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2010-06-27

[]分かってみれば 09:29 分かってみれば - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 分かってみれば - 西川純のメモ 分かってみれば - 西川純のメモ のブックマークコメント

 西川ゼミは文化であり、システムです。そのシステムに乗れば自然と高いレベルに達せます。5人の課程博士を修了させました。いずれも3年間の期間にきっちりと修了させています。当たり前ですが、実は当たり前ではありません。博士課程に入学した学生さんの半数は3年で修了できないし、中には、修了できずじまいの方もいます。理由は博士課程で修了するには最低2本の学会誌論文が必要なのですが、それが書けないのです。ところが5人が5人ともそうならないというところが我がゼミのシステムなせる技。今やるべき課題を先延ばしできないようなシステム、課題解決にはOBも含めた支援システム等があるからです。

 これは修士課程も同じです。二十年間、常に規定通りに修了させ、その大部分は学会誌レベルの研究を達成しました。これは凄いことです。上越教育大学の三百人の修士修了生のうち、その修士論文が学会誌に掲載されるというのは1割もいないと思います。だって、学会誌レベルの業績を5持っている大学教員はそれほどいないほどですから。ところが、我がゼミは大部分がその業績を得ます。中には複数の学会誌に掲載する方もいます。何故かと言えば、システムの問題です。

 修士1年の夏と秋には先輩の学会発表を見ます。それはゼミ旅行の意味を持ちます。夏以降にフィールドに入りデータをとり、冬の学会で発表します。修士2年では、そのデータ分析を深め夏の学会で発表します。休み明けにフィールドに入りデータをとります。2年間のデータをまとめて秋の学会に発表します。そして、それを深めて冬の学会で発表し、論文をまとめます。このように節目節目で学会発表があるので、その時点でのデータ収集・まとめを先延ばしできません。そのため、2年間継続してデータ収集と分析の継続があるのです。そして上記の時間進行のペースをOBOGが共有しているので、全員のサポート体制が出来ています。

 が、2年前に既存修士課程から教職大学院に異動しました。そこで悩みました。

 第一は、「研究との間合い」です。上記のように我がゼミのシステムの骨格は学会発表・学会誌です。ところが教職大学院は学術研究ではなく、実践研究です。また、修士論文は課されていません。もとより、我がゼミの研究は学術研究であると同時に、実践研究であることを求めています。矛盾はありません。以前より、修士論文よりも日本の多くの人に影響を与える学会誌論文に重点を置いていました。修士論文は書かなければならないから、書くというレベルです。従って矛盾しないのです。むしろ、既存修士では出来なかった共同研究を中心に置くことが出来ます(修士論文は一人一人別々に書かなければなりませんが、学会誌論文は共著が可能です)。

 が、迷いました。どこまでゼミ生に「研究」を求めていけばいいか。しかし、2年間を終えて、やはり我がゼミは「研究」を主軸に置くべきであることに確信を持ちました。分かってみれば当たり前です。研究なしの実践研究だったら、それは現場学校でも出来ることです。それと同じであるならば、大学院で学ぶ意味はありません。学術は強力なツールです。それを活用することによって、実践改善があることを我がゼミは証明し続けていると自負しています。

 二つ目の迷いは、前期の扱いです。既存修士では履修すべき授業数は少ないですし、殆どは選択科目です。ところが、教職大学院は既存修士の2倍の講義をとらねばならず、その殆どは必修科目です。そして、それらは座って聞けばいいという講義ではありません。これらの授業は上越教育大学院の教職大学院では修士1年の前期に集中しています。この時期に、研究を主軸とした我がゼミが何をすべきかということに迷いがありました。そして、ゼミ生も同じです。既存修士から教職大学院に移行する際、既存修士の修士2年は、教職大学院はシステムが違うのだからと言うことで、システムを伝えることに躊躇しました。なにしろ私自身が躊躇していたのですから。

 2年経って、ゼミの軸を「自分の心に響き、多くの人の心に響く教育研究を通して、自らを高め、教育を改善しよう」という我がゼミの目標に置くという、至極当然のところに落ち着きました。結果として、前期は起爆祭の運営を中心として、『学び合い』の理解を深めることに力を尽くします。学部3年と修士1年は、ネットブックの改訂をしつつ、『学び合い』の理論を学びます。さらに、現職院生は、それぞれの実践校・プロジェクト支援校で『学び合い』実践を行います。後期はプロジェクト支援校での支援、また上越の会を通して、『学び合い』を理解の輪を広げます。これらの年間を通した課題のシリーズが、我がゼミの質を保証します。

 3年目になって、やっとシステムの再構築が出来たように思います。『学び合い』はいつも、分かってみれば当たり前のことです。我がゼミは、ゼミの目標を主軸にしなければならないのです。