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2009-01-22

[]実験教 09:36 実験教 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 実験教 - 西川純のメモ 実験教 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 私が最初に書いた単著は「何故、理科は難しいと言われるのか?」です。しかし、残念ながら今は絶版です。今、何種類かの本の原稿を書きためています。その中に、理科の本を改めて書こうと思っています。その原稿のゲラの一部をブログにアップしようと思います。是非お読みいただき、「ここが分からないぞ~」とか、「そういえば、こんなことがあった」ということを教えてください。よろしくお願いします。さて、最初は「実験教」です。

 理科人は実験が大好きです。それが証拠に、理科の研究授業の9割以上は実験場面を設定します。後ろに居並ぶ先生方を前に、練りに練った導入の話、ひねりにひねった実験を行い、思った通りの子どもの実験結果を、魔法のようにまとめ上げる、というのが理科人のねらいだと思います。そして、そのような実験を行うと、子どもは自然に興味を持ち、分かると考えています。それ故、理科人は実験を多くすべきだと考えています。私は上記を、理科人特有の「実験教」という宗教だと思います。

 さて、理科嫌いの子どもたちは実験をどう思っているでしょうか?例えば、振り子の周期を考えてみましょう。

 振り子の周期は紐の長さには影響されます。紐が長くなれば、ゆっくりとふれ、短くなれば速くふれます。ところが、おもりの重さには影響されません 。従って、おもりが1トンでも100gでも変わりません。しかし、そんなことを信じられない子どもがいるのは当然です。理科人の教師だって、直感的には「え!?・・・」と思うのが当然ではないでしょうか?そこで実験です。方法はおもりの数を1個、2個、3個と増やし、それを10回振らせます。それをストップウオッチで測定させます。そして、その時間が変化しないことを確認するのです。でも、理科嫌いの子どもはどう思うでしょうか?

 子どもの実験ですので誤差は当然です。10回振らせた時間を各班に応えさせれば、19.2秒、19.3秒、19.2秒、19.4秒・・・・となります。教師はそれらを黒板に書いて、「ほーら変わらないでしょ」とまとめます。でも、理科嫌いな子どもは「ほーら変わるでしょ」ではないでしょうか?教師と理科嫌いの子どもの違いは、「振り子の周期は重さによって変わらないはずである」と考えているか、「振り子の周期は重さによって変わるはずだ」と思っているかの違いです。「振り子の周期は重さによって変わらないはずである」と思っている教師は、無意識にその前提に外れるデータは「誤差」と切り捨ててしまいます。しかし、そのようには理科嫌いの子はそうおもいません。従って、そのような子どもにとっては上記の実験は無力なのです。

 誤差が問題となると、理科人は誤差がないようにするにはどうしたらいいかに頭をひねります。これって、理科好きな理科人には楽しい時間なんです。おもりの空気抵抗を考慮したり、光センサーとコンピュータを繋いで正確に時間を測定したりします。さらには子どもの操作ミスを減らすために、おもりを離す位置や時間を正確にコントロールする機器を開発します。数ヶ月かけて、19.257秒、19.256秒、19.255秒・・・という結果を得られるようになったとします。しかし、ここまでやっても理科嫌いな子どもにとっては「ほーら変わるでしょ」と言うかも知れません。結局、実験には誤差はつきものです。そして、誤差を誤差と認識するためには、理論がなければなりません。そして、その理論を実験で証明しようとしているのですから、どうどう巡りです。

 そこで物理ではコンピュータシュミレーションが使われる場合があります。しかし、シミュレーションをすれば誤差を消すことは出来ますが、その結果として「実験には誤差がある」という自然科学にとっては重要な認識が消えてしまいます 。いずれにせよ、先の手の込んだ実験にせよ、シミュレーションにせよ、込み入ったことをやれば子どもたちにとってブラックボックスになります。なぜなら、ブラックボックスがブラックボックスにならないためには、そのことを理解していなければならないのですから。これまた、どうどう巡りになります。

 結論を言えば、実験は、そのことを理解している人(つまり実験をしなくてもいい人)にとっては楽しいかも知れません。しかし、そのことを理解してない人にとっては、あまり有効な手段ではありません。少なくとも、理科人が考えるほど有効ではないことは確かです。

[]保護者 07:01 保護者 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 保護者 - 西川純のメモ 保護者 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 何度も何度も書いたことを、再度書きます。

 『学び合い』という名称は、本当はしっくりきません。というのは、『学び合い』は学び合うことを目的としているのではなく、人としての生き方そのものですから。それも、学校教育という枠を超えたものです。最も合っていると思うのは、「人権教育」とか「民主主義教育」だと思うのですが、それだと社会科教育のごく一部を扱っているように取られてしまうと危惧されます。まあ、『学び合い』というような分かったようで、分からない言葉を使った方が良いのでは、と思っています。

 これまた何度も書きましたが、現状を打開する力を持っている味方は保護者です。保護者の方は気づいていない方が多いですが、保護者の方にはもの凄い「権力」があります。それを誤解して乱用しているのがモンスターペアレンツですが、たった一人であってもモンスターになれるほどの権力があるんです。ただし、モンスターは老練な教員には負けますし、学校体制が整えばどんな先生のクラスのモンスターもつぶされます。しかし、多くの保護者に理解され、多くの保護者の支持の元、正当な主張をする保護者集団は、たとえそれが1クラスの保護者集団であったとしても、県の教育長さえも動かすだけの権力を持っています。だって、モンスターではなく、正義の味方のウルトラマンが数十人集まったら、そりゃ強いに決まっています。

 我々は、民主社会においても不当に弾圧されている数千万人の子どもと保護者、そして、不当に圧力をかけられ職業の喜びを奪われている教師を救おうと思っています。そのためには保護者の協力が必要です。教師の同志は、学び合う保護者集団を創り上げて下さい。

 昨夜、『学び合い』グループの管理者の一人として、「はてな」からメールが届きました。保護者のある方が、「保護者」として入会してくれました。そのメールを読みながら、「やった!」とガッツポーズをしました。とても心豊かに眠ることができました。

追伸 個人的には、もっと多くの企業の経営者も同志になって欲しいと願っています。