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2015-07-23

[]脱力 18:28 脱力 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 脱力 - 西川純のメモ 脱力 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 仕事柄、色々なところから論文の査読を頼まれます。残念ながら、凄いな~っというものはありません。「ま、そこそこのことをやっているから、ま、通してあげよう」というものが殆どです。が、希に脱力してしまうものもあります。

 ピアジェの発達理論は文脈依存性を考慮しておりません。そのため1970年代頃にはピアジェの理論の反証実験が欧米の心理学の学術雑誌に盛んに載りました。そして、ピアジェの理論の不備が一般的に理解されたので1980年代には反証実験は、一流の学術雑誌は鼻も引っかけません。しかし、その情報は教科教育に広がるには時間がかかります。そのため1990年代にはピアジェ理論が学会誌にも散見されます。でも、今の時代にピアジェ理論に基づく投稿論文を読むと脱力します。最近の研究を何にも読んでいないんだろうな~っということが分かります。

 教科教育学の風当たりがこれから強くなるのに、大丈夫かしらん、と心配になってしまいます。

[]往還 07:02 往還 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 往還 - 西川純のメモ 往還 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 日本中の国立大学で修士課程が設置され、そこで学ぶ現職教員の数は多くなりました。しかし、自らの教育問題をテーマにした実証的な学術論文を書いて修了する人はどれぐらいあるでしょう。

 既存の学術の問題意識の延長上の論文を書くのは実はもの凄く簡単です。私だったら1ヶ月に1本ぐらい書けます。何故ならば、九割以上は先行研究のコピペでいいからです。いや、先行研究のコピペでなければ学術の書式に則っていません。

 自分の教育問題を学術論文にまとめるためには、自分の教育問題を言語化しなければなりません。それを操作的に定義しなければなりません。そのためには割り切らなければならないのです。自分の教育問題の100%を表すことは出来なくても6割ぐらいは表せる操作的定義を考えなければならないのです。それに基づき、教師だから出来る泥臭いデータをこつこつ蓄積し、何かをまとめる。とても手間のかかることです。だからこそ、実践書では伝えられないことも伝えられるのです。

 世の中には優れた実践書は多い。しかし、それらは前提とか仮説が明らかにではない。実践には思想があり、それに基づく実践があります。それが一致していなければ子どもが安心して授業に身をゆだねられない。ところが方法論は単純化することは出来るのですが、思想は単純化できない。その人の数十年の実践経験に基づくものです。本人すらそれを意識していないことが多いです。何故なら、本人は意識する必要が無いから。だから、優れた実践家の実践をまねることが難しいのです。その人の追っかけになり、寝食を共にしなければ伝えられない。しかし、それは多くの人には無理です。

 だから学術の手法が大事なのです。学術は属人性から脱する数百年のノウハウですから。100%を伝えることは出来なくても、六割は確実に伝えることが出来ます。

 教育実践の基礎となる学術を学べば、その学術の言葉を使うことが出来ます。それによって学術の作法に基づきまとめることは学べます。しかし、基礎となる学術は言葉が整理されている。もちろん最先端の研究ならば言葉は整理されていませんが、本当の最先端は教育修士では学べませんから。結果として、グジャグジャとしたものを操作的に定義する過程をトレーニングすることはないのです。

 そのようなトレーニングした人が、学術論文と実践書を同時に生産できるようになれば、日本の実践と学術の往還は改善されるのに、と思います。学術と実践を別々に学び、己で往還せよ、は無茶です。個人の中で往還した人のもとで、往還の実態を学び、自分自身の往還を獲得するしかありません。

 とりとめもないですが。定年まで十年を切りました。それ故、少し焦ります。

[]流れ 06:36 流れ - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 流れ - 西川純のメモ 流れ - 西川純のメモ のブックマークコメント

 明治図書の雑誌で『学び合い』の特集号が9月号にあります。で、別な雑誌で12月号の特集号が提案された。実質1日で基本構造を決めました。時代が求めていると思います。教師が望もうと望むまいと、『学び合い』以外の選択肢は無くなると思います。それ以外では成績上位層から攻撃を受けます。日本の教員の99%以上は、成績上位層の子どもがクラスの過半数を引き連れて攻撃したら潰れます。

[]職員室 06:36 職員室 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 職員室 - 西川純のメモ 職員室 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 昔からきら星のような実践家がいました。しかし、その人に学ぶ人はごくごくわずかです。多くの教師は本も読まず、研修会にも参加しません。若い頃は本も読み、研修会にも参加しても、そこそこ授業が出来るようになれば、手を抜きます。しかたがあります。

 昔は職員室に教育力がありました。直接本を読まなくても、研修会に参加しなくても、そこで学び取ったことを周りの人に伝えている人がいました。そして、その人が本を推薦し、研修会に誘えば動く人はいました。

 それが弱い。

 それが弱いままで激変時代に突入すれば40歳代から20歳代が潰れてしまう。職員室の教育力を高めなければなりません。

 私の勤めた高校は、慰安旅行がありました。そこには教職員はもちろん、用務、事務、給食の方も含めて全員参加でした。バスを借り切って移動します。バスに乗ったとたんにビールを飲み始めます。到着する頃には出来上がっています。到着すると温泉に浸かり、昼寝をします。そして、宴会。私はあるこだわりからずっと非組合でした。しかし、大学に異動の際には組合主催の送別会が開かれました。そんな学校でした。そんな学校だから生き残れた。