学術の世界では、「あなたの考えはナイーブだ」は、最大の侮辱にあたります。専門家に対して素人だと言っていることですから。
進学率が高くなると出生率が低くなると人口学で言っています。これは東京の私立大学に進学させている私はよく分かります。我が家は一人っ子ですが、二人、三人のご家庭はどうやっているのだろうと思います。だから、少子化対策として学費の減免を考える人がいるのは当然ですが、いかにも素人的(ナイーブ)だとも言えます。
2030年教師の仕事はこう変わる(https://amzn.to/3yqowyt)で書きましたが、世界の高等教育の事情と日本(まあ、それに韓国、中国)の高等教育の事情は決定的に違います。案外、知らない人が多いと思います。
第一に、諸外国の大学の多くは、大学と言っても実際は日本で言えば専門学校に対応します。特定の職業と一対一対応するジョブ型なのです。アカデミックな大学はありますが、それはごく一部です。
第二に、日本は高校を卒業して、直ぐに大学に進学します。しかし、多くの国では高校卒業後に就職し、お金を貯めて、自分のお金で大学に進学します。大学入学年齢の平均は、オーストラリアは二十六歳、ノルウェーは三十歳、アメリカは二十七歳、オランダは二十二歳です。社会経験を経てからの大学選びなので、ジョブ型大学が中心になるのは当然です。
ところが日本の場合は高卒の十八歳の生徒が非ジョブ型大学を選んで進学します。そのため、経済状態の良くない日本では奨学金で入学し、返済できずに破産する人も生まれています。
こういった違いによって、日本の大卒は悲惨な状態に追い込まれているのです。学歴の経済学(https://amzn.to/38mgDQ4)に書きましたが、既に、「中卒より高卒、高卒より大卒、同じ高校、大学だったら偏差値の高い方が良い」という至極単純な学歴モデルは崩れているのです。簡単に言えば、中途半端な非ジョブ型の大学卒は、相対的に偏差値の低いジョブ型大学卒、ジョブ型高校卒より厳しい生活が待っているのです。
もし、私が為政者ならば、アカデミック型の大学をジョブ型大学や専門学校的大学にシフトさせます。そのため、現在の大学=アカデミック型であることを前提としている大学設置基準を大幅に変更します。
次に奨学金制度を変えます。18歳入学者に対する奨学金は、学業等の著しい人のみとします。その一方で、社会人経験者に対しての奨学金を充実します。アメリカでは軍務についた人に関しては、極めて有利な奨学金があります。日本でも自衛隊に適用してはいかがかと思います。社会人経験があれば、大学選択の基準が変わりますし、見方もシビアになります。当然、中途半端なアカデミック大学は淘汰されます。従って、自らの意思でジョブ型に移行する大学が増えると思います。
以上は私のアイディアというより、欧米で既にやっていることです。
日本の大学進学率は5割ですが、18歳人口の減少で危機的な状態になっている大学も生まれています。ところが世界には8割、9割の国さえあるのです。ようは、就職に本当に役立つ大学に脱皮するならば、日本の高等教育は成長する余地があるのです。
枝野さんにこの程度のことを伝える人はいないのだろうか?