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2005-07-01

[]敵と味方 12:26 敵と味方 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 敵と味方 - 西川純のメモ 敵と味方 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 恩と仇は2倍、3倍にして返す、というのが私の基本スタンスです。そのため、敵を作るのも、味方をつくるのもエネルギーを消費します。だから、のべつまくなしに味方をつくりませんし、ましてや敵を作りません。つまり、敬意を持って接するが、利害関係を持たない関係が大多数です。人とつきあいながら、徐々に味方にするに足る人を味方にし、敵にするには手強い相手を敵にしないようにします。その最も基本は、自分が力を持つしかありません。

 私が味方にしたい人、そして、敵にするには手強い相手は、おそらく、私と同じような戦略を立てるはずです。したがって、そのような人が味方になってくれるには、私が味方にするに足る人と認められなければなりません。また、敵にするには手強い相手の敵にならないためには、私が敵にするには手強い相手にならなければなりません。自分が力がありさえすれば、仮に敵対的な関係になっても、やがて味方になります。だって、その方が相手にとって有利ですから。もし、自分の力がないのに、敵にするには手強い相手を敵にしてしまったら、悲惨なものです。自分の力がないのに、力のある人に味方になってもらおうと思って近づいても、いいようにあしらわれるでしょう。

 明確な目標が設定されている組織の中では、上記のようなことを考える必要はありません。あくまでの、その組織の外の人に対してのみ、上記のような戦略をすればいいんです。ところが、明確な目標が設定されていない組織の場合、その組織の中でも、上記のような戦略は必要です。残念ながら、大学は必ずしも明確な目標が設定されているとは言えません。学び合いを研究している私は、そのような世界の中で生きています。

[]研究のまとめ方 12:27 研究のまとめ方 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 研究のまとめ方 - 西川純のメモ 研究のまとめ方 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 本日、Kさんと個人ゼミをしました。そこで、毎年、言っていることですし、メモにも何度も書いていることですが、また、言いました。そして、メモに書きます。書かなければならないな~と思うのは、それだけM2の人たちの研究が進んでいる証拠とも言えます。

 我々の研究でのデータは膨大です。その中には宝の山が埋まっています。もしかしたら、毎年、実践研究をしなくても、去年の院生さん、一昨年の院生さんの記録を見るだけでも修士論文は10や20は出来るかもしれません。見れば見るほど、新たな発見があると思います。でも、それらを見きれるものではありません。そして、それらを人に伝えられるようにまとめることは出来ません。おそらく、自分「だけが」分かる程度なら2年間という修士課程はいらないと思います。2年もかけているのは、自分「だけ」ではなく、確実な新たな一歩を積み上げ、多くの人の心に響かせるためです。

 限られた時間の中で、目の前の宝の山の中から、自分の積み上げる「一歩」を選び出すにはどうしたらいいでしょう。捨てるには、あまりに惜しいものばかりです。その方法は人に語ることです。自分の親しい人、そして、自分の研究をあまり話していない人に、自分の研究を話してください。我が研究室のメンバーは教師として、一流であることを疑いません。その人が無知な人に語るならば、語る内容の選択が行われます。つまり、私が学部生、院生の皆さんによく言う言葉である、「結局、何が分かった?短くいって」に対応する語りがあるはずです。そのような語りに選ばれないものは、研究のまとめの段階でエネルギーを費やすものではありません。

 さて、そのような語りでは、実証的なデータで語ることはないでしょう。いわゆる、先輩教師の武勇伝・失敗談・笑い話に近いものです。しかし、それを実証的なデータで語れるのが我々のオリジナリティの部分です。まずは、定量的なデータで押さえられるところは何かを考えましょう。私がよく聞く、「それは、どんなデータから言えるの?」に当たります。そのような定量データを出すためには、一定のカテゴリーをもうけなければなりません。その部分は定性的な部分です。でも、エリクソンの基準を心にとめながら、定性的データの暴走は押しとどめましょう。定量的データの裏打ちのない議論は、よほどの意志がない限り、暴走してしまいます。そこで、まず話の骨格を定めます。その骨格を定性的なデータで肉付けします。この肉付けによって、具体的なイメージを与えます。そして、読む人の文脈に置き換える材料を与えます(つまり、「あ~、あれのことだな~」とか、「ということは、○○がポイントなんだ」とか、「それじゃ、今度、○○やってみよう」とか)。

 定量的データの骨格があれば、暴走しません。皆さんは、いま、膨大な定性的データの海のただ中にいます。その中から、定量データの骨格を探し出してください。その段階で多くを捨てなければならないでしょう。でも骨格が決まりさえすれば、その骨格に皆さんが感動した定性的データを加えることが出来ます。でも、それでも捨てなければならないものは多いでしょう。でも、皆さんの心の中には残り、これからの数十年の教師人生の糧になることは確かです。そして、皆さんの後輩が、それを人に伝えられるような形でまとめてくれるでしょう。5年後ぐらいの論文や本を見て、「あ~、これこれ、これを言いたかったんだよな~」と膝をたたいているかもしれませんね。