■ [大事な事]プレッシャー
今年の3月に修了した中学校の現職派遣教師の学校に参観に行きました。1年生の担任です。授業開始から1週間程度ですが、見事にフルの『学び合い』で爆走していました。さすがゼミOBです。
1ヶ月分の課題を与え、子ども達に任せていました。子ども達は音声ファイルを聞いていたり、会話練習をしていたり、文法を勉強したり、様々です。朝学習を含めて1時間以上ぶっ通しで英語を勉強しているのですが、遊んでいる子はいません。聞くと、既に4月の課題を終わらせる子どもが出始め、今週中には全員が終わる予想なのです。ま、非効率的な部分を徹底的にそぎ落とした『学び合い』ならばセオリー通りのことですが。ゼミ生はセオリー通りのことを徹底していますので、短期間でこの成果を上げました。
自慢話(彼は違うと言っていましたが、あははは)をしばらく聞いた後の私と彼との会話です。
私:今年は○○高校(この地域でのトップ校)に15人を送りなさい。(その学校の3年生は三十数人です)
彼:え~!だって、私は3年は教えていないんですよ~
私:だから15人と言ったんだよ。この1年生だったら全員というよ。教えていなくても、どうしたら良いかは分かっているはずだよね。
彼:はい。
私:期待しているよ。
ゼミ生からは私の「期待しているよ」は怖い、とよく言われます。しかし、一度たりとも怖い顔で期待しているよと言ったことはありません。満面の笑みをたたえて言います。何故、私の「期待しているよ」は怖いかと言えば、それは私は「やれべきだし」、「出来るし、出来る方法も分かっている」し、そして何よりも「当人に得である」ことしか求めないからです。だから、私の期待しているよは、私の管理下では逃れられないのです。でも、だからゼミ生は短期間に抜群の成長をします。
彼は最後に「やりますよ~!私は!」と言っていました。
追伸
授業の最後に一言を求められ、そのクラスの良いところをいっぱい褒めてあげました。そしてクラスはチームであり、受験は団体戦であることを語りました。そして、最後に「今の君らが順当に成長したら、君ら全員が○○高校に入学出来るよ」と語りました。
授業が終わって廊下にいたら、そのクラスの一人の男の子が、ニコニコして私に近づきました。以下、彼との会話です。
私:期待しているよ~。君らの力で全員、○○高校に合格しなさい。高校では同級生だらけだったら良いだろ。
彼:え~~~。そんなプレッシャーかけないでよ~~~
私:良いこと教えてあげよう。先生の一番の仕事は、子どもにプレッシャーを与えることなんだ。あはははは
彼:え~~~(と教室に避難)
可愛い子です。彼が頭を抱えたのは、「やるべきだし」、「自分に得だ」ということを納得したと思います。そして、この1週間で「出来るかもしれない」という感覚を持ったのだと思います。あとはOBが「出来るし、出来る方法も分かっている」という段階に進ませるだけです。
そのOBには上記に必要なことを2年間で全て伝えたし、学びました。それは彼は分かっているし、「彼が分かっている、ということを私が知っているということ」を彼は知っています。だから逃げられません。ふぉふぉふぉ
■ [大事なこと]中学校と小学校の違い
仕事柄、様々な学校種の先生方と会いました。その経験から言えば、小学校の先生と中学校の先生は一般的に3つの点で異なっています。
第一は、頑張りの評価です。例えば、ちゃらんぽらんに勉強して80点の子と、頑張って勉強して70点の子がいて、通知表にどちらかの子の方により高い点数を与えるとします。その時、小学校の先生は相対的に悩みます。しかし、中学校の先生は相対的に悩まず80点の点数の子に高い点数を与えます。
第二は、チーム力です。小学校は基本単位はクラスです。しかし、中学校は学年が基本単位です。小学校の学年団と、中学校の学年団はレベルが異次元に違います。
第三は、長期的な展望です。小学校は1年単位で物事を考えます。しかし中学校は3年間単位で考えます。これは小学校では持ち上がりが相対的に少ないのに対して、中学校は学年団が3年間持ち上がります。それ故、入学したときに、卒業するときにどのような子どもに育てたいかを学年団で話し合います。先に述べた学年団が形成されているので、新規採用の先生も3年間で育てるという意識を学ぶ事が出来ます。
実は、3つとも中学校の方が『学び合い』にフィットしているのです。
中学校の先生方は教科担任制で子どもと接する時間が短い事がネックになると思っている方もいます。しかし、そんなのはどうでもいいのです。子どもは、その人の心を見透かし、それに合わせた行動をします。考えてみて下さい。校長が替わると職員室の雰囲気が激変しますね。では、それに何日かかりますか?そして、その期間の中で校長と接する時間はどれほどでしょうか?
