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2004-10-01

[]自己判断・自己責任 13:25 自己判断・自己責任 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 自己判断・自己責任 - 西川純のメモ 自己判断・自己責任 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 最近、お酒のコマーシャルで、会者の上司(とおぼしき人)が部下(とおぼしき人)に向かって、「全ては君に任せた、だが、失敗は絶対に許されない」と連呼する場面がありました。これって、うちの研究室にちょっと似ているが、全然違うな、と思いました。

 「全ては君に任せた」これは、省略していますが、どうやるか(つまり方法)は任せた、という意味で、我が研究室と同じです。違うのは「失敗は絶対に許されない」の部分です。これまた、当たり前すぎるので省略していますが、許さないのは、その人の上司です。つまり、他人さんが許さないのです。そりゃそうでしょう、その人が失敗すれば、会社に影響を与え、そして上司が実質的な被害を受けるわけですから、怒りたくもなるでしょう。でも、院生さん・学生さんが失敗したとしても、私の給料に響くことはありません。だから、「結果を出してね」と私はいますが、結果を出さなくても怒ることはありません(まあ呆れるかも知れません)。結果を出せなければ、なによりもご当人が一番困るのです。というより、自分自身が結果を出したいと願う人が我が研究室に入りますし、私もそれを文化としています。そして、「うちの研究室は大変ですよ~、でも、得られる結果は大きいですよ~」とちゃんと説明し、両者の間で契約を結びます。つまり、失敗したからといって他人様から罰が下るわけではありません。失敗したら、本来、自らが獲得できる成果を失うだけのことです。そして、失って困るのは私ではなくご当人なんです。

[]おとぎ話 13:27 おとぎ話 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - おとぎ話 - 西川純のメモ おとぎ話 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 現職の先生方に耳寄りの情報です。現場で日々実践している方にとって、藁にもすがりたい時があると思います。本来でしたら、大学の教育研究がその藁(いや大船)になるべきですが、そうでもありません。その現状は文部科学省(旧 文部省)でもよく分かっています。実は、一般の先生方にはあまり知られていませんが、かなり前から文部科学省は面白い企画を行っています。

 全国には50程度の教員養成系大学がありますが、その大学から優秀な教育学の中堅の大学の先生を小中の現場学校に2年間派遣するんです。その先生は現場学校に入って、自分の教育研究の成果を学校で実践しながら、実践と研究を融合することを目指します。1年半、その実践を行った大学 の先生が、小中の現場学校で実践を発表するんです。面白いと思いません?是非、行きたいと思いません?

 ところが、その発表会に行った小中学校の先生によると、それほどでもないそうです。ある小中の先生が実際に発表会に参加し、その大学の先生の授業を見ると、ほぼ大学の研究(かって自分が大学で受けた授業)とほぼ同じなんです。どう見ても、小中の授業に見えません。発表の後、それが分からなかったので、「今の授業は、教科書のどの部分に対応するんですか?」と質問しました。そうすると、その 大学の先生は「え!?教科書って何ですか?」と逆質問をします。また、ある大学の先生の場合は、その授業の大部分の時間を、大学で何をやってきて、そして、どういういきさつで小中学校に行くことになったかを説明し、最後の一部分に授業らしきことを話しました。そこで、「授業では授業に関係することを話すべきで、いきさつ等は子ども達の前で長々話すべきでは ないのでは?」と意見を言いました。しかし、それを言われた大学の先生はポカンとしていました。その参観した小中の先生は思いました、「授業の好き嫌いは、趣味の問題、私がその授業を分かる分からないはしょうがない。でも、小中の授業の場合、教科書、つまり指導要領を意識しない授業はあり得ない。それに、授業と関係ない雑談ばかりの授業は、授業ですらない」と思いました。

