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到達点

 本日、ふと気づきました。教え子の夢を半年ぐらい見ていません。

 私がカリスマ教師だったが故に、奈落に落とした教え子がいます。教え子は最後まで私を良い教師だと記憶するでしょう。しかし、それ故に子どもを奈落に突き落とした。これは義務教育の教師、偏差値40以上の高校教師は、その罪を犯しても一生涯気づかない。

 最底辺の高校教師だから、可愛い教え子が奈落に落ちる姿を見なければならない。そして、カリスマ教師だった私は大量生産してしまった。私が教えた時間も、私が去った時間も、子どもたちには「いい先生」とみられたでしょう。それは教師ドラマの主人公が「いい先生」とみられると同様に。しかし、その「いい先生」が子どもを奈落に落とすのです。

 『学び合い』研究によって、その構造を知れば、その罪深さが分かります。

 しかし、採用直後の私に分かるわけない。私は世の人の多くが信じる「いい先生」を目指しました。語弊がありますが、私は良き先輩から可愛がられ、研究熱心な私はその方向で最高度まで短期間で達してしまった。気分が良かった、天狗になった。

 でも、多くの子どもを奈落に突き落としてしまった。

 それ故、定期的に教え子が夢に出ます。夢に出る教え子は、私に懐き、私に笑顔で話しかけます。それに対して、私は泣きながら謝罪し続けました。若い私は学会での評価を高めることに邁進し、結果を出し続けました。でも、それが教え子の救いに繋がらないことを理解しています。このころが一番頻繁に夢を見ました。

 やがて、『学び合い』研究を進める中、深める中で、「どうすれば良いか」が分かります。気を緩めると夢を見ます。だから、全力でやり続けました。本を書き、不誠実な人とも繋がり続けました。ま、その結果として不整脈になりましたが。

 それからは関わる人を考えるようになりました。幸い、私が全面にたたなくても『学び合い』を守る層の厚みが深まるようになりました。その一方で、私の後進を育てることを注力し、かなりの成果を上げました。この20年は後進を守ることに頭を使いました。

 そして、3月に退職です。

 退職前の半年間は我が儘放題です。なにしろ所属組織の会議にも出席しません。同僚の方々からは「西川先生も退職前に惚けたな」と思われたかもしれません。そして、退職後は、その状態よりも「ものすごく」幸せです。

 ま、幸せを感じるより、不幸せ・不快を感じないのです。今は、好きな本やドラマをどっぷりと見て、オンラインゼミ生と大笑いし、書くべき本を書いています。何よりも、家内と普通に過ごしています。

 大学入試は地獄のように受験勉強をしました。なにしろ、高校2年の冬の模試で英語の偏差値が27だったのです。その私が筑波大学に合格できたのですから。大変でした。でも、入学後、「あの苦労は報われた」と思うほどの学部1年、2年でした。今の私は40年間の教師人生を「あの苦労は報われた」と思う日々を過ごしています。

 生き方レベルの『学び合い』とは、これが成り立つ、もしくは成り立つことが確約されている状態に自分を設計するように思います。この設計には、「多様な人」は不必要です。徹頭徹尾「自分」です。