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2012-03-03

[]ふきこぼし 08:00 ふきこぼし - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - ふきこぼし - 西川純のメモ ふきこぼし - 西川純のメモ のブックマークコメント

 私は全体ゼミでよく寝ます。質の高い『学び合い』が成り立っている時の「音」は心地よいものです。よく眠れます。そして睡眠学習のように、彼らの会話の中で面白い会話を自動的にピックアップして、眠りの中でそれを考えているのです。

 本日の彼らの会話の中で気になったのは「ふきこぼし」です。『学び合い』は一人も見捨てません。一人も見捨てない、というと「落ちこぼれ」をイメージすると思います。事実、一番悲惨なのは下位層です。しかし、落ちこぼれと同時にふきこぼしにも対応すべきだという言葉がありました。それを一言聞いてからの私の眠りながらの思考です。

 全ての子どもが見捨てられている危機にあるのです。「ふきこぼし」も「落ちこぼれ」も、よい子も問題児も、目立ちます。が、クラスの大多数は目立たない子です。特段のクレーも言わないし、なんとなくその他大勢でくくれそうに思います。が、全ての子どもはみんなその子の人生を精一杯生きているのです。私が高校から大学に異動したあと子どもたちは手紙を書いてくれました。そして最後まで手紙を書き続けてくれた子は、ごくごく目立たない子どもでした。その子の手紙を読むと、その子が実に多くのこと考えており、悩んでいることを知りました。そして、その子に何もしていなかった自分を知りました。

 『学び合い』で一人も見捨てないといった場合、一人の例外も無いみんなです。従って、下位層に向けた特別の手だても基本的にしませんし、同様に上位層にもしません。一人一人に対応するのは教師ではなく、子どもたちです。そして、一人も見捨てない集団を創り上げるのが教師です。従って、出来ない子がいないように教える子が生まれるのも当然ですが、出来る子の願いを実現することを願う子どもも生まれなければなりません。

 5年生の息子に、6年生の社会科全単元を網羅する16枚のA3版の業者テストを与え、帰るまでに解いておくように指示しました。帰ってから採点すると、夏目漱石の「漱」などの難しい漢字は書けませんでしたが、ひらがなでもOKという採点基準ならば、全単元に渡って70点以上はとっていました。そういう子もいます。このような子の場合、その単元を越えた中学校の勉強をしたいと言うかも知れません。こうなれば、教師では対応不可能でしょうね。さらに、先に述べたように、全員、一人一人みんなニーズがあるのです。

 では、どうしたらいいか。

 第一に、全学年の『学び合い』が必要でしょう。

 第二に、その日の課題を教師が与えるなどは論外でしょう。月レベルの学習計画を子ども自身が、それも全員が建てられるようにすべきでしょう。これは我がゼミの杵淵さん、中井さんが5年前ほどに実証したことです。

 その上で、教師の与える縛りは、指導要領に沿った単元に関わるテストを何月何日に実施するので全員が一定の点以上をとることを求めるのです。

 となると教師は何をすべきでしょうか?それは対外的な交渉をしなければなりません。そして何よりも金を獲得しなければなりません。多くの子どもは自分にあった教材を本屋で見つけて買ってもらえばいい。また、インターネットで検索し、利用すればいい。しかし、それが叶わない子どもいます。従って、教師は多様な教材を教室の端に置いておく必要があります。全学の人材でも解決できない高度な課題に取り組む子がいるかも知れません。それだったら、全国の仲間と連携し、スカイプなどで繋げられるようにしなければなりません。これを実現するためには、机間巡視している時間を削って、各種の助成団体に予算獲得の書類を書くべきです。そして、全国の人と繋がるためにブログやメールを活用すべきです。つまり、私がやっていることです。

 と考えているうちに、本格的に寝てしまいました。

[]今年度 06:52 今年度 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 今年度 - 西川純のメモ 今年度 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 今年度も西川ゼミは大きな成果を上げました。

 第一に、上越地方で『学び合い』が変な新興宗教という見方から、「え?あそこでも」という段階にシフトしつつあります。これが成り立ったのは、ひとえにゼミ生の人柄だと思います。ゼミ生には「『学び合い』を変と思うのが普通。『学び合い』を分かる君たちの方が変であることを自覚してね。だから、まずは君たちの人を理解してもらって下さい。人は何を信じるかは、誰からの情報であるかに大きく依存します。」とよく言います。彼らは、私の想定を越える信頼を多くの人から得ました。本当に凄いと思います。

 第二に、第一の成果を基に、日本全国から来られる方々に『学び合い』の実際を伝えることが出来ました。『学び合い』の実践自体を見るのだったら、北海道から沖縄まで広がる多くの実践者に頼めばいいことです。しかし、学校レベルとなると数が少なくなる。そして、学校同士の『学び合い』となると、今のところ上越が一歩先に進んでいます。それらの成果を伝えることによって、学校レベルの改革を考えている方々、日本レベルの改革を考えている方々に多くを伝えることが出来ました。今は種ですが、来年度には花開くと思います。

 一人の教師が変われば、小学校で三十人、中学校・高校で数百人の子どもの人生に影響を与えることが出来ます。『学び合い』は計算が速くなるとか、読み取りが深くなる、というレベル「だけではなく」、人としての生き方、人同士の信頼を学ぶことが出来ます。これは例え1年であったとしても、それを経験して大人になるのと、それを経験しないで大人になるのでは天と地ほどの差が出ます。

 今年度のゼミ生は、どれほどの人たちの人生に影響を与えたのでしょうか?それを考えると、身がすくむほどの畏怖を感じます。素晴らしいことです。誇らしいことです。

[]来年度 06:40 来年度 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 来年度 - 西川純のメモ 来年度 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 来年、ゼミとして改良したいことを述べました。

 第一に、学術研究です。西川ゼミの特徴は、学術と実践の融合です。既存修士に所属している時は、一定のスケジュールをこなせば、自ずと学会誌に投稿できるレベルの研究はまとまります。事実、多くの学会誌に掲載されました。ところが、教職大学院は専攻としてのイベントが多いので間合いがとりづらい。結果として、データとしてはダイヤモンドの価値を持つが、それを学術の書式に載せきれる時間の余裕がない事例が多くなりました。もったいないです。これを改良したい。

 第二は、学部生と院生との融合です。大学院の中の現職院生と学卒院生の融合はうまくいっていると思います。無計画な採用計画によって、今の現職者は自分より若い教員と関わった経験が少ない。これは彼らの今後のキャリアには必須な条件です。一方、学卒院生はそれまでの人生で十歳以上離れた人と同僚になることはなかった。ところが、採用されるとそういう人と同僚になる。初任の時は殺人的な忙しさです。そこを健全に乗り切れるか否かは年長者と繋がれるか否かです。そのため、上越教育大学の教職大学院では、それを意図したカリキュラムを用意しています。が、学部との融合は完全ではありません。今年度はそれを補完したいと思います。

 第三は、上越の地の『学び合い』ネットワークです。現在は西川ゼミが中心になっています。が、上越での『学び合い』の広がりは急激で、西川ゼミのマンパワーの範囲を超えています。今後は、地元の先生方を中心に据え、我々がサポートする体制にシフトしなければなりません。それも早急に。

 以上のことを元にして、来年度は上越の地で『学び合い』を広げます。特に、学校の教科学習を核にした地域コミュニティーの再生を具体化するのが来年度の目標です。