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2011-08-08

[]退職後 07:03 退職後 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 退職後 - 西川純のメモ 退職後 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 大学には准教授(昔だったら助教授)の時にはバリバリと業績を上げているのに、教授になるとパタリとやむ人がいます。結局、その人にとっては教授になることが夢であって、研究によって何かをなすことが目的ではなかったのですね。もちろん、研究者の能力のピークは二十代後半から三十代前半です。それ以降になると、明らかに発想力も弱まる。何よりも目が弱くなり、集中力も衰える。だから、最先端の研究を自らがやることは限界があります。でも、年代ごとにやれることはあります。例えば、研究室を主宰しチームとして業績を上げる。研究プロジェクトを立ち上げ、学会レベルのチームによって業績を上げる。学会の潮流を俯瞰し、次の方向性を指し示す総説を書く。また、若い研究者がやりやすい大学を創るために政治を行う。やろうとすれば何でも出来るはずです。そして、これは大学人以外も同じでしょう。

 日本は高齢化社会です。このような社会が豊かになるためには、中堅・若手世代が頑張っても限界があります。高齢化社会が豊かになるためには、死ぬ直前まで老年世代が働き続けてもらえなければなりません。もちろん働き方は多様です。会社で働くものあるでしょう。家事で働き、子育て世代が十二分に働けるようにするのも大事な仕事です。また、ボランティアで社会奉仕するのも一つです。とにかく、「朝は何時に起きなければならない」という日が週の大多数を占めるようになるべきだと思います。

 『学び合い』の会には、退職まであと数年という方が初参加でこられることは少なくありません。なんて素敵なんだろうと思います。そういう方は仕事のために仕事をしている分けではありません。また、教育とは全く違う仕事をしているのに、『学び合い』の会で汗を流してくれる人がいます。その人は『学び合い』の学校観を体現している人だと思います。

 こんなことを書いていると頭に思い浮かぶ人がいます。様々な地域の『学び合い』の会に参加する方だったら、誰のことを書いているのかはおわかりだと思います。その方は、退職直前の最後の学校で校長として『学び合い』を学びました。そして『学び合い』の学校を創り上げました。退職後は地域の非常勤講師を務めています。面白いのは、端で見ていると退職後の方が一層自由で発想豊かに活動しているようです(http://kokucheese.com/event/index/13230/)。とても素敵です。この方の場合、校長になることが目的なのではなく、教育を通して何かをなすことが生涯の目的なのだと思います。私も退職後はこうありたいと願います。(引きこもり願望の私なので不安なのですが)

 でも、全ての人がそのような機会を与えられる分けではありません。アメリカと違って日本の場合はNPOが発達していません。県庁所在地レベルの都市を除外したら、必ずしも自分にフィットした活動の場が保証されているとは限りません。町村レベルだったらフィットするしないどころか、そのような場がない場合もあります。

 ドラッカーは次の社会の未来をNPOに託しました。しかし、私は学校に託したい。なぜならどんな地域にもあるスタッフのそろった組織は、今や学校しかありません。今年度中に、その姿の一歩を示したいと思います。