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2004-10-02

[]落合監督 13:24 落合監督 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 落合監督 - 西川純のメモ 落合監督 - 西川純のメモ のブックマークコメント

昨日は中日のリーグ優勝があった日です。熱狂的なドラゴンズファンのM婦人、また、修了されたTさんが喜んでいる姿を想像しました。一方、私は野球というものに「全く」興味がありません。強いて言えば、ゲームの勝ち負けに一喜一憂し、また、その結果に関して蘊蓄を語る「人」を面白く拝見する程度です。本日、新聞をざっと読むと落合監督の記事が載っていました。興味のない記事ですが、なんとなく読みました。でも、ぐっと来る部分がありました。それは、監督就任と同時にコーチに怒鳴ること禁じ、その際、「怒鳴らなくても、ダメなやつはどうせクビになるんだから」と言ったという部分です。

 OBから来るメールの中には、特定の子のことで悩むメールが来る場合があります。その子がどうしようもない場合に対しては、「その子の行動の責任をとるのは、あなたではなく、その子なんです。そう考えてみては?」と、その子に拘るべきでないとメールします。その言葉と重なる部分が大きいな、と思いました。

 落合監督の「怒鳴らなくても、ダメなやつはどうせクビになるんだから」も、私の「その子の行動の責任をとるのは、あなたではなく、その子なんです。」は冷たく感じられるかも知れません。でも、そうではないと私は思います。それは、我々の研究によれば、特定の子どもに拘ることは、それ以外の大部分の子どもを捨てていることを意味しています。また、特定の子どもに拘ることは、その子どもを他の子どもと繋がることを阻害することを意味しています。それ故、特定の子どもに拘らず、子ども集団に着目することが、実は、その特定の子どもに対してもベストな方法だと自信を持っています。

 落合監督は、殆ど全ての選手に公式試合出場の機会を与えたと記事にありました。おそらく、中日の選手は「俺は監督から愛されている」と思わなくとも、「俺たちは監督から愛されている」と感じていたと思います。だから、「怒鳴らなくても、ダメなやつはどうせクビになるんだから」とコーチに言っていたと知ったとしても、冷たい監督とは思われなかったのだと思います。

追伸 落合監督の場合、優勝の後に乗り越えなければならないハードルがあります。プロ野球選手の目的は、まずは「お金」です。限られた予算を選手達に分配しなければなりません。誰かに多くを配分することは、別の誰かの配分を少なくすることを意味します。つまり、競争的関係が生じます。歴史上の有名な決戦の後、10年間のうちに勝利者側の半数が消えていくのが通例です。それは勝者の全てを満足させるだけの資源はないからです。現代社会において、さすがに殺すことは出来ません。また、優勝チームの選手を大量解雇することも出来ません。しかし、優勝の余韻がさめるとゴタゴタが生じ、次の年にぼろ負けし、その際、リストラが起こります。だから、膨大な資産を持つチームしか連続優勝が出来ないのだと思います。ちなみに、上記のことは、競争関係で成立させているクラスにおいても成り立つことです。

[]イジメの本当の原因 13:24 イジメの本当の原因 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - イジメの本当の原因 - 西川純のメモ イジメの本当の原因 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 本日、ある先生から、勤務校におけるイジメ問題の相談がありました。イジメ問題の原因は、子どもを固定的に管理しようとする教師の考え方(特に競争意識)が原因であり ます。でも、犯人は「そいつだ!」として一件落着ではありません。実は、その教師自身も、その教師を取り巻く学校の犠牲者です。そして、その学校も、それをとりまく市町村の教育界の犠牲者であり、それさえも・・、となります。でも、イジメの原因は「日本社会が悪い」と訳知り顔の顔で講釈したとしても、現実の子どもは救われません。なんとかイジメを解決しなければなりません。なんとか、その教師の考え方を変えなければなりません。でも、変えるためには、「考え方」の重要性を、その教師に気づいて貰わなければなりません。しかし、それは困難です。その理由には、二つ理由があります。

 第一に、イジメを引き起こすような考え方の教師が教えたとして、全てが全て、イジメ問題が表面化するか、といえば、そうでもありません。 何故か、表面化しないことも多いと思います。例えば、その地域の特殊性、そのクラスのメンバーのキャラクター、前年度の担任の指導の遺産、などがあります。でも、一番多いのは、クラスのメンバーの多く(その中には虐められている子どもも含まれる場合があります)がイジメと卒業まで認識しなかった(出来なかった)という悲惨な場合だと思います。従って、イジメが生じたクラス とイジメが生じなかったクラスの相違点を見出そうとしても、混乱を生ずるばかりです。

 第二に、「考え方」が見えづらい点です。表面上、全く同じことをしたとしても、「考え方」が違えば、結果は違います。子どもは教師の考え方を、長い時間の多くの言動から総合的に判断します。だから、ある時、ある場所における個々の言動を見ているだけでは、それが見えません。ところが、そのような長い時間の多くの言動を見ているのは、子どもだけなので、教師や親には見えづらいと思います。

 上記を乗り越えるためには、我々がやっているような長期間にわたって、クラス全員の言動を記録・分析するというような気の遠くなるようなことが必要になります。