■ [大事なこと]同時多発

かなり以前に、仲間から意図的に『学び合い』関係の会を日本全国に同時に展開することを計画することを提案されました。なるほど、と思いました。実現に至りません。
が、今では意図しなくても、それが実現しています。
今月30日に私は群馬で語ります。が、同じ日に、日本中で色々なことが起こっています。
■ [大事なこと]楽

もし、教える相手が、だまって従っているならば、一斉指導の方が楽です。
もし、教える相手が、反抗しても、それを気づかずにいるならば、一斉指導の方が楽です。
もし、一定以上の授業能力がある人がその時間の授業をなりたたせるならば、一斉指導の方が楽です。
昔の大学には、分けのわからないことをぼそぼそ言って、黒板に書く人もいました。その人なりに、語る内容を吟味しているのかもしれません。そして、それが入門段階ならば、二十年前のノートでOKです。楽です。とにかく、その時間に喋って、板書すればいいのですから。それならば一斉指導の方が楽です。
私が勤めた高校にも、生徒からバカにされきっている教師もいました。でも、それに気づいていないようでした。子どもとの会話を聞いていると、見事にすれ違いです。それだったら、ぼそぼそ喋っていればいいのです。それならば一斉指導の方が楽です。
子ども達の多くは、何を学ぶべきかを知っていません。そりゃそうです。その子ども相手ならば、面白おかしく語ればいいのです。面白い授業、わかったつもりにさせる授業にはテクニックは必要です。が、限られたテクニックで可能です。それで、みんながニコニコする授業をするのならば、一斉指導の方が楽です。
私は長らく、大学の講義では一斉指導でした。楽だからです。
でも、ゼミ生に関しては完全無欠の『学び合い』でしています。それは、ゼミ生には多くのことを望み、達成したいから。
一斉指導はもの凄く大変です。あれがある一定以上のレベル至るのは、才能のある人だけです。カリスマ教師の話を聞いてもなれません。三遊亭圓生の落語に通い詰めても、圓生になれないのと同じです。努力では無理で、才能の問題です。
『学び合い』は大変です。子ども達と対峙し、ぶれずにいなければなりません。でも、才能は必須ではありません。必須なことは望みであり、志です。
オリンピック選手になる才能を持つ人はわずかです。が、オリンピック選手になりたいと願うことは誰でも出来ます。その願いがあれば、オリンピックとは違う望みの叶う路が見えるようになります。
このあたりは、一度、壁にぶち当たらないと分からないと思います。
壁にぶち当たって、どうするか考えて下さい。冷静に考えれば『学び合い』で壁にぶち当たる人が一斉指導で壁を乗り越えることは出来ません。昔は黙っている子どもが多かった。でも、今は違います。私が高校教師だったときと同じ状態が、普通の教師が目にする状態です。
それを本にしています。
■ [ゼミ]謝辞

教師の仕事は「目標の設定」、「教授」、「評価」、「環境の整備」の4つです。『学び合い』は「教授」は殆ど不要だと思っています。そして、目標の設定がちゃんと出来ていれば、評価する必要もありません。何故なら、学修者自らが評価するからです。だから、最後まで残るのは「目標の設定」と「環境の整備」です。
卒論の提出時期が迫っています。ある学生の謝辞を載せます。
『本研究を進めるにあたり,多くの方々からの温かいご指導とご協力を賜りました。こうして卒業論文をまとめることができましたのも,皆様のお力添えがあったからこそと心より感謝申し上げます。
教職デザインコースの先生方には,貴重なご意見・ご助言をいただきました。特に,指導教官である西川純教授には,研究に打ち込めるための素晴らしい環境を提供していただきました。優しく,あたたかく,志高い研究室のみなさんと,共に学び合い,高め合いながら「1人も見捨てない」集団の中で研究できたことを幸せに感じます。子どもたちを心から信じ,子どもの姿から自らが学ぶという姿勢を2年間通して西川先生から学びました。
本研究の調査に際し,お忙しい中ご快諾の上,ご協力いただきました○○中学校の,校長先生,また授業者の○○先生をはじめとした全教職員の皆様に厚く御礼申し上げます。加えて,素晴らしい力を発揮し,感動のある学びの姿を見せてくれた子どもたちに感謝します。
西川・水落・桐生研究室の院生・学部生の皆様,昨年度修了・卒業されました院生・学部生の皆様には,たくさんの貴重なご意見と,温かい励ましをいただきました。忙しい中でも,親身になって研究の相談にのっていただいたこと,深く感謝申し上げます。
最後に,共同研究者である,○○さん,○○人さん。2人がいなければ,この卒業論文をまとめることはできませんでした。つらい時や悩んだ時には,優しく支えてくれたお2人は,とても頼もしい存在でした。本当にありがとうございました。』
■ [大事なこと]懲りない

大学院の時のことです。
入学式の後、夜の院生控え室にいくといつも研究しているH先輩がいました。
他の先輩は夏休み以降に2時間ぐらい顔を出すようになりました。
が、まったく顔を出さないA先輩もいました。
バイトに精を出し、飄々としている方です。
提出1ヶ月前ぐらいになると、多くの先輩が夜遅くまで残るようになりました。
そのころにはHさんは書き上げており、細かなチェックをしています。
そんなときもAさんは飄々としており、控え室には顔を出しません。
Aさんは3日前ぐらいになって顔を出すようになりました。
そして、「あと3日ある」と大きく書いた紙を壁に貼りました。
それでも飄々としていました。
それが「あと2日ある」、「あと1日ある」になるころになると表情が変わりました。
その頃には後輩や提出した同級生が手伝いをし始めていました。徹夜をした人もいます。
紙は「あと12時間ある」、「あと3時間ある」、「あと1時間ある」と変わりました。
飄々としたAさんの姿はなく、半狂乱です。
醜かった。
提出した後の院生控え室はAさんのためにゴミ箱になりました。
1週間ぐらいAさんは顔を出しませんでした。
顔を出したときのAさんは、いつも通りの飄々とした人です。
おそらく、何の学習もなかったと思います。
私は学習しました。
「ああはなりたくない」と。
きっと、以下を書いた人は、何も学習しないでしょう。
彼は身を捧げて、周りの人に教えてくれました。
「ああはなりたくない」と。