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2005-05-14

[]我々 15:21 我々 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 我々 - 西川純のメモ 我々 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 このメモでは「我々」という表現を「私」より多く使います。何故かと言いうと、書かれている内容は私と言うより我々のだからです。私は学生さん・院生さんに「偉そうに」色々なことを語ります。 講演会でも自信たっぷりに語ります。このメモでも「偉そうに・自信たっぷり」に書きます。でも、偉そうに・自信たっぷりに語れるのは、多くのOBの実績があるからです。多くの現場教師のOBが「正しい!」、「使える!」と言ってくれるから、多くの学生のOBが「分かる」と言ってくれるからです。そして、語っていることは、多くの現場教師・学生さんが積み上げたことだからです。だから、「私」と言うことがおこがましいと感じられるからです。

 しかし、後援会・本では「私」、「筆者」という表現を使います。何故かと言えば、メモに比べて後援会・本は公開性は高いからです。基本的な考え方はOBが積み上げたものですが、その表現は私のものです。私はかなり挑戦的な書き方をしますし、言い方もします。OBが積み上げてくれたのは事実(データ)です。その事実を解釈したものを書き、語ります。私の挑戦的な解釈に対する反応は、私が受けなければなりません。従って、「私」、「筆者」という表現を使います。

 しかし、私はこのメモで語りたいのは「我々」の考え方です。そして、私が本や後援会で表現したいと思っているのも「我々」の考えです。私は小学校、中学校の教師の経験はありません。高校教師としての経験も2年にすぎません。私が指導する現職院生さんに比べれば「ひよっこ」です。また、これから小学校、中学校の教師として一生をかけようとする学生さんに及ばないかもしれません。でも、その方々に、自信を持って偉そうに語れるのは、そのような尊敬すべき方々の蓄積を、私は語っているからなんです。私はいっぱい誤るかもしれません。でも、私の知っている尊敬すべき教師(そしてその卵)の英知の結集である、「我々」の考えの正しさを疑う迷いは爪のあかほどもありません。

 仮に、私が不遜に思えたなら、私ではなく、私の後ろにいる多くの尊敬すべき教師(その卵)の考えを稚拙な表現で伝えていることを理解してください。

追伸 現院生・学生さんへ 皆さんと議論している「私」は、百人以上の「我々」なんです。皆さんには様々な経験があり、データがあるでしょう。でもね。私には、様々な経験とデータを持ったOBと一緒になって研究し・議論した経験があります。それが私の強みです。繰り返しますが、皆さんと同様の強みを持った人たちの集合体の強みを借りてきているのが「私」なんですよ。

[]オリジナリティ 15:21 オリジナリティ - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - オリジナリティ - 西川純のメモ オリジナリティ - 西川純のメモ のブックマークコメント

 各学会には、名物みたいな人がいます。物理関係の学会で「永久機関を発見した」と発表する人がいます。明らかな誤りなんですが、自説を曲げません。もちろん、過去の科学の歴史において、パラダイムの変更を引き起こした大発見はあります。でも、そのような名物のような人の発表は、他人の意見を全く聞いていないんです。相手の意見をちゃんと聞いて、その意味を理解しつつ反論していないんです。徹頭徹尾、「私はそう思った」の連続にすぎません。

 学問の世界ではオリジナリティは絶対です。でも、オリジナリティとは、過去の蓄積を理解しつつ、それより一歩進めたことを指します。過去の蓄積を理解もせず、自分はオリジナリティだと主張するのは、愚かか怠惰のいずれかです。

 実証的教育研究の技法に、「アトムの子ら」というSFに登場する天才少女達の会話を紹介しました。彼女らは、『「あまりものを知らない人や、たいして本を読んでいない人だけよ、自分が独創的だと思うのは」とエルシーが言った。「そうね、可能なことはほとんど全部、何千年も前に試みられたし、考えられてしまったんだわ」とステラが賛成した。』と語っています。

 我々が主張する考え方は、多くの心ある教師が分かっていることだと思っています。我々がやっていることは、それを学術の書式で定式化していることです。そして、それをより多くの教師に伝えるために本をはじめとして各種の方法を模索しています。それが我々のオリジナリティだと思っています。そして、私のオリジナリティは、その方向に向けた多くのOBの英知を定式化することを手伝うことです。

 私は、学生さん、院生さんから教えてもらうことを誇りに思っています。その気持ちを持てる限り、成長し続けます。それ故、誇ります。自慢します。学ぶこととオリジナリティとが矛盾すると誤解するならば、名物みたいな人になります。