■ [虎の穴]内容・時間調節
私は基本的に学生さん、院生さんを「叱り」ません。まあ例外なのは二つです。第一に、西川研究室を信頼してくれた人を裏切る行為があったときです。例えば、実践研究をするために現任校との仲立ちをしてくれたのに、基本的な約束を守らなかったために、仲立ちをしてくれた人に迷惑をかけたときです。これは凄く叱ります。(私自身はものすごい学生だったので、自分に対する迷惑に関しては、嫌みは言うかもしれませんが、叱りません)
もう一つは発表で時間を守らないことです。これに関しては、感情的にもイライラします。時間を守れば、良い講演とは限りませんが、時間を守らない講演は必ず悪い講演です。何故かと言えば、相手方を考えて話を組み立てていないことを意味します。まあハッキリ言えば、マスターベーションを人前でやっているような無様なものです。
教育実習生や若い先生は、どちらかといえば語る内容が多すぎる傾向があります。自分自身では簡単と思えるレベルに押さえると良いと思います。作業量は、自分自身がやったとしたら10分程度で終わるぐらいが適当です。それ以上となると、終わらない子どもが続出します。
教育実習生や若い先生が内容が多すぎる原因は、「沈黙」が怖いのだと思います。つまり、話すネタが無くなった後に、呆然と子どもたちの前で立ちつくす自分が恐ろしいのです。そのため、多めに用意して、それを一気呵成に語り尽くす傾向があります(私がそうでした)。しかし、指導要領に準拠している授業だったら、1校時で学ぶべきこと自体はそれほど多くはありません。その限られた内容を、飽きさせせず、多様な方面から考えさせるのがテクニックです。これが出来るためには、自由自在に雑談が出来るようになると楽です。それがあれば、いくらでも時間調節が出来ますし、子どもを飽きさせずにいられます。
私の場合は、本屋に売っている「話のネタ本」を買って使ったことがあります。それなりに使えましたが、あまり役に立ちませんでした。理由は、自分やクラスにフィットするネタがそれほど多くないことと、第一、1年で数百も語るべきネタがあるわけありません。結局、自分で毎日、ネタを作らなければなりません。
「種切れ」(http://manabiai.g.hatena.ne.jp/jun24kawa/20011124)というメモを書いたことがあります。喜劇王チャップリンの自伝にあったことです。チャップリンの母親は精神的に病んでおり、家庭は暗かったそうです。彼は自分の母親を毎日、笑わそうと思ったそうです。そのために、毎日の出来事を真剣に観察し、それをもとにお話をしたそうです。真剣に観察するならば、日々の普通の出来事の中にも、いろいろな驚きはあるもんです。そのトレーニングが、後の喜劇王の基礎を築いたそうです。一斉指導ではこれが必要です。
<やること>
一番小さい手帳を買って下さい。それをいつも携帯すること。人との話や、通勤の途中にあったことなど、ちょっとでも面白いことがあればメモします。詳細にメモする必要はありません。2、3時間後の自分が分かる程度の殴り書きで結構です。そして、その日に子どもたちに語りたいこと、そのことをどのようになめらかに繋いだらいいかを考えます。子どもたちの前で語り、改良すべきところを考えます。そして、それをワープロの中に書き留めます。これによって自分専用のネタ本が出来ます。自分自身の経験に基づくネタなので暗記しなくても、覚えられます。
これを組織的に合理的にやる方法がブログです。必要になれば、キーワードを入力して検索することが出来ます。それ故に、我がゼミの方には「ブログで一番大事なのは、毎日書くこと」と言っています。ブログは教師修行の一つです。