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2004-10-20

[]超猛者 13:02 超猛者 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 超猛者 - 西川純のメモ 超猛者 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 本日、あることがあって、自分の大学学部1年の時を思い出しました。

 私が筑波大学第二学群生物学類に進学したのは行動学を学びたかったからです。高校時代に動物行動学でローレンツとティンバーゲンの二人がノーベル賞を受賞しました。ローレンツは啓蒙書も書き、それが実に面白い本(例えばソロモンの指輪、人イヌにあう等)です。ティンバーゲンの「動物の言葉」は研究 書ですが、素人にも分かりやすい内容です。それを読みながら、行動学をもっと発展させれば、人間の行動も明らかに出来るのではと考え始めました。さらに読み進めると、日本には今西錦司という人がいて、京都大学にはサル学で世界の最先端をいく研究がなされていることを知りました。さすがに京都大学の理学部は合格しそうもなかったので諦めましたが、当時、開学当初であった筑波大学に行き、そこで行動学を学びたいと思いました。

 幸い、筑波大学に入学し、希望に胸膨らませながら授業を受けました。ノーベル賞を受賞するぐらいの学問なんだから、どの大学でも教えてもらえるのだろうと考えていましたが、間違いでした。今、研究を職業として分かるのですが、どの大学でもやっている学問は、学問としては古い学問です。本当の最先端は、ごくごく一部の大学でやられているから最先端なんです。行動学を本当に学ぼうとするならば、当時であれば京都大学と東京農業工業大学ぐらいであることが大学1年でも分かりました。それでも諦め着れません。生物学類の同級生に私と同じように行動学を学びたいと願った学生が二人いました。そこで、大学1年に3人が自主ゼミを始めました。最初のテキストはサイエンティフィックアメリカンの行動学の特集号だと思います。英語で書かれた論文を3人で輪読しました。私も、個人的にローレンツやティンバーゲンの英文論文を読みましたし、和訳された研究書を読みあさりました。

 言うまでもなく、私たちが読んだ論文は大学の講義とは全く関係ありません。どんなに時間をかけても、それが成績に反映されないことは十分分かっていました。しかし、それを気にしたことは全くありません。大学での講義は、卒業するために、そこそこの成績を取れば良いんだと見切っていました。一方、「学問」には強い憧れを持っていました。何か分からないけど、目の前の原書の論文を読み解けば、とてつもないことが分かり、とてつもないことが出来るように感じていました。あたかも、空を飛べる呪文が目の前の原書の論文の中にあるように感じていたようなものです。この学問に対する憧れは、一部は正しく、一部は間違っていることを今では分かります。でも、この憧れは大事だと今でも思います。それがなければ、今の現状を越えた次元に達することは出来ません。確かに「空を飛ぶ」ことは出来ません。しかし、「空を飛ぶ」ということは、今の現状でも「願える」ものです。でも、学問の面白いことは、今の現状では願うことすら思い浮かばないことを、願えるようになることなんです。残念ながら、上越教育大学に勤めてから18年、私が大学学部1年でやったような馬鹿げたことをする学生さんにお目にかかったことはありません。もちろん、それが悪いというわけではありません。実に、ジェントルで、常識人で、とても良い学生さん達です。でも、あの当時の私のような馬鹿げたところを感じることは出来ませんでした。

 本日の夕方、私の研究室に見知らぬ学生さんが訪ねてきました。用件は私の講義を聴きたいとのことでした。その学生さんは大学1年だそうです。私は、「聞くのは結構だけど、私の講義は全て標準履修年は2、3年だから、1年生は聞けるのかな~」と聞きました。そうすると、「教務に聞いたところ、単位にはならないが、聞くことは出来ると いうことでした」とこともなげに応えます。私が「じゃあ、単位にならなくてもいいの?」と聞くと、こともなげに「はい、私は子どもを見る研究を勉強したいと思っています」と言います。正直、ビックリして、その学生さんに興味を感じました。そして、何で私の授業を聞きたいの?と質問しました。その結果、理由は二つだそうです。その学生さんの親御さんが教師で、その関係で本学でどのような研究をやっているかを知り、学びたいと願ったそうです。そして、第二は、先輩からの口コミで私のことを知ったそうです。その後しばらく、その学生さんと話しました。子どもを徹底的に見る学問に対する憧れと期待を感じます。そして、忘れかけていた私の学部1年の記憶を思い出しました。

[]ごめんなさい(その2) 13:02 ごめんなさい(その2) - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - ごめんなさい(その2) - 西川純のメモ ごめんなさい(その2) - 西川純のメモ のブックマークコメント

 本日も、ある先生から本を譲ってくれないかというメールを頂きました。おそらく、その学校の先生の希望をとりまとめた、ある程度まとまった冊数だったので、出版社に著者割引で送ってくれるようにお願いしました。そして、出版社の方に再度確認しました。その結果、基本的には書店での注文は現状で可能になり、実際、書店からの注文が出版社にどんどん届くようになったそうです。ただ、古い情報のままの書店が「絶版だ」と回答しているようだそうです。まあ、一部書店で「絶版だ」と回答される現状ももうしばらく改善されるはずです。それにしても、ネット書店の情報は未だ改善せずです。ご迷惑をおかけします。

追伸 まとまった数だったら、出版社に著者割価格で送るようお願いできます。

[]ほめる 13:02 ほめる - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - ほめる - 西川純のメモ ほめる - 西川純のメモ のブックマークコメント

 去年、卒業した学生は鍛えがいがありました。その卒業研究は素晴らしいものでした。そして、「こんな学生は何十年に1度でないか?」とさえ感じました。

 本日は4年の学年ゼミです。研究のまとめであり、また、会議等が詰まっているため時間がありません。そのため、学生さんには「本日は、私が直接介入する。でも、私がいなくなってからみんなで話し合ってね」と言いました。そして、いつもだったらニコニコ笑って聞いているのに対して、どんどん発言し、さらにはゼミの進行まで私がしました。私が言葉を選ばず、ガンガンと問題点を指摘し、雪隠詰めにします。おそらく、いつになく怖い先生を演じました。でも、可視化します。君らの研究のレベルは、あの昨年の4年生と同様に高いレベルにまで達しています。正直、ウルウルしてしまいそうになりました。皆さんを正しく評価できなかった自分の無能を恥じます。

 私としては、皆さんのダイヤの原石を、光らせるため、そのきっかけに関わりたいと思います。私のみれる部分はごくわずかです。皆さんの間で、私が演じたように互いの研究に対して厳しい意見を暖かく言い合える関係を成立させてください。そうすれば、私が10倍も、100倍も高められるはずです。そうなれば、来週のゼミには、私はニコニコするだけになります。期待していますよ。あと少しです。私にはダイヤの光がはっきり見えます。

 ゼミの時に言ったように、我々の研究は、やっつけ仕事ではないんです。でも、今のままでは、やっつけ仕事との差が見えません。そんなの悔しくありません?私は悔しい!自分自身でウルウルできるものが、ちゃんと目の前にありますよ。