 その大会の後日談があります。上記の質問を言われた大学の先生は、その学校の教育委員会に、「今の授業は、教科書のどの部分に対応するんですか?」、とか、「授業では授業に関係することを話すべきで、いきさつ等は子ども達の前で長々話 すべきではないのでは?」という不届きな質問・意見を言う小中学校の先生がいると抗議したそうです。そのようなことから、その発表会の主催者から、その人に、「発表する大学の先生は様々で、それを配慮した発言をして欲しい」と要望がありました。その先生は、発表 会の主催者に「それって、私は発言するな、ということですか?」と質問したところ、ニヤリと笑われました。その参観した先生も分かります。その大学の先生も、悪気があるわけではないんです。大学から2年間も離れようとする人なんですから、教育に関する熱意は十二分です。その気持ちを萎えさせる発言は控えるべきだという配慮から発したものだと思います。でも、参観した小中の先生は「それだけの決意を持って大学を離れる先生なんだから、小中の先生を震撼させる授業が出来るはずだ。既に1年半も時間を費やしている。」と思いました。そして、そんなレベルの授業を、授業だと思いこんでいる大学の先生の授業を、自分の一生をかけた授業に対する侮辱と感じました (ただし、その小中学校の先生の授業を侮辱しているのは「その授業」で、「その大学の先生」ではありません)。その先生は今年は参観しないそうです。

 実は、上記は架空の物語です。もう一つ、話があります。こちらは実話です。

 全国には50程度の都道府県がありますが、その都道府県から優秀な中堅の小中学校の先生を大学に2年間派遣するんです。その先生は大学に入って、自分の教育実践の成果を大学の研究に関係させながら、実践と研究を融合することを目指します。1年半、その研究を行った小中学校の 先生が、大学で研究を発表するんです。面白いと思いません?是非、行きたいと思いません?

 ところが、その発表会に行った大学の先生によると、それほどでもないそうです。ある大学の先生が実際に発表会に参加し、その小中学校の先生の研究を見ると、ほぼ小中学校の授業(かって自分が小中学校で受けた授業)とほぼ同じなんです。どう見ても、大学の研究に見えません。発表の後、それが分からなかったので、「今の研究のオリジナリティはどこですか?」と質問しました。そうすると、その小中学校の先生は「え!?オリジナリティて何ですか?」と逆質問をします。また、ある小中学校の先生の場合は、その研究発表の大部分の時間を、小中学校で何をやってきて、そして、どういういきさつで大学に行くことになったかを説明し、最後の一部分に研究らしきことを話しました。そこで、「研究発表では研究に関係することを話すべきで、いきさつ等は参観者の前で長々話 すべきではないのでは?」と意見を言いました。しかし、それを言われた小中学校の先生はポカンとしていました。その参観した大学の先生は思いました、「研究の好き嫌いは、趣味の問題、私がその研究を分かる分からないはしょうがない。でも、オリジナリティを意識しない研究はあり得ない。それに、研究と関係ない雑談ばかりの研究は、研究ですらない」と思いました。

 その大会の後日談があります。上記の質問を言われた小中学校の先生は、その大学の副学長に、「今の研究のオリジナリティはどこですか?」、とか、「研究では研究に関係することを話すべきで、いきさつ等は参観者の前で長々話 すべきではないのでは?」という不届きな質問・意見を言う大学の先生がいると抗議したそうです。そのようなことから、その発表会の主催者から、その人に、「発表する小中学校の先生は様々で、それを配慮した発言をして欲しい」と要望がありました。その先生は、発表 会の主催者に「それって、私は発言するな、ということですか?」と質問したところ、ニヤリと笑われました。その参観した先生も分かります。その小中学校の先生も、悪気があるわけではないんです。小中学校から2年間も離れようとする人なんですから、教育に関する熱意は十二分です。その気持ちを萎えさせる発言は控えるべきだという配慮から発したものだと思います。でも、参観した大学の先生は「それだけの決意を持って小中学校を離れる先生なんだから、 大学の先生を震撼させる研究が出来るはずだ。既に1年半も時間を費やしている。」と思いました。そして、そんなレベルの研究を、研究だと思いこんでいる小中学校の先生の研究を、自分の一生をかけた研究に対する侮辱と感じました (ただし、その大学の先生の研究を侮辱しているのは「その研究」で、「その小中の先生」ではありません)。その先生は今年は参観しないそうです。

 昔々、あるところに上越教育大学という大学がありました。そこに西川純という先生がいました。その先生は「明日」の発表会に参加しませんでした。そのため、みんなみんな幸せに暮らしたとさ。めでたし、めでたし。

追伸 戸北・西川研究室の皆さんに関して、参観者を意識したプレゼンがあり、オリジナリティを意識した内容に関して、みじんも不安はありません。でも、現場の小中学校の先生方に一流の研究を願い、出来ると信じるのは間違いでしょうか?そうでないですよね?皆さんが実績において証明していますよね!OB各位へ、明日、例の発表会があります。ご安心あれ、何も言いません(言えません)。