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2011-05-03

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 昨年に続き、教職大学院のメンバーと地元大学と協働して公開講座をします。私も6月18日に新潟大学で、7月2日に中越で講演します。お申し込みはお早めに。http://j.mp/iHBhZV

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 「学校では、電子黒板をどのくらいの規模で整備して欲しいですか?」という質問を受けましたので、それに応えます。

 『学び合い』では学習者の多様性を前提としています。従って、パーフェクトなツールはあり得ないと思っています。そして、個々のツールが一人一人にあっているか否かを判断できるのは当人だと思っています。当たり前です。我々はエスパーではないのですから、他人様の頭の中は分かるわけ無いですから。

 教師が「これは良いツールだ」と思い、是非、子どもに使わせたいと思った場合、それを教室に置き、その良さを子どもに知らせるのはOKです。しかし、それを使うか使わないかの判断は一人一人の子どもに任せます。『学び合い』において教師が強いるのは、全員が課題達成するという結果であって、そこにいたる方法ではないからです。

 今までの経験上、教師が「良い」と思ったツールを子どもたちは殆ど使いません。理由は簡単です。教師は非常にまれな「種族」なのです。小学生の頃から新聞のテレビ欄以外の部分を読み、テレビでニュースを見る種族です。1日6時間、週5日間、教師が黒板に書くことをノートに写すことを厭わない種族です。そして、そのような現状の学校教育にフィットしているから大学まで行き、職業として教師を選んだ人です。どう考えても日本の大多数の人たちとは違った種族ではありません。その種族が考える「良い」が日本の大多数の人にとって「良い」とは思うとは思えません。私は高木貞治の解析学概論が一番分かりやすい微積分の本だと思っています。しかし、デデキントの切断公理やイプシロンデルタ論法から書き始めている解析学概論が万人受けしないこと「も」知っています。

 従って、最初の質問に対する私の応えは、「電子黒板を教室に置きたいと願う教師および子どものいるクラスの数」です。もしかしたら一クラスで何台も欲しいとなるかもしれません。しかし、おそらく電子黒板を置きたいと思う教師や子どもは殆どいないでしょう。なぜなら、人間に勝るツールはないですから。

 特殊化したツールは汎用性を犠牲にします。例えば、電子黒板で書いたことを印刷・表示するのだったら数千円のデジカメでホワイトボードを写せば良いだけのことです。そして、そのデジカメは他の場面で使えます。

 しかし、どうしても電子黒板を使わなければならない場合があります。政治的・経済的理由から特定の企業に合法的に税金を投入する場合があります。その場合は、教育的意味とは別に置かねばなりません。この場合だったら、子どもの利用法を見ながら製品改良をしたらいいのではないかと思います。たいていの製品はそれに長けた技術者が主導してスペックを決めます。結果として圧倒的大多数の人が全く使わない機能にエネルギーを費やします。それを削除すれば操作も簡単になりますし、安価になります。

 逆に、技術者は予想しない利用法を子どもが発見するかもしれません。それを充実したらいいと思います。例えば、現状の電子黒板のネットワーク機能は弱いように思います。いずれにせよ、当たり前のことですが、良い製品は利用者との対話によって生まれるものです。残念ながら、現状では弱いですね。たいていの地域では、教育工学に対する知識・意欲の高い先生が、こりにこった利用法を研究し、発表するという流れです。今のままですと、十中八九は、5年後には時代遅れの電子黒板の山が学校倉庫にあふれるということになると思っています。