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奥義

 私は『学び合い』を実践するための本を数多く書きました。そこには数多くのテクニック、手法があります。初心者はそれを読み、その通りやれば、安全に実践できます。しかし、『学び合い』の奥義が分かれば、そのテクニック、手法は不要です。

 西川ゼミは完全無欠の『学び合い』で運営されています。これを言葉で説明しても、おそらく分からないと思います。一般の研究室と別次元の運営をしているからです。そして、その集団の維持・向上をさせるために、私の本で書いたことを「全く」使っていません。

 しかし、このことをあまり書くと、「剣の道は心である」という言葉と同じで混乱が生じてしまうし、不安になってしまいます。だから、初心者の人は先人が切り開いた「型」をしっかりと学び、その通りにやることを薦めます。

 まあ、『学び合い』を3年以上実践し、かなりの成果を上げている方に書きます。

 何故、テクニックは必ずしも必要ないのか?

 それは子ども達が学び合うこと自体はホモサピエンスの本の脳の中に組み込まれているからです。だから、それを開放すればいいだけのことです。鳥かごの中でずっと育てた鳥であっても、鳥かごの外に出せば大空に羽ばたきます。それにトレーニングも、飼い主のテクニックもいりません。つまり、ほっとけばいいのです。思い出して下さい。自習課題を与えて教師不在の状態にして下さい。何もしなくても大多数の子どもは学び合います。それがもっとも効率がいいからです。

 しかし、ホモサピエンスの本能にないものが二つあります。

 第一に学び合う関係を結ぶ相手が限定されています。ダンバーという研究者によれば150人がホモサピエンスの限界だそうです。この数は親・兄弟・親戚や近所の人を含んでいるので、まあ、学校であったクラスメートの場合、数人程度が限界です。

 第二に、学校で学ぶもの大部分に対して、学ぶ意義を持っていません。

 だから、教師がやるべき仕事は、ここにあるのです。

 どうするか?

 集団の中のキーパーソンとなる、イノベーター、アリーアダプターの16%の子ども達に、多様で、多数の人と関わり合うことが得であることを納得させなければなりません。その場として、学校の勉強が有効であることを納得させなければなりません。

 まあ、型どおりのことをやっていれば、8割か9割ぐらいの子どもが有機的に関わる集団をつくるのは比較的簡単です。ただし、型どおりにやった場合です。でも、最後の1割、最後の一人までも含んだ集団にするのは驚異的に大変です。何故なら、その人達を集団に組み込むには、キーパーソンはもの凄く頭を使い、苦労しなければならないからです。単純に、楽しい、勉強が分かる程度では手抜きをします。

 だから、面白い授業、分かりやすい授業のために『学び合い』を実践している方では、この壁を越えられません。

 ユーチューブで私とゼミ生の会話は公開しています(https://www.youtube.com/channel/UCYaLRGq6dbEP63IGwQd0QFA)。聞けば分かると思いますが、『学び合い』のことは殆ど会話に現れません。その代わりに何を話しているかといえば、これからの社会はどうなるのか、そこで幸せに暮らすには何が必要かを語り合っています。そこでは経営学、経済学、歴史学、生物学の知見に基づいて語ります。

 頭の中に、脱工業化社会のモデルが創り上げられると、自然の多くの人とは違った見方で問題を見ることが出来、多くの人とは違った解決の道が見えてきます。