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2008-11-18

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 多くの教育理論や実践論は、「○○しなければならない」とか「○○を注意しなければならない」のように、現状に付け加えることを求めます。ところが『学び合い』では現状にやっていることの馬鹿馬鹿しさに気づかせ、それを止めることが中心です。そのため覚えることは殆どありません。分厚いと言われる手引き書だって、結局、最初に書いている学校観と子ども観が分かっていれば、自ずと導かれるものです。力学がたった一つのF=mαを3次元に拡張し、それを微分・積分によって導かれるようなものです。私もテクニック的に書くときがありますが、そりゃ、馬鹿馬鹿しいと思いますが、相手がそのように説明しないと分かってもらえないための方便です。

 最近、立て続けて十数件の初めての方からメールを頂き、それらが『学び合い』の驚異的な成果に驚かれている方々でした。「なんで、こんなに効果があるのか」というメールが多いように思います。でも、簡単です。子どもに対して酷い(ひどい)ことをしなくなったからです。

 一斉指導は、子どもにとって苦痛を与えます。考えて下さい。元気いっぱいの子どもを一日あたり6時間もじっと座らせて、黙らせているのが一斉指導です。苦痛を味わっているのは、出来ない子どもばかりではありません。もう既に塾・予備校・通信教材等で分かっている子にとっても苦痛です(まあ、他の子どもに対する優越感で紛らわせるかも知れませんが)。今までの教育理論や実践論は、そのような状態を緩和するために、おもしろい教材や、分かりやすい指導法を「プラス」してなんとかしようとしています。

 考えて下さい。ある学校では、一日6時間、校長からどのように指導すべきかの指導があります。教諭はそれを黙って拝聴し、その話をノートに取ることを求められます。校長の話をしている間は私語は厳禁、自席で静かに座っていなければなりません。それが6時間も続くのです。当然、教諭はイライラしてきます。そこで、そのような教諭が自分の話を「ちゃんと」聞き続け、ノートをとり続けられるように、話を考え、プリントを用意する、そんなことをやっていたらどう思います?それが現状の教育理論や実践論なんです。

 そんなプラスに頭を費やす必要はないと思いませんか?そんなことをするまえに、無意味に6時間もじっと座らせ、黙らせることをやめれば、それだけで効果が絶大です。そして、達成すべき目標をかたり、それが「みんな」であることを求めるだけでいいと思いませんか?それが『学び合い』です。

 以上の理由から初期段階は本当に簡単です。そして、その初期段階でも驚異的に向上します。その段階で何か問題があるとしたら、それは何かが足りないのではなく、不必要、否、有害な何かをしているのです。

追伸 中期段階に進むには「みんな」の徹底が必要です。これは大変です。自分の弱さから「みんな」を不徹底にして、それを合理化する誘惑が常にあります。これを乗り切るには、「達成すること」と「達成することを求め続けること」の違いを理解し、それを子どもに語れるか否かが問われます。ところが「達成する」ことにとらわれた人は、それが乗り越えられません。でも、学校教育で学ぶこと「内容」で絶対に達成すべきことなんて一つもありません。私は九九を全部覚えていません。私はこの5年間、一度も筆算をしたことがありません。大学に入学してから、筆で書くことは芳名帳ぐらいです。従って、書き順が間違っても問題ありません。いや、ワープロで変換すればいいので、読めれば書ける必要はありません。そして、体育以外で跳び箱を跳ぶ機会はこれまでも、そして、死ぬまで一生涯ないでしょう。その私は大学教師として、ちゃんと生活できています。が、残念ながら内容に拘り、「達成すること」と「達成することを求め続けること」の違いを理解することがなかなか難しいようです。結局、学校観が分かるのが難しいのだと思います。