志

　まさか投資の本まで書くなんて考えてもいませんでした。しかし、これは教師になった３６年前からの志につながっています。

　そもそも、この３６年間、私を突き動かしているのは、子どもを不幸にしたくないという思いです。大学院を修了して勤めた高校は、学力的に最底辺の学校です。家庭的に重い業を抱えています。私は子ども達を猫かわいがりしていましたが、その子達がどんどん奈落に落ちていきました。それが耐えられなかった。だから、大学教師に逃げました。

　それから、どうしたらいいかを追い続けました。最初は、ごく普通の研究者でした。しかし、その研究の結果、今の教育では全員を分からせることが出来ないことを実証的に明らかにしてしまいました。そこから多くの人からは変と思われる『学び合い』研究に突き進みました。

　最初は、多くの子どもの人間関係が向上しました。やがて学力が上がることが分かりました。それが、特別別支援の子どもも巻き込めることが分かりました。クラスの改善から、学年の改善、学校の改善に広がりました。でも、学校を卒業してから・・と思い始めました。

　そこで、学歴の経済学以降の本が生まれたのです。これからの社会はどんな社会で、その中で進路はどうあるべきかを伝えたいと思いました。でも、脱工業化社会の私の頭と、世の中の工業化社会の動きのギャップに苦しんでいました。しかし、今の教育に不満足な子ども・保護者のための本も書けました。

　ここまでくると、私自身を笑ってしまします。

　あるとき、現職ゼミ生が学卒ゼミ生に色々と話しているのを横で聞きました。そして、愕然としました。みごとに何にも知らない。でも考えれば当然です。教師の中でのイノベーターあたりでも、iDeCoやNISAでとどまっています。今から２０年前に投資で経験した成功と失敗。最近の仕組みの変化。これをゼミ生達が全く知らないことに、愕然としました。まあ、知っている人間には当然のことが知らないのです。

　同時に、今、私が知っている知識をゼミ生に伝えても、無理だと思います。理由は二つです。第一は、最新の情報に基づくメンテナンスが出来ない。第二は、投資の基本の長期が分からない。私が４０歳代で分からなかったのは、分散投資だけではだめだということです。多くの人がイメージしている投資とは、上がったら買う、下がったら売る。でも、それはそんなのです。そもそも、今の公務員の年金制度を全く知っていない。だから、うんちくを語り始めました。で、ふと、気づきました。多くの教師はそれを知らない。そして、保護者も知らない。そして、子どもも知らない。

　おそらく、圧倒的大多数の教師は医療保険にすがり、貯金にすがるでしょう。その人達を変える力は私にはない。『学び合い』のセオリーです。でも、分かる人がいます。２０年以上のスパンで投資を考えられる教師を育てたい。

　じゃ何故。

　長期分散投資の意味を分かる教師を育てたいのです。

　今は、株価が暴騰している時期です。でも、暴落します。絶対に暴落します。そこでです。損切りせずに、ほっぽらかしにする人。いや、投資を増やす人が、長期で勝つ人なのです。これが分かった教師が、おたより、で伝えて欲しいのです。そして、希望者には私の本を貸して欲しいのです。

　そうすれば、その保護者が子どもに投資を勧めるのでしょう。そうすれば子どもの老後が守れる。

　日本人が選択する、貯金は、最も知恵のない老後対策です。

　私は最初に教師になった時の志に囚われています。

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