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2006-11-03

[]やっぱりね(その4) 18:17 やっぱりね(その4) - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - やっぱりね(その4) - 西川純のメモ やっぱりね(その4) - 西川純のメモ のブックマークコメント


 (その3)を読まれた、我がゼミの方から以下のようなメールが来ました。その方は、若い後輩教師(Aさん)が学び合いを理解する過程での成長を、ICレコーダーに記録されるAさんの声を聞きながら分析中です。

 『メモを読んで、最近A君の音を聞きながら何となく思っていたことを書きます。メモの中に以前は「怖い」先生だったという言葉がありました。学び合いを成立させる先生に必要というか、あった方が楽なのは「こわさ」のような気がします。『怖さ』ではなく『畏さ』の方ですが。

 西川ゼミがこれほどまでに先生抜きでもハイレベルゼミ運営を可能にしているのは、西川先生に対する畏れが我々にあるからです。西川先生は、適当なことをやっていては、ごまかしのきかない相手であることを我々は知っています。でも、通常の会話では先生をちゃかしたりからかったりするような発言もします。冗談が通じる相手であることも知っています。

 教師と子ども距離感も同様です。先生がいつもおっしゃるように子供は教師の腹を見透かします。教師の人となりも見透かします。この人の言うことなら一応やってみるかと思わせられるだけの力のある先生なら学び合いが軌道にのるまでの時間は、そうでない先生より圧倒的に早くなるのは間違いのないところでしょう。そのあたりが「○○さんだからできるんでしょ。」発言につながるのでしょう。管理者としての能力と置き換えられるのかも知れません。ただ、学び合いを支える根本は「勉強の面白さ」「関わることのおもしろさ」だと私は思います。何となく思っていたことをよくまとまらないままメールしました。最近のあなたは忙しくってゆっくり話すヒマもないから。ウフフ。』

 このメールを読んで、なるほど、と思いました。と同時に、このままだと誤解される可能性があるので、補足します。たしかに『畏さ』があった方が、いいかもしれません。でも、それは必須ではありません。必須なのは、学び合いをテクニックと捉える のではなく、考え方と捉えることが出来るかだと思います。 それによって成立する学び合いによって子どもが感じる、「勉強の面白さ」「関わることのおもしろさ」が学び合いを維持・向上させます。

 学校教育は何のためにあるのか、子どもとはどんな存在なのか、そして自分(教師)は何をなすべきか、という考え方が必須です。それさえあれば、結局、子どもたは学び合い、全方位で高いレベルを達成します。おそらく『畏さ』があれば早いでしょう。でも、『畏さ』が無くても、『おもしろさ』でも十分です。『人の良さそうな雰囲気』でもOKです。ようは「とりあえずやってみよう」ということが出来さえすればです。さらに、それらが無くても、考えさえあれば2ヶ月で出来ます。それだけのものにすぎません。

 私も定時制高校暴走族子どもを教えたときは、虚飾の怖さを身にまとったときが短時間有ります。でも、直ぐ脱ぎました。だって、どう考えても彼らの怖さの方が数段上ですから。そして、彼らの怖さも、結局、自分が身にまとおうとした虚飾の怖さであることに気づき、その下には小学生のような可愛い坊やとお嬢ちゃんがいることをしれば、どんなに怖いカッコしても、撫で撫でできます。虚飾の怖さはナンセンスだし、無意味です。 従順そうに見える子たちを教えている人は、そのナンセンスさに気づかず、虚飾の怖さを身にまといます。でも、子どもたちの本当の怖さは、暴走族の怖さではありません。クラス子ども集団の賢い子どもが、「正当な理由」で教師を拒絶し、それがクラス全体に広まったときです。その時は、子どもだけではなく、親も、そして同僚も敵になります。

 ちなみに、私の『畏さ』の根源は、「単位で脅すこと」によって立つわけではありません。それは虚飾の怖さにすぎません。それによって立つ教師は少なくないですが、そんなの子どもたちに正当に責められたらアウトです。私の私の『畏さ』の根源は、めちゃめちゃ高い要求をするからです。そして、その要求は、その人にとっても、また、その人が属する集団においても正当であり、意味があることを子ども集団が理解しているからです。教師がすべきなのは虚飾の怖さを身にまとうのではなく、課題の意味をちゃんと説明することだと思います。そうすれば、子ども集団は理解し、理解してもらえない子ども子ども集団が説得してくれます。

追伸 我がゼミの現メンバーOBOGだと、理解してくれると思うのですが、その他の方が誤解する人がいるかも知れませんので蛇足で説明します。先に紹介したメールの発信人は、三十代後半の授業力の凄くある男性教師です。馬鹿馬鹿しい ですが、さらに付け加えると、私もその人も「そのての趣味」はありません。我がゼミは、超真面目な話を、超馬鹿話の中に埋め込んで話す習慣が成り立っている集団なのです。蛇足ながら。