現在、相対的に小学校の方が『学び合い』が広がっています。その最大の理由は、基本単位が学級だからです。だから、自分でやろうとする人がいたら、とりあえず出来るのです。でも、より『学び合い』を深めるならば、中学校の文化を積極的に取り入れる必要があります。それは『学び合い』ジャンプで書いた合同『学び合い』や学校『学び合い』を取り入れるべきなのです。
さて、中学校の先生は学年団の意識が強いので、横並び感覚が小学校より強固です。しかし、本当はそれをふっきればいいのです。結果さえ出せば、周りに迷惑をかけなければ、そして、最初はめだたないようにやれば『学び合い』は出来ます。そして、一度やれば、学年の子どもを変える事が出来ます。そうすれば、周りの先生がやろうかな、と思った瞬間に直ぐに出来る準備は完了しているのです。
ただ、『学び合い』が学力向上に繋がる、異学年学習は最高の受験対策であるということはなかなか分かってもらえないと思います。だから、とりあえずは、荒れた中学校がターゲットになるかも知れません。そうでない学校は、人間関係づくりを前面に出す事が作戦かなと思っています。やり始めれば、今まで寝ていた子どもが勉強し始めるという現象は直ぐに分かります。そうすれば、同僚の中に学力向上に繋がるかも知れない、と思うような人も生まれます。
さてさて、どういう風な作戦を考えるか・・・。そのために私が出来るのは何か?
■ [お誘い]神奈川の会
4月20日に『学び合い』神奈川の会があります。http://manabiai.g.hatena.ne.jp/janglejap/20130417/1366200853
■ [大事なこと]合同『学び合い』
今から7年前にはじめて合同『学び合い』を始めました。つまり二つのクラスが同じ場所を共有し、『学び合い』をするのです。それはS小学校の5年と6年の合同『学び合い』がはじめです。
その学校で最初に『学び合い』に乗った校長がまず2週間程度自分でやって、その学校で力がある先生にやることを進めたのです。しばらくは試行錯誤がありましたが、人間関係の向上は直ぐに効果が見えました。そして半年ぐらいしたら成績も確実に向上しました。
そんな時に若い5年生の担任が、校長に自分のクラスの限界を相談したのです。そこで校長が6年の担任に相談することを勧め、そこから5年生の『学び合い』が始まりました。しばらくはそれぞれのクラスで『学び合い』をしていたのですが、私は合同『学び合い』を勧めました。『学び合い』が本物だと分かっている6年の担任も、「学者さんは無茶な話を言うもんだ」と思っていたのだと思います。ニヤニヤするばかりで、言を右に左にします。それでもしつこく語ったら、「じゃあ、試しに」ということになりました。
結果はセオリー通りです。素晴らしい子どもの動きです。そして、合同『学び合い』が教師の『学び合い』を成立させることを感じられたのだと思います。私の帰り際に、「子どもの動きが良いので、しばらく試してみます」とのことになりました。そして、あっというまに算数の時間は全て5年、6年の合同『学び合い』でやるようになりました。とにかく、やってみれば分かりますが、単独の『学び合い』より簡単で、教師同士がいっぱい話し合えるので楽しいのです。
その様子を他県の中学校の人にメールしました。その方は中学校で素晴らしい『学び合い』の実践を積み上げている方です。しかし、その方は頑固に合同『学び合い』は出来ないと主張するのです。私は、じゃあ見に来なよ、と誘いました。
合同『学び合い』が始まるまでは疑り深そうな顔をしていましたが、一度子どもが動き始めたら瞳孔が広がったのが分かります。色々な子どもの近くによって、子ども同士の会話を聞き取り、動きを見取りました。そして、私のところに近づいて笑いながら「私が馬鹿でした」と降参しました。そして、勤務校に戻って直ぐに合同『学び合い』を始められました。
それから7年間、様々な学校で合同『学び合い』、学校『学び合い』の手ほどきをしました。上越での実践校では、年間を通した膨大な記録と分析を行いました。多くの先生と会話しました。その7年間の実践からノウハウを蓄積し、洗練したものが『学び合い』ジャンプ(学陽書房)にまとめています。不遜ながら断言します。『学び合い』ジャンプの通りやれば、失敗しようがありません。ただし、その通りであり、足して2で割るやり方では保証しません。ちゃんと読み、その通りやってください。ある程度わかったら逸脱はOKです。でも、何事も最初は模倣から始まります。我流で始めると失敗します。あの本に書いてあることは膨大な学術、実践データーによって裏打ちされているものです。個人の思い込みで乗り越えられるようなレベルのものではありません。
繰り返します。『学び合い』ジャンプの通りやれば、失敗しようがありません。そして、単独の『学び合い』では達成し得ないレベルの成果を、単独の『学び合い』より遙かに簡単に安全に実現できます。それ故、最近の学校レベルの手ほどきの場合は、合同『学び合い』から始めます。