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大事な力

 各地の教員採用試験の結果が明らかになる頃です。合格された方はおめでとうございます。でも、私には一抹の不安があります。

 教員志望の学部生は教員採用試験に合格することに集中します。そして合格すると満足します。しかし、合格することと同じくらい大事なことがあります。それは辞めないことです。残念ながら連休前に職を辞する新規採用者は少なくないのです。

 何故でしょう?

 一部の学校現場の人は、大学がしっかり育てて欲しいと言います。失礼ながら笑います。現在、おつとめになっている教師の方々にお伺いします。皆さんが新規採用になったときに直面した様々な問題、それって大学の教育でなんとか出来るレベルのことでしたか?

 教員養成系学部、大学では懸命に教育しています。しかし、それは入り口の入り口しかできません。考えてみてください。掲示物の掲示の方法を大学で教えてもらった方はいますか?少ないと思います。でも、大事ですよね。でも、そのレベルのことを教えていたとしたら、教員養成は数十年でも無理です。

 どんな新人教師も、失敗します。そして、失敗します。そして、失敗します。そして・・・・・・。私もそうでした。皆さんもそうでしょう。では、我々は何故、それを乗り越えて辞めなかったか?それは先輩教師に守ってもらえたからです。先輩から「私も同じような失敗をしたよ」と言われ、フォローしてもらったからです。

 では、今、若い教師が辞めるのは何故でしょうか?それは職員室の教育力が低下しているのです。中堅、ベテランが忙しすぎて若手をフォローする余裕を失っているのです。

 辞めないためには何が必要か?それは、年長者に可愛がられる能力なのです。

 私が上越教育大学の教職大学院の制度設計をしたとき、そのことを根本に考えました。そのために、他大学に無い特徴があります。

 第一は、現職派遣院生と学卒院生がともに学ぶことが出来るのです。多くの教職大学院は、「現職教員が殆どの大学院」と「学卒院生が殆どの大学院」が殆どです。上越教育大学の場合、現職派遣院生が多く、バランスがとれています。そして、現職派遣院生と学卒院生がともに学べる科目だけで構成されているのです。

 経験がある現職派遣院生が学ぶ科目と、経験の無い学卒院生が学ぶ科目は違うべきと考えるのは当然です。しかし、私は学卒院生には現職派遣院生と一緒に学び、付き合い方を学ぶべきだと考えました。実は、これは現職派遣院生にも意味があります。彼らは学校現場に戻れば中堅として若手をフォローしなければならない。それを学ぶ必要があるからです。

 当然、設置計画書でそのようにしたら、文部科学省は難色を示しました。しかし、その意図を丁寧に説明したので例外的に認めていただいたのです。

 第二は、チームで学校に入ることです。一人が特定のクラスに入り、その担任の指導を受けるのが普通です。しかし、研究室単位で学校に入り、研究室が学校の課題に取り組むのです。ただし、現職院生が指導者になるのではありません。あくまでも指導者は指導教員です。現職院生は職場の先輩という立ち位置です。このあたりの間合いは他大学の先生方は分からないのです。というのは、我々が極めて特徴のあるスタッフで固めたからです。

 私の所属するコースは全員が小中高の現職教員としての経験を持っています。同時に、学術研究の業績があるのです。我々の約半数は博士の学位を持っています。だから、学校で必要とされる実践上の課題も、学生が学校で追求したい学術研究も指導できるのです。そして、学生の願いと、学校の願いを調整し、それを学校と学生に語ることが出来るのです。

 もし、合格された方の中で、年長者と仲良くなれる能力を獲得してから就職したいという方がおられたら、上越教育大学の教科教育・学級経営実践コースは歓迎します。合格した人が名簿登載期間の延長を利用して入学する場合は、学費は半額になります。

 不合格という結果だった方もおられるでしょう。過去は変えられませんが、未来は変えられます。未来に「ああ、あのときに不合格だったら、今がある」と言える未来を創ることは出来ます。