年学習 - 西川純のメモ 異学年学習 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 我々が異学年学習を始めたのは平成12年のK閣下からです。それから、色々なことが分かってきました。K閣下は、じゃれ合いを発見し、異学年学習がうまくいくと固定的な学年意識が崩れることを明らかにしました。そして、次の年のKさんは、第一に教科学習においても異学年学習が有効であること、第二に異学年学習の方が同学年より人間関係形成に有効であること、第三に固定的な学年意識は崩れるものの上級生にバックアップされた下級生の活躍という関係が存在することを明らかにしました。さらに、Mさんは強制的な異学年学習を仕組まなくても、物理的に同じ場所にいて、教師が交流を阻害しなければ、極めて効率の良い学習が成立することを明らかにしました。

 本日、Ymさんの異学年学習の研究成果の骨子を読みました。素晴らしいものです。多くの成果がありますが、あえて短くまとめると、より多様な学年が参加するほど学習は質が高くなるということです。さらに、異学年学習における教師の考え方の影響と、その逆に、異学年学習によって教師の考え方が変わるということを明らかにしています。

 M2のHもYzさんも異学年学習を対象としていると言えるでしょう。Hは異学年学習の成立する最低条件は、教師が喋りすぎないことであり、それを発展させるのは上級生が下級生の発言に興味を持つことであることを明らかにします。さらにYzさんは教師の間の異学年(経験年数)学習が成立することを明らかにしています。

 異学年学習は、もともとはレイブの正統的周辺参加理論から出発しました。しかし、現在、我々が明らかにしたことは、彼の「状況に埋め込まれた学習」に勝るとも劣らないものだと、不遜ながら感じます。私が異学年学習に関して知りたいことのほぼ全てが明らかにされ、これから異学年学習をする人に対して、自信を持って指針を語るに十分なデータがあります。それが、たった5年間の成果です。おそらく、大学の研究者が、学校現場に出かけて研究を進めていたとしたら、20年(つまり、その研究者の研究人生のほぼすべて)かけても出来なかったと思います。現職(それも有能な)が2年間フルに研究に没頭できるという本学の特長を最大限生かした結果だと思います。

 ということで、この成果を学術的にも実践的にも広く還元するために、お三人の尻を「ニコニコ」しながら、一層叩くとしましょう。

追伸 異学年学習の成果は「学び合う学校」(仮)という本にまとめたいと思います。平成14年までの成果に関しては,既に原稿にまとめております。その中にジェンダーに関するYさんの研究を現在は含ませています。しかし、Yさんの研究は、人権・人間関係に関する本に移動したほうがテーマ的にすっきりするし、Yさんの研究もより生きるように感じます。一方、お三方の研究を入れて出版しようと思います。一つ心配があります。おそらく、全体的には西川研究室の本としては、かなり多頁の本になり、結果として2000円を超えるかも知れません。値段が張れば、出版に関わる出費も多くなります。でも、何かの予算を獲得して、何とかしたいと思います。だって、それが研究室の主催者の「本当」のお仕事の一つですから。