学生時代のことです。昼飯でラーメンを食べたら味がしません。同じものを頼んだ友人は、「そんなことはない」と否定します。確かに、色もあるし、においもします。しかし、味がしません。原因はたばこの吸いすぎで舌の味蕾(みらい)が麻痺してしまったのでした。そんな私は大学院1年の冬のある日を境に、ぴったりと禁煙しました。方法は、意地の張り合いです。
その日、同級生のTと食後の一服をしているとき、二人が尊敬しているH先輩の話が出ました。その先輩はタバコを吸っていないということで、どちらともなく、禁煙しようかということになりました。その場に持っていたタバコを全部吸い終わって、禁煙開始。最初は、そんなに真剣に考えて決心したわけではありません。私としては、ヘビースモーカーのTが禁煙を守れるはずはないから、きっと吸い始めるに違いないと予想していました。Tがタバコを吸っているところを見つけて、「根性無し!」と笑って、それから吸ってやろうと思っていました。しかし、予想外にTの禁煙は続きました。当たり前のことです。Tも、「根性無し」と私を笑いたくて仕方がなかったのでしょう。
最初は、隣でタバコを吸われると、思わず深呼吸しました。夢の中で、タバコを吸って「しまった!」と目覚めることもたびたび。しかし、Tに笑われることは絶対にいやだったので禁煙が続きました。1年ぐらいで、人のタバコを吸う姿を冷静に見られるようになり、夢にも出なくなりました。それ以来、20年弱続いています。宴会の際に、ちょっと吸おうかなと思うことはありますが、「もう一度、あの禁煙の苦しさを味わうことはご免だ」ということでやめています。
意地っ張りの人には、有効な禁煙方法かもしれません。