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2013-08-25

[]宿題 07:39 宿題 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 宿題 - 西川純のメモ 宿題 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 比較的多く聞かれる質問の中で、「『学び合い』では宿題を出しますか?」という質問があります。私の回答は「出しません」です。そうすると怪訝な目をされます。そこで説明します。

 何故出さないかといえば、「そんな手ぬるいことを『学び合い』ではさせないから」です。宿題はそれが終われば、終わりです。これはクラスの上位層2割にとってはたやすいことです。しかし、『学び合い』では、その2割の子どもが必死になり、その必死さが周りに伝搬させるのです。

 『学び合い』における宿題、それは「常に全員達成する」なのです。つまり、全員達成が出来るまで、どれだけ自宅で自習しても終わりはありません。そして、何をどれだけ勉強するかも自分で考えなければならないのです。これは超ハードな宿題です。

 ある勉強の出来る子が夜遅くまで予習をしていました。心配した保護者が、そんなに勉強しなくてもあなたは100点とっているじゃないか、と言ったそうです。その子は保護者の目を見て、私は自分のために勉強しているんじゃないの、クラスの○○ちゃんが分かるようになるにはどうするかを予習しているの、と言ったそうです。

 そのようなレベルの子が2割生まれれば、予習をする子が増えてきます。クラスを育てれば7割程度の子どもが予習することも可能です。そうなれば、残りの3割の子どもも時には予習するようになります。そうなれば、テスト前に友達の家に集まって勉強するようにもなるでしょう。

 知的な障害を持つ子どもを含むクラスで3回連続で100点を達成した事例を知っています。そのクラスでは子どもたちはテストを「挑戦状」と呼びます。つまり、全員○点以上という教師の挑戦を達成したら、自分たちの勝ちと認識しているのです。テスト前にはクラス全員が円陣を組み「全員○点以上とるぞ~!」と気勢を上げます。テスト中は、「絶対に最後まで諦めるな~」という声が上がるのです。つまり、最高の部活をイメージして下さい。

 成績向上のポイントは、本人が成績を上げたいと願うことです。それが無ければ、どんな教材も指導も無意味です。教師が何もしなくても、それを強く願う子は2割はいます。そして、能力のある教師だったら教材や指導によってその割合を高めることは可能です。でも、上げられる限界はあります。普通の教師だったら、まあ、5、6割に上げることが出来たら上出来と思います。でも、教師の悩みの圧倒的大部分の原因となっている子は、その中には含まれません。

 人が最も普遍的に興味・関心を持つのは「人」です。どんな教材も指導もそれには勝てません。『学び合い』をやり始めた人は、『学び合い』にあった教材があるのではないかと従来の枠組みで予想します。しかし、そんなのはどうでもいい。重要なのは最高の部を育てると同じに集団作りなのです。最高の集団が出来てから、はじめて教材のレベルに差が出ます。

 そのような集団を創るとき「宿題」はかえって障害になります。なぜなら、そのようなものがあれば子どもたち(特に上位層)が教師に依存的になってします。だから宿題は出しません。

追伸 保護者から「宿題を出して下さい」と言われるかもしれません。『学び合い』の初期の段階では子どもたちは予習はしないでしょう。そして宿題を出さなければ、家で遊んでばかりということになります。保護者が子どもに「宿題は?」と質問したら、子どもは「無いよ~」と返事することが続けば「宿題を出して下さい」という声も起こるでしょうね。その場合は、しょうがありません宿題を出しましょう。でも、その際は宿題は最低レベルの宿題であり、本当の宿題は全員達成であることをちゃんと確認しましょう。