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名著

 私は94冊の本に関わっています。そのうち83冊は私の単著もしくは編著です。

 数ある本の中でゼミ生が「名著」と呼ぶのは『学び合い』と無関係の「実証的教育研究の技法」(https://amzn.to/3m4vMKe )です。私の最初の単著なのです。1999年1月に出ました。

 私が上越教育大学に勤めたのは1987年です。それから院生の研究指導に携わりました。院生さんから質問を受けるのですが、みんな同じような質問です。世の中には研究法の本はあります。ところが私の受ける質問に答える本はなかったのです。

 それは、「研究の取っかかり」、「データの定義」、「具体的な論文の記述」の3つです。

 「研究の取っかかり」とは、漠然とした研究テーマを具体的な計画を伴った研究にするまでの部分です。即ち、「一人一人をいかす指導」という一般的なテーマを、学術的にも認められる実証的なテーマにする部分です。

 「データの定義」とは、教師が普通に使っている言葉を測定可能にするため、それらを厳密に定義する段階です。歴史の古い研究分野の場合、測定するものの多くは他者が既に定義ずみの場合が多い。しかし、教育、特に教科教育においては最も基本的な概念を自分自身が定義しなければならない。例えば、「楽しい」、「分かる」のように教育において普通に使われる言葉を、いざ定義するとなると、そのことが極めて困難ですことに気づきます。しかし、それを定義しない限りはデータを取ることができません。

 「具体的な論文の記述」とは、論文特有の言い回し、書き方等を指します。論文の書き方には、平常の文章や授業実践記録とは異なった一定の記述方法があります。例えば、「わかった」とは書かず「明らかになった」と書くなど、実に多くの約束事があります。しかし、平常の小学校、中学校、高等学校、さらに大学においても組織的に教えられることは稀です。

 残念ながら、類書においては以上3点が扱われることは少なかった。そのため、院生が常に同じ点に躓き、筆者は毎年同じことを指導しなければならないのです。

 半分げんなりしはじめて、指導する内容を書き留めたのが本書です。

 本書があるのでゼミ生に対して、私はこまかな研究指導はしません。しかし、問題なくゼミ生は学術論文を書くことができます。7人の人に博士の学位を与えましたが、この本だけで十分です。

 今の在庫がなくなったので、11月30日に3版2刷が発行されました。