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責任

 今から書くことには複数の主題があるので複雑かもしれません。

 以前、ある地方自治体の教育長が『学び合い』で教育を立て直したいとご希望をされました。私のレートを明示して、受け入れるので、サポートしました。そこに行くと、色々なところに移動するとき、運転を担当する方がいました。その方は私に『学び合い』のことを色々と聞くので、教員出身の指導主事だと思い込んでいました。しかし、話をしていると、事務職の方であり、たまたま教育委員会に異動した方だそうです。

 あるとき、その方から「私は西川先生に感謝しています」と言われてビックリしました。その方は「学歴の経済学」を読み、息子に読ませたそうです。息子はその方と、その方の父(つまり祖父)に現状を聞きました。ちなみに、お二人は大卒です。しかし、大卒の意味があまりないことを理解し、高卒で地元の森林組合に勤めたそうです。父、祖父とも、その選択が正しいと思っていました。そこで、感謝されたのです。

 これに似たようなことがあります。地元にある県立病院に診察に言ったとき、受付の人が私の名前と保険証が上越教育大学であることを見て、「先生の本を読みました。ありがとうございます」と言われて恐縮しました。その方との会話は、それだけですので詳細は分かりませんが私の本が意味があったのでしょう。

 振り返ってみて、高校時代に私の書いたレベルを理解していたら、私は大学に進学したでしょう。でも、義務教育段階で理解したら、もしかしたら大学に進学しなかったかもしれません。大学に進学したとしたら、大学院に進まず、就職したと思います。

 世の中には、中卒より高卒、高卒より大卒、という学歴モデルの延長上で大学院に進学する人がいます(私もその一人です)。そして、鳴かず、飛ばずの人が大量生産されています。研究者の世界は受験の世界とは違います。真面目に積み上げれば結果を出せる世界ではありません。でも、若い学生にそのレベルのことを分かる人はごく一部の人だけです。

 良き師に出会えば、基礎的な研究方法論と、進むべき方向性を与えてもらえます。

 だから、研究者で一番大事なのは、師を選ぶ能力なのです。

 私は博士課程の学生を受け入れる条件として、修士課程で指導した人であること、そして、「私は何も将来に約束はしない、それでいい?」という確認をします。(でも、全ての人に可能性は与えましたけどね。だから、無職の人はいません)。

 息子は大学の学部の途中で、研究者に関して興味を持ちました。息子の性格は研究者向きです。でも、私は勧めませんでした。理由は息子は才能はあっても、天才ではないからです。だから、私と同様に、よき師、よき先輩に恵まれる必要があります。しかし、そのような師と先輩がいない組織もあります。大学は凋落する組織です。

 ということで、それを手放せる状態になったとたんに、関わらなくなりました。

 博士課程に関わるのは、その人の人生に責任を負うことなのです。もの凄く、恐ろしいことです。