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2019-05-22

[]自然科学 10:37 自然科学 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 自然科学 - 西川純のメモ 自然科学 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 我々は既存の枠組みで物事を理解しようとします。多くの場合はそれが最適解です。そして、多くの場合、理解しようとすらせず、今までやったことを適用します。これを打ち破るためには、今まで当然とした前提を疑い、その前提を除外した世界を構築する必要があります。それを現実に適用し、その妥当性を検討します。自然科学の作法です。

 しかし、この自然科学の作法は苦痛を伴います。当然とした前提を疑うこと、それを場外した世界を構築することは苦しいのです。例えば、「摩擦のない世界では・・」と考えようとしても、「だって、摩擦がないなんてあり得ないじゃないか!」という心の叫びに抗しがたいのです。

 昨日、ゼミ生達がある学校を参観しました。帰ってきたゼミ生に聞くと、理念として語っていることは私と同じだが、授業はその理念と真逆なことをやっているとのことです。だから、帰りの車の中でモヤモヤしながらして、今日もモヤモヤしているようです。

 しかたがありません。現状に囚われている限り、現状の前提と矛盾のない範囲の「改良」は出来ますが、現状の前提を捨て去る改革は出来ません。だから、本丸の授業を変えることは出来ないのです。

 私だって、二十年前の私が今の私を見たら「なに、とち狂っているんだ」と思うでしょう。私は二十年以上、コツコツと理論の基づき、一つずつ前提を捨てた実践を行い、その成果を分析しました。それが今の『学び合い』です。理論がなければ、組織的な実証研究がなければ、越えられない壁です。これは研究者の仕事です。実践者は、それを選択するか否かなのです。これを決めるのは問題意識です。楽しい授業、分かりやすい授業を求めるだけならば、壁は乗り越えるのは苦しい。でも、乗り越えた人が一定数いれば、楽しい授業、分かりやすい授業の人も乗り越えられる。