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2010-09-15

[]肺魚の気持ち 09:05 肺魚の気持ち - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 肺魚の気持ち - 西川純のメモ 肺魚の気持ち - 西川純のメモ のブックマークコメント

 昨日から本日、自分の過去を思い出して、進化論を思い出しました。逆境は進化を促します。

 私は生物物理学を学部で学び、理科教育学を大学院で学びました。そして、大学の理科コースに採用されました。でも、理科コースでは辛い思いをいっぱいしました。私は臨床的研究をしたいし、理科を他教科と関連する研究をしたかった。しかし、理科教育学というのは教材を開発する教科専門の補助的なものだと考えられていた理科コースの一部の先生方には私は「困ったちゃん」だったのだと思います。(理科コースにいたときも、理科コースを出た後も公私ともに可愛がっていただいた理科の先生方は少なくありません。)

 結果として、学習臨床コースに円満に学内異動しました。移動の結果として、私の研究室に理科の先生以外の人が所属するようになりました。いや、気づくと、理科の人よりも他教科の人が多くなります。正直最初は心配だった。だって、今まで物理や生物の話をしていれば良かったのに、「スイミー」や「戦後の日本」の話を学生さんと話をしなければならなかった。しかし、それ故に教科横断の考え方をするようになった。そうすれば内容ではなく、子どもに視点が行きます。結果として、学習のみにとどまるのではなく、生徒指導を視野に置くことになった。それ故に、教科学習と生徒指導を不分離に考えるようになった。

 が、不満が残りました。学生さんを指導しているなかで修士論文という形式がまどろっこしくなっていました。ゼミ生の多くは学会誌に投稿し、掲載されました。このレベルは大学でトップレベルだと自負しています。ところが、修了・卒業で求められているのは学会誌論文ではなく、修士論文や卒業研究論文です。それには学会誌論文には必要がない、そもそも論が必要です。また、膨大な資料が必要です。それがまどろっこしい。その分のエネルギーを学会誌論文につぎ込みたい。また、修士論文や卒業論文は個人研究で、共同研究があり得ない。でも、ゼミでの活動をみていれば、限りなく共同研究なのです。しかし、修士論文や卒業論文では個人論文にしなければならず、それがまどろっこしいのです。

 教職大学院ではその縛りがありません。それが魅力だった。だから、全力を尽くしてその構築に参画しました。そして出来ました。ところが現在藻掻いています。教職大学院では長期の実習は必須です。そして実習先は上越地区です。地域の人の多くは、常識的な素晴らしい先生方です。当然、『学び合い』に一歩距離を置く方が多いのです。ところが、それでは西川ゼミの学生さんが安心して実習する場を保証できないのです。

 2004年8月4日の朝に教職大学院という制度を知り、2005年あたりから地元に実習校を確保しなければならないことを理解し始めました。そこから本格的に地元の学校に広げることを考え始めました。つまり、『学び合い』に疑問を持つ方に伝えなければならなくなったのです。これがどれほど大変かは、多くの同志が感じていると思います。そこで藻掻きました。そのノウハウが、手引き書の前身である「奥義書」の公開(2007年3月29日)に繋がり、現在の手引き書に繋がったのです。今では、ご本人が『学び合い』を学びたいと希望する人だったら、最初の1週間は私がそばについて、4週間だまされたと思って私のいうとおりのことをやっていただければ導入段階を脱し、充実段階の手前までは行かせられる自信があります。が、そうでない方に伝える段階に至っておりません。

 ふと思います。もし、私のいたときの理科コースが現在の理科コースのようだったら・・・。私は今も理科コースに所属し、それに充実感を持っていたでしょう。もし、学習臨床コースで修士論文・卒業論文ではない他の学修成果の形式が認められていたならば、学習臨床コースに留まっていたかも知れません。とにかく、学習臨床コースには尊敬すべき先輩・同僚教員が多く居心地が良かった。そうしたら、今も、『学び合い』は分かる人に分かればいい、と思っていたと思います。だから逆境のおかげで進歩できたと思っています。

 でも、最初に陸上に上がった肺魚は苦しかったと思います。水の中で生活できたならば、当人(当魚)にとっては幸せなんだろうな~っと、ふと思いました。再度書きます、今の理科コースだったら、私は絶対に陸に上がらないで理科のメンバーの中でぬくぬくと生きたと思います。理科コースお勧めです。