お問い合わせ  お問い合わせがありましたら、内容を明記し電子メールにてお問い合わせ下さい。メールアドレスは、junとiamjun.comを「@」で繋げて下さい(スパムメール対策です)。もし、送れない場合はhttp://bit.ly/sAj4IIを参照下さい。             

2014-12-29

[]危機 16:13 危機 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 危機 - 西川純のメモ 危機 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 昨日は二つの大型書店に行って、関係する本をあさりました。現在刊行されている本が並んでおり、ホッとしました。同時に二つのことを観じ「う~ん」と思います。第一は、私以外の『学び合い』本が少ないなと思います。現在、刊行している方は、後続本を書いて欲しい。後続本が先行本の最大の宣伝になります。そして、その他の方もトライして欲しい。本の書き方はかつてアップしました。今から積み上げて欲しい。

http://manabiai.g.hatena.ne.jp/jun24kawa/20141218/1418861171

http://manabiai.g.hatena.ne.jp/jun24kawa/20141028/1414488430

http://manabiai.g.hatena.ne.jp/jun24kawa/20140423/1398202841

 もう一つあります。上記よりも、もっと暗くなります。

 それは教員が読むであろう戸棚においてある本の中で、大学関係者の本が殆ど無いのです。特に、実践者出身で大学に異動した人ではなく、人生の殆どを研究者として過ごした人の本が殆どないのです。

 47都道府県には国立の教員養成系大学・学部が全てあります。新潟県には二つあります。一つの大学・学部には80人以上はいます。その他の大学にも免許を出す大学は少なくありません。それらを勘案すれば六、七千人の大学教員がいます。その人たちを必要とする学校現場の人が殆どいないということを意味しています。

 今、教員養成系大学・学部は逆風の中にいます。それは台風並みです。おそらく、戦後最大の逆風だと思います。このままで行けば統合によって消える国立大学も出てくるでしょう。少なくとも、今の最低80人という学部構成は50人規模になるのは遠くない未来のように思います。

 平成26年11月7日に「大学院に専攻ごとに置くものとする教員の数について定める件の一部を改正する告示」というものが文部科学省高等教育局長から発せられました。大学院設置基準という省令の別表の最後が以下のようになりました。「一つの専攻(学校教育専攻、特別支援教育専攻および幼児教育専攻を除く。)が複数の教科の分野を含む場合であって、上記の区分によりがたいときは、これらの分野に係わる専攻のうち最も多い数の研究指導教員を置くものとされているものの研究指導教員数に、当該専攻以外の教科教育の分野一つにつき一人を加えて得た数の研究指導教員数を置くものとする。」となったのです。

 これがどういう意味か分からないと思います。簡単に言えば、教員養成系大学・学部の理科コースを二人の教員でも良いということです。以前は十二人必要だったのにです。そういうことで以前は全教科の大学院を保つためには約八十人必要だったのが、二十人程度で良くなるのです。そうなれば、総合大学にある教員養成系学部は他学部の圧力から死守していた八十人のスタッフをどんどん減らされることになるのです。

 これは教員養成系大学・学部を教職大学院を中心にするために必要な措置なのです。

 今、多くの教員はことの重大さに気づいていないか、気づいていても気づかないふりをしているのです(ロスの悲嘆の五段階の第一段階 http://manabiai.g.hatena.ne.jp/jun24kawa/20100201/1264985646)。でも、文科省は本気で大改革をしようと思っています。もう大学の自主的な改革を待っていられないと腹を据えたと思われます。

 という状況の中で、教員養成系大学・学部がガラパゴス化していることを恐れます。まあ、私の年代は大丈夫でしょう。可愛そうなのが今、四十代前半より若い人です。その人たちは首は切られません。その代わり、定年の年にやっと教授になるか、最後まで准教授で終える人が一般化すると思います。つまり、給料が安いのです。大学教員は就職できる年数が遅い。教諭の人が22歳、今後、教員が修士化しても24歳で就職できるのに対して、最短でも27歳です。そして、オーバードクターによって三十代前半で就職できたらめっけものです。つまり、十年の遅れがあるのです。だから、生涯給与を補うためには給与が高めに設定しなければなりません。ところが、准教授の給与はおおむね学校の教諭並みです。教授になってもとが取れるのです。つまり、最後まで准教授(正確に言えば、昇級ストップになる55歳までに教授になれない人)は生涯給与は学校の先生より低くなります。(私は42歳で教授になり、3年ぐらいで准教授の最高給与を超えました)

 が、混乱の時代は時代遅れは急激に淘汰されますが、急激に振興する部分もあります。つまりチャンスでもあるのです。ということを若い研究者は気づくべきだなと思います。

 これを読まれている人の多くは大学教員ではなく、小中高の先生だと思います。しかし、上記の影響はじわじわときますよ。

追伸 上記の激変を受けるのは教員養成系大学・学部だけではありません。おそらく文系学部の博士課程はもろに荒波を受けます。なぜならば、その卒業生の受け入れ先は大学教員が大部分であり、教員養成系大学・学部は大口なのです。ところが、それが縮小されます。文系博士課程に進まれる人は、就職がもの凄くきついことを覚悟する必要があるでしょう。