■ [大事なこと]嘘
Obさんと話しました。Obさんからは到達度別指導の是非に関する疑問が私にぶつけられました。私は、今までの本に書いたように、認知研究にもとづく問題点(つまづきの多様性、自動化)、学び合い研究に基づく問題点(学習の上下に拘らない子どもが作り上げる学びの集団、学習達成度と心不分離・・)を語りました。Knさんは、「また言っている」と感じながらニコニコしています。また、Tさんは、混ざりたいような、重すぎるような・・という感じで避難してしまいました。でも、二人がいなくなってから、大事なことを語りました。
到達度別指導には色々な問題点があります。私が今まで語ったこと、また、Obさんが好きなSM先生の主張・・、いろいろあります。でも、最も重要な問題点は、教師が本当の目標を語れないということです。到達度別指導をやっている学校の先生は、子どもたちに対して、到達度別指導をやるとき、何と語っているでしょうか?おそらく、嘘を言っているはずです。だって、到達度別指導をちゃんと説明すれば、「出来ない子どもは出来る子どもの勉強の邪魔」、「出来る子どもは出来ない子どもの勉強の邪魔」ということになります。そんなことを教師は口が裂けても言えないはずです。もしそうであったら、到達度別指導の時間以外 も、同級生は邪魔ということになるわけですから。だから、教師の方は、子どもや親に、口当たりの良い言葉でごまかします。でもね。そんな言葉を信じている子どもや親っているのでしょうか?いないでしょうね。そんな状態で、子どもは「やるぞ!」と思うでしょうか?無理でしょうね。「やるぞ!」と子どもが思わなくて、どれだけの成果を上げられるでしょうか?無理でしょうね。そして、そんな状態の子どもは適当に教師をあしらいます。例えば、「自分のペースでやれるんだよ」と到達度別指導を口当たりの良い言葉で誤魔化せば、子どもはその言葉を信じません。でも、適当に勉強して「自分のペースでやったんだ」と言い訳をします。
教師が願い持つなら、それをちゃんと子どもに語れなければなりません。それが語れないならば、自分の学校教育の目標が定まっていないことを示します。100の問題点より、この嘘の罪が重いと思います。
■ [大事なこと]放任と任せる
我々の主張する「任せる」と「放任」の違いは、分からない人にとっては微妙ですし、誤解しがちです。でも、現M1の方、3年生の方には分かって欲しいと思います。おそらく、皆さんとの2年間のおつきあいの中で、この半年が一番重要です。関わる頻度は一番多いと思います。何故なら、目標の設定の時期だからです。目標の設定とは、教師が関わらなくても学習者が方法を自主的に判断できるようになるための過程です。つまり、「どうしたらいいか?」を悩まずにすむ過程です。「どのようにしたらいいか?」を悩んでいる間は、教師は関わるべきです。それをしないで「任せる」のは「放任」です。でも、いつまでも「関わる」としていならば、教師の指導力が問われます。いつまでも教師に頼っているならば、それは教師の力がないことを示します。
最初に関わることは必要ですが、関わり方は吟味する必要があります。私は皆さんと関わるのは1週間に1回程度です。何故なら、研究には「資料を読む」、「自分で考える」、「人(私以外)と語り合う」時間が必要だからです。毎日毎日関わっては、それらが出来ません。教師が語る必要があることは実はそれほど多くありません。ちゃんとしたテキストを用意すれば、それを読むだけです。教師が語っていることの多くは、「定型的」なものが多いものです。その定型的なものはテキストにしやすいものです。それを学習者に提供すれば、わざわざ演説する必要はありません。我々の研究室の場合は7冊の本がそれにあたります。