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2005-02-21

[]何で聞くの? 09:39 何で聞くの? - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 何で聞くの? - 西川純のメモ 何で聞くの? - 西川純のメモ のブックマークコメント

 本日は2年生のゼミです。学生さん同士の話し合いは事前にすませており、ポイントとなる疑問に応えるのみだったので短時間で終わりました。昨年末から始まった学年ゼミですが、2ヶ月かけて7冊の西川研究室の本を読破しました。これで一昨年までの 西川研究室の研究成果のレベルに達しました(それ以降は次の本になって出ます)。彼らの議論の質、質問の質から察するに、かなりのレベルに達していることを確信します。ほぼ毎年1冊づつ増えているので、10年後の西川研究室のゼミ生は17冊を読まなければならなくなるのかも知れません。大変ですが、今までの研究成果を組織的に学ぶためには必要なプロセスです。次の課題は、西川研究室の修士論文・卒業論文を一人一人が独自に選び、各自が読み、それを発表することです。この課題の目標 は二つあることを語りました。第一は、本の中で「多くなりました」とか「変化しました」とさらりと一言で書いていることの裏に、どれだけの膨大なデータがあるかを知ってもらうためです。本では、一般の人が読むことを想定しているため、その学術的な理論背景や、詳細な研究方法論、また、データ分析の詳細は省略しています。しかし、そのような学術の裏付けがある実践的な研究であることが、我々の特質です。第二の目標は、人に伝える、ということです。今までは、同じ本を読み、それを議論するものでした。従って、語り合うことに関して、基本的には全員が知っていることです。ところが、それぞれが別々な論文を選んでいるので、互いが読むものが違います。従って、自分の語ることを伝えるのは一層困難となります。伝えるには、それなりの配慮と努力がいります。それを学ぶことを目標としました。それを伝えた後、忙しいので自分の研究室に戻りました。しばらく立ってRが来て、「先生、みんなからの質問ですが、ゼミ一回ごとに別々な論文を題材にすべきでしょうか?それとも、同じ論文を複数のゼミで扱うべきでしょうか?もう一つは、今まで読んだ本に引用してあった論文だけを読むべきなんでしょうか?それとも、それ以外の論文を読んでも良いのでしょうか?」と質問しました。そこで、Rと一緒にあとの学生さんがいる控え室に 戻り、5人を座らせました。そして、大きく息を吸ってから「なんで、そんなこと聞くの?」と言いました。そして、再度、次回のゼミの目標は「さらりと一言で書いていることの裏に、どれだけの膨大なデータがあることを知る」、「人に伝える」の二つであることを述べました。そして、「その目標を達するならば、どうするかは君たちが考えればいい」と伝えました。そして、「もしかしたら、君らが決めたことを私が否定するかも知れない。でも、君たちがちゃんと考えた末に出した結論であれば、それをちゃんと言えばいい。大抵は、「君たちがそう考えたならば、分かった」と言うと思うよ。しかし、君たちが目標に反する方法を考えていたならば議論となる。でも、一番悪いのは、私が否定したとたんにヘナヘナになるのが一番悪い。それは、何も考えていないということだから。」と言いました。彼らが本日手に持っていた本にも「何故そんなこと聞くの?」という言葉は何度も書いています。私は私の手の内をさらすことは大事だと思っているので、ことある毎に書いています。でも、文字で書かれていることを、改めて言われた時に、本当に「何故そんなこと聞くの?」の意味が本当に分かると思います。

 きっと彼らは「何故そんなこと聞くの?」と言われるような質問をしなくなると思います。自分たちでちゃんと考えず質問するとどうなるかは分かったと思います。そして、そうする理由は、みんなに主体的になって欲しいし、それが出来る学習者だと信じている、ということが伝わったと信じています。(5人ともちゃんとこのメモ読んでいるかな~?)