■ [大事なこと]一人も見捨てない
「一人も見捨てない」、この言葉の意味を本当に理解することは大事です。一人も見捨てないとは、集団が一人も見捨てないことを目指すことなのです。一人も見捨てないことを個人で背負うことではありません。
人を見捨てるような人たちが集団になって一人も見捨てないことなんか出来ない、という理屈もあるでしょう。しかし、人を見捨てるような人であっても集団だったら一人も見捨てないことは出来るのです。一人でそれを背負ったらすぐに潰れてしまいます。
私がつとめた高校は家庭的にかなりの業を背負った子は少なくありません。その事情を知れば知るほど同情します。しかし、先輩教師からは子どもを助けようとするなと教えてもらいました。一人の子どもを救うということは己の全人生を捧げる覚悟がないと出来るものではありません。家族を持つ人は、家族に犠牲を強いることです。そして、先輩教師からは、その一線を越えてしまったいろいろな教師の末路を教えてもらいました。
教え子から相談を受ければ相談に乗ります。しかし、もし、すがりつかれたならば、他人であることをキッパリと言い渡すと思います。そのことに関して、心情的な悲しさはありますが、道義的な問題を私は感じません。
我々が最後の最後まで救わなければならないのは、己であり家族なのです。
『学び合い』はあくまでも「己の課題を解決する」という自己の利益を実現する考え方であり、方法論なのです。それは人類が生存競争の中で生み出した生き方です。生物の二大欲求は自己保全と、自身の遺伝子を残すこと。そこには浅薄な善悪の入る余地はありません。
ここまで冷徹に分析した上で、より多くの人が見捨てられないためにはどのようにするべきかを考え、行動しています。