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2013-10-14

[]一人も見捨てない 20:20 一人も見捨てない - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 一人も見捨てない - 西川純のメモ 一人も見捨てない - 西川純のメモ のブックマークコメント

 世の実践界をリードする方々は優れた技、優れて知恵を若い世代に伝えようとしている。素晴らしいことです。が、一方、それが全ての教師が獲得するとは思えないのです。

 巧みな話術、多様な教材の引き出し、それらの価値を否定しません。あった方がいい。それがあれば、『学び合い』だって楽です。でも、それらには才能が必要です。どんなに練習しても巧みな話術を獲得できない人もいます。また、現状の教師はものすごく多くの授業外の書類書きがあります。それを終えて多様な教材の引き出しを獲得しようとしたら、家庭の時間を削ることになります。しかし、そうすれば一番大事な家庭を壊してしまう。そして、その家庭の時間を削る余地もない人もいます。

 教室の中の子どもたちの中には、勉強に全く相性の合わない子は2割います。それと同じように、「何であなた教師になったの・・・・・」という人も2割はいます。

 自主的な研修会に参加し、本を読むような教師の職能を上げるだけだったら、巧みな話術、多様な教材の引き出しの伝授は可能でしょう。でも、私は子どもと同様に、教師も一人も見捨てたくない。だから、あえて巧みな話術、多様な教材の引き出し、を書きません。常に、全ての教師が見捨てられない道を探しています。

 だから、教室レベルの『学び合い』を脱し、合同『学び合い』、全校『学び合い』、『学び合い』による地域コミュニティの再生に移行しているのです。教師が子どもに与えられる最高のプレゼントは、安易に人を切り捨てない集団を全員に与えることだと確信しています。同様に、教師が同僚に与えられる最高のプレゼントは、安易に人を切り捨てない集団を全員に与えることだと確信しています。子に与えるにせよ、同僚に与えるにせよ、それによって自らも守られる。

 苦労した人には、「俺も苦労したんだからお前もすべきだ」と言う人もいますが、「俺が経験した苦労をお前にはさせたくない」と言う人もいます。私は後者でありたい。それが私が年をとったとき、私を守ってくれる中堅、若手を獲得する術だと知っているからです。つまり、一人も見捨てないことは得なのです。大学人の中で「俺も苦労したんだからお前もすべきだ」と言った人の末期を若い頃にいっぱい見ました。

[]イジメ対策 17:29 イジメ対策 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - イジメ対策 - 西川純のメモ イジメ対策 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 従来型授業になれている人は、多数より少数、多様より均質の方が、指導が徹底すると思っています。それを端的に表しているのは、少人数習熟度別指導です。たしかに教師の口は一つ、だから喋れるのは一つのこと。教師の利き腕は一つ、だから板書できるのは一つのこと。その単一のことで指導するとしたら、少数で均質の方が徹底できます。

 しかし、これは誤りです。本当に上記が成り立つのは、教師が「相性の良い」「一人の子ども」を「長期間」指導できる場合です。ま、ヘレンケラーとサリバン先生みたいな関係です。これは公教育ではほぼ不可能です。三十人学級を二十人にしたから個に寄り添えると思うなんて噴飯物です。それを十人にしても、五人にしても無理です。

 特別支援学級やへき地小規模校であったとしても、「相性の良い」、「長期間」は無理でしょう。サリバン先生のようにその子の生涯にわたって付き合うつもりがなければなりません。これは無理です。

 残念ながら、従来型授業は子どもの多様性を低く見積もっています。何故なら、子どもの多様性を認めてしまえば、教育が成立しないからです。

 思春期のはじめ、彼女に告白したり、デートを誘ったりとき、本屋で「女の口説き方」という本を立ち読みしたことありませんか。その経験のある方だったらわかるはずです。そんなのは役に立ちません。当たり前です。人は生ものです。一人一人は違うし、その人が、今置かれている状況、それも、過去と未来の状況によって大きく変化するのです。

 イジメ対策の本を読むたびに、「個」に囚われているように思います。何とか有限のパターンに落とし込み、それに対応しようとしています。そして、それを超えた部分は、精神論でカバーしようとしているようです。でも、有限のパターンに落とし込むなんて、どだい無理な話です。

 水分子の一つの動きを予想したりコントロールしたりすることは現代科学でも不可能です。ところが水分子の大集団の動きを予想したり、コントロールしたりすることは3歳の子どもにも可能です。だから、彼らはジュースを飲むことが出来るのです。

 イジメ対策はとてもシンプルです。まず、個々バラバラの子どもたちを、緩くても一つの集団にする必要があります。そして、集団をコントロールし、その集団のリーダー格の2割の子どもにイジメは損だということを理解させれば良いのです。人は最終的には損得で生きています。少なくとも自分の利害に反することを、多くの子どもが長期間継続することは不可能です。だから「損得」で理解させなければならないのです。そして、個々の子どもの対策は、子ども集団が個々で対策するべきなのです。

 でも、これが出来る教師は「イジメは損だ」と本気で信じられなければならない。教師自身がムカムカするような言動を連発するような子どもに対しても、「イジメは損だ」と本気で信じられなければなりません。「あの子がいなければ・・・・」と思うような子に対しても、「イジメは損だ」と本気で信じられなければなりません。そのためには「イジメは悪」ではなく、「イジメは損だ」ということを信じられる理論が必要です。そして、それが徹底しているか否かを評価する手段を持たねばなりません。「クラスの人は仲が良いですか」のような評価は無効です。だって仲良い「ふり」はいくらでも出来ますから。

 様々なイジメ対策本を読んでいると、上記のことが読み取れません。

 不遜と思われ、おしかりを受けるのを承知で申します。もし、『学び合い』ステップアップ、『学び合い』ジャンプアップ通りのことをすれば、4週間以内(最大でも3ヶ月以内)にクラスの人間関係は大幅に改善します。成績を上げるためには、『学び合い』を本格的に取り組む必要があるし、自分の中にある教科に対する思いや拘りを一度棚上げにする決断をしなければならないからです。でも、人間関係の改善だったら、それがなくても出来ます。

 ある方は「大人でも大変なことを子どもに求めて出来るか?」と言われます。そう大人にも大変です。でも、じゃあ大人なら出来るのでしょうか?一人の教師と三十人の子ども、三十人の教師と数百人の子ども、いずれに解決する力があるでしょうか?イジメをなくす方法を学ぶのに教員免許状は不必要です。ようは「やめようよ」と言えるか言えないかなのです。一人の教師と三十人の子ども、三十人の教師と数百人の子ども、いずれの「やめようよ」という言葉に力があるでしょうか?

 では、教師のすべきことは何でしょうか?それは教師にしか出来ないことです。それは最初に、そして、最後まで一貫して、「イジメは損だ」と求め続けることです。それは子どもには出来ないことです。

追伸 私には1+1は2であると同じぐらい自明なことなのですが、世の中では非常識と言われてしまう。

[]秋田の会 08:51 秋田の会 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 秋田の会 - 西川純のメモ 秋田の会 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 11月4日に『学び合い』秋田の会が横手で開かれます。http://p.tl/9i_X