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2012-02-10

[]薬 08:20 薬 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 薬 - 西川純のメモ 薬 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 以前、講演会の後の質疑の時間に受けた質問に応えて「『学び合い』はよく効く薬です。でも、用法・用量を守らなければなりません。でも、あまりにもラディカルなので、常識的な先生は薬をいっきに飲むことはしません。大抵は用量を半分にして飲む。しかし、それでは本当の効果は得られないし、時には悪く働く」と申しました。先ほど、その質問者の方から再度、同じ質問を受けたのでメモりました。

 現状、西川ゼミで行っている『学び合い』の手ほどきにおける「方法」は極めてシンプルです。指導要領・指導書・業者テストを参考に、極めてシンプルな課題を作る。そこで大事なのは、学習者の2割以上は確実にその趣旨を理解できることです。課題提示はおおむね2、3分間。その後、子どもたちに任せます。おおよそ40分弱です。そして、最後のまとめです。ありがちな内容の確認はしません。あるのは、全員達成をしたか、そして全員達成のために自分の頭と体の全力を尽くしたか、その一点です。ですのでこれまた2、3分です。不安でしょうが無い人のために、声がけの方法や、課題の作り方のノウハウを伝えますが、なるべく早めに、それらを捨てて、『学び合い』の学校観・子ども観が身体化することを促します。つまり、どういう行動・手立てをしようかと考えなくても、その場その場で体が動くようにするのです。そして、体が動かなくとも心に強くあるように誘います。

 めちゃくちゃシンプルです。が、シンプルなので、『学び合い』の学校観・子ども観に対面せざるを得なくなります。色々な問題が起こったとき、『学び合い』の学校観・子ども観に立ち戻ってどうすれば良いかを考えざるを得なくなるのです。そうすれば、色々の問題があっても学校観/子ども観に立ち戻れば解決できる、という経験が出来ます。それによって、学校観・子ども観がいかに強力であるかを実感できるのです。しかし、手ほどきした人の中でそれが出来る人もいれば、出来ない人がいます。

 常識的な人の場合、従来型との併用を計ります。具体的には、教師が出る場面が多くなり、子どもが任される場面が多くなります。根本的な原因は、子ども集団の能力をどの程度に評価するかです。子どもは子どもと考えるか、子ども集団ととらえ、子ども集団はかなりの能力があり教師を凌駕する(目標の設定以外は)と考えるかの差です。順調にいくならば、やがて子ども集団の有能性を実感し、どんどんシンプルになります。が、逆に、どんどん従来型の比重が重くなってしまう危険性もあります。

 我々のやっているシンプルな「方法」は極めて短期間に、ごく普通の教師でも高いレベルに移行することが出来ます。た、だ、し、そのためには何か問題が起こったときに「学校観や子ども観に立ち戻って考えてみればどう?」と問いかける人、集団と繋がれなければなりません。文章を読んだだけで、そういうことが出来る人はそれほど多くはいません(でも、確実にいますが)。

 従って、そういう人と繋がれる人はシンプルな薬を丸呑みしたらいいと思います。そうでない人の場合は、薬の量を加減して、シロップを混ぜて飲めばいいかもしれません。でも、私は後者で誤りなくシンプルな薬を飲めるようになれるための手立てを考えている次第です。

 現在、貸し切りバスの車中です。ゼミ生一同といっしょにあるOBの授業を参観に行きます。この方は、学校観・子ども観で授業を構成し、極限まで削りきった授業をします。例えば、指導要領の原文を与えるだけで、学期単位を子どもに任せることが出来る方です。と、いうと、大方の方はどん引きしますよね。でも、教師だったら全員経験しているのです。それは大学入試、教員採用試験の受験勉強です。思い出して下さい、「志望校に入る」、「採用される」という文字にして十文字に満たない目標の下で、1年以上の継続した学習を成立させたはずです。そこに必要としたのは何でしょう。その目標を達成したいという強い願いだったと思います。それさえあれば、それを実現する膨大なツールは世にあふれているのです。

 しかし、それを全ての子どもに成り立たせるには子どものネットワークが必要です。そのネットワークを全ての子ども、特に集団をリードする子どもに納得させるためには、何が一番大事かという学校観が必要です。そして、彼らが最大限に自らの頭を使うようにさせるには任せなければならず、そのためには子ども観が必要です。

 茫洋とした風貌と行動の人です。クラスは自由闊達なクラスだと思います。でも、西川ゼミと同じ運営がなされていることに気づけるでしょうか?薬を丸呑みし、そして年々、その薬の純度を上げている集団がどのような集団になるのか。

 以上でよろしいでしょうか?Sさん。あなたは飲みたいんでしょ。じゃ、飲みましょ。私は支えますよ。

追伸 私がもっとあたりの柔らかいあの人のような人になれば良かったのにと思います。本日参観する方は、そう思う人の一人です。ま、自分は変えられないし、全ての人にフィットする人はいませんから。今の自分でもフィットする少数の人はいますから。