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2019-11-27

[]凡夫の生き残り策 09:14 凡夫の生き残り策 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 凡夫の生き残り策 - 西川純のメモ 凡夫の生き残り策 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 星新一は数多くのショートショートを創りました。その一つ一つが斬新な発想です。彼がどのようにしてその発想をえたかは知られています。箱の中に話題となっているキーワードを数多く入れます。その中から3つを選び出し、それを含んだ話しを創り上げるのです。一つ一つのキーワードはよく知られていますが、異質なものと組み合わせるとき、斬新な切り口が見えるのです。

 この手法は落語に古くからあります。三題噺です。客席から「人の名前」「品物」「場所」のお題を出してもらい、それを組み合わせた噺を即興で創り上げるのです。名作の芝浜、鰍沢が有名です。

 人件費の十分に上がった同一規格の製品、サービスを安価に大量に生産するという工業化社会から、高価でオリジナルなサービス・製品を少数生産する脱工業化社会に移行します。移行できない人は、AIやロボットを利用するほどの旨味のないサービス、製品の生産に携わります。結果として低賃金になります。そして、AIやロボットが安価になるに従って、賃金は安くなります。

 高価でオリジナルなサービス・製品を少数生産するには、自身がオンリーワンの存在にならなければならないのです。その際重要なのは、自身も持っている能力の高さではなく、希少性です。例えば、フィールズ賞を狙える超天才であったとしても、ヒルベルト問題などの問題を解決しようとするなら超天才達と闘わなければならないのです。そして勝者はたった一人です。最悪、ヒルベルト問題に生涯を費やしたが、他者に解決された場合、その超天才の能力は価値0になってしまうのです。簡単に言えば、芸能界みたいなものです。

 超天才でも厳しいのですから、凡夫が足を突っ込んでは絶対にダメなところです。

 では、凡夫はどうやってオンリーワンになるか?それは自身の業界では使われていない何かを組み合わせることによってです。

 私は150を超える査読付き学会誌論文の業績があります。教育学系の研究者の平均の10倍ぐらいの業績だと思います。しかし、私は天才ではありません。どうやったかといえば組み合わせです。

 私が研究の世界に入った頃の教育学研究の世界は、教育史、比較教育のように人文系の研究が主流でした。結果としてコンピュータの強い人は殆どいません。一方、私は学部で生物物理学を専攻していたのでコンピュータに対する親和性は高かった。そこで、大型コンピュータ、パソコンをフルに活用し論文を書きまくりました。なにしろ、その当時は統計分析している研究が殆ど無かった時代です。その中で私は林の数量化理論第4類を駆使しました。おそらく、学会誌の査読者の中でそれを理解出来た人はいなかったと思いますが、統計分析が必要であることは理解していたのでアクセプトされました。

 その後、私は認知心理学と組み合わせた研究で業績を積み上げました。当時の教育学ではせいぜい1950年代のピアジェレベルの心理学しか参照していなかったのですから、1970年代以降に勃興した認知心理学は斬新でした。

 その後、統制実験のくびきを離れることによって、『学び合い』研究にシフトしました。現在は経営学を参照しています。

 私は「異質なものを組み合わせれば凡夫でもオンリーワンになれる」証拠だと、不遜ながら思います。

 だから、規格化し、同時化している今の教育で非正規雇用者が量産され、量産され続けていること危機感を持っています。学習指導要領で規格化している教育ではSociety5.0を生き抜ける日本人を育てられません。生き残るためには人と違ったことを組み合わせることです。それも本人がその能力を持っていなくてもいいのです。異質な業界の人と繋がっていればいいのです。https://amzn.to/2KWrcxP