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イカゲーム

 本当に馬鹿馬鹿しいことを書きます。おそらく、元ゼミ以外はポカンとする内容です。

 今から3年前のことです。ゼミ生の一人がジャージを着ていました。「おまえなんで着ているの?」と聞くと、そのジャージはイカゲームという韓国ドラマのジャージだそうです。しかし、私は見ていなかったので、「ふ~ん」と聞き流しました。そうすると、ゼミ生たちは「先生、来てください」と口々に言うのです。私は「ば~か。もし着てほしいならば、1万円を出せ。そうしたら着てやる」と大笑いして去りました。

 その日は私の所属する組織の大規模な発表会の日です。その組織の長たる私はもっともらしい顔をして、それなりのありがたい話をしなければならない日です。その挨拶の直前に、ゼミ生たちが「1万円用意しました、着てください」と万札を用意して来たのです。唖然としました。そして失敗したことを悟りました。私のゼミは二、三十人います、つまりゼミ生一人一人が数百円集めれば1万円になるのです。そして、面白いことに乗る馬鹿ばっかりが集まるのがゼミ生です。私は一瞬、もっともらしい言い訳を言って断ろうとしました。しかし、直ぐに彼らは私の鼎の軽重を問うていることに気づきました。綸言ふくしがたし、と言います。私が一度発した言葉をどれだけ守れるかを問うているのです。腹はくくりました。イカゲームのジャージ姿で、組織の会の最初の挨拶をもっともらしい表情で、ありがたい話をしました。会場の中で、私の教え子でかつ、同僚の数人は渋い顔をしていました。申し訳なく思いました。でも、ゼミ生の挑戦に負けるわけには行けません。言ったことを揺るがせないことは管理職にとって必須です。

 でも、修正は必要です。終わった後、ゼミ生には「この手のことは5万円だ」と宣言しました。ま、現役ゼミ生だけでは5万円は敷居が高い。

 長い前置きでした。

 大学院を卒業して間もない人がオンラインゼミに所属しています。その人に結婚式のことを話していると、「え、先生は参加してくれるんですか?」と驚いて聞きました。私は教え子の結婚式には参加しないことをルールにしています。(なぜかは割愛します)これは長い間のルールですのでゼミ生たちは周知です。そこで、失敗しました。私は「講演会のルールは知っているよな。となると、大体、○○万円だ」とゲタゲタ笑いました。ところが、そのゼミ生は真面目な顔で計算し始めたのです。数十年ぶりに結婚式に私が出席し、それなりの祝辞をする価値を計算したのです。慌てて、祝儀の○円も加算だ、と言いました。そうしても計算をしているのです。そして、「全体の予算の割合から言えば一部ですよね」と確認の質問をするのです。ギブアップです。

 多くの人の可能性を高めるために出張するのは、その覚悟がある人のためならば「あり」です。しかし、個人的なレベルで、私の貴重なる時間を費やす予定はありません。上記の予算を超えて、かつ、私は家族と離れて一泊二日の時間を費やすことを説得できる人がいたら考えます。と、ゼミ生に語りました。

 ふ~っと思いました。

 退職後、理不尽な人と関わることは皆無になりました。退職後に私の関わる人は、「旧価値観にとらわれているな、ここを解こう」という人はいます。しかし、学生相手のとてつもなく、馬鹿馬鹿しい関わりをさばく経験は本当に久しぶりです。