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2010-04-01

[]ご挨拶 16:46 ご挨拶 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - ご挨拶 - 西川純のメモ ご挨拶 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 私が学術研究に足を踏み入れた大学生の頃は、学会の姿が見えませんでした。大学院になり学会に参加するようになりましたが、学会の役員は雲上人です。学会誌編集委員学会長は、直に話してはおそれおおい存在でした。

 が、たいして成長せずに、ただ、年を重ねるうちに、3年前の47歳に理科教育学会の学会誌編集委員長になりました。そして、本日、臨床教科教育学会の学会長を引き継ぐことになりました。本当に不思議な気分です。一番近い感覚は、「運転免許の初めての路上研修」もしくは、「教育実習の最初の授業」のようです。つまり、「本当に私がやっていいの?」という気持ちです。が、引き受けるならば、出来ることをちゃんとやりたいと思います。そのためには、みなさんの協力が必要です。本メモをお読みの会員のかたもおられると思いますので、ご挨拶(正確にはお願い)申し上げたいと思います。

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学会長を引き継ぐにあたって

 前学会長の戸北先生から学会長を引き継ぐに当たって、会員各位にご挨拶申し上げます。

 本学会は「学習者をみる教育研究」、「学術研究者と実践研究者の新たな関係」という二つの理念のもとに設立されました。臨床教科教育学セミナーを積み上げ、質の高い研究発表が積み上げられています。その成果は学会誌においても蓄積がなされています。それらが認められ日本学術会議力学研究団体となりました。このような外形的な成長を越えて、本学会が成長し続けるには何が必要でしょうか?私は二つのことが必要だと思います。第一に、本学会の独自性です。第二は、知の発信です。

 本学会学校教育の大部分を占める教科学習を対象として、その場における学習者や教師を徹底的に観察・分析するという、「学習者をみる教育研究」を柱としています。また、教育の学術と実践の融合を、両者の協働の中で実現しようとする「学術研究者と実践研究者の新たな関係」を柱としています。この二つの柱は、本来、教育学研究でやるべきことでありながら、不十分であった部分です。この二つを真に行い続ければ、本学会の独自性は担保されると考えています。我々は、臨床教科教育学を、生の教育現場から離れた文献研究や、実践を伴わない教材開発、また、質問紙調査のみの量的研究にならないよう気をつけなければなりません。それらの価値を否定するものではありませんが、そうなれば本学会の独自性は失われます。これが、第一の本学会の独自性です。

 独自性を保持していれば、他の学術では見いだせない新たな知を生み出せます。事実、我々は多くの貴重な知を生み出しています。しかし、もし、それらの知が本学会の中でのみ貫流しているならば、本学会の存立の意味はありません。それらの知は、学校の実践現場に影響を与えなければなりません。他の学会で参照され、新たな知の端緒にならねばなりません。そのためには、会員各位が、臨床教科教育学が明らかにした知を、各位の場において発信することが必要です。これが、第二の知の発信です。

 会員各位へ上記二つのことを実現するために、お力を頂きたいと願います。それにより、学術において誇り高い地位を確立すると共に、自らの心に響き、多くの人の心に響く学術の実現を目指しましょう。