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親の無力

 昨日、子どもの一生涯の幸せを定めるのは親ではなく、教師であると書きました。それに疑問を持つのは当然です。三つ子の魂百までもという言葉があります。我々の基本的な心の構造を定めるのはごく初期の段階です。そのことを否定するわけではありません。しかし、子どもの一生涯の幸せを定めるのは親ではなく、教師なのです。その真意を補足しようと思います。

 多くの人たちの前提と、私の前提が大きく異なるところがあります。その一つは、知識・能力観です。多くの人たちは「その子」に知識・能力を与えようとしています。私は「その子達」に知識・能力を与えようとしています。多くの人たちはスタンドアローンのパソコンモデルのです。私は多くのパソコンをネットワークに繋ぎ、並列処理でスパコンにしているモデルです。まあ、簡単に言えば、分からなかったり、出来なかったりしたら、聞けばいいし、代わりにやって貰えればいいと考えているのです。これは社会生活も同じで、自分がうまく人付き合い出来なくても、こうしたらいいよと教えて貰える人、代わりに交渉してくれる人がいればいいのです。

 そのことは一生涯の生活を豊かにして、餓死しないことを定めることをこの前の講義で語りました。

https://www.youtube.com/watch?v=RLsUpbjtTnU

 そのような多数で多様な知人・友達を親は創れません、しかし、教師はそれを創れるのです。

 我々の知識・能力は文脈依存的であり、状況依存的であることが認知心理学で知られています。例えば、親との間での経験で学んだ人との付き合い方は、他人との付き合い方に汎化しないのです。他人との付き合い方は、他人との付き合う中で獲得するのです。上記のように多数で多様な知人・友人が出来るか否かを定めているのは親ではなく教師なのです。

 社会生活において、親は殆ど無力であること、逆に言えば親がどんなにひどくても希望があることを知りたければ、「子育ての大誤解―子どもの性格を決定するものは何か」(https://amzn.to/36oPlbe )をお読み下さい。

 私も子を持つ親です。そして上記のことを知っています。だから歯がゆかった。例えば受験に関して、親が「勉強しなさい」と言うより、仲間が「一緒に勉強しよう」と支え合う方が百万倍強力であることを知っています。しかし、息子のお世話になった先生方は、それを知らない。スタンドアローンのパソコンモデルでした。ま、それが普通であることを知っていました。

 親亡き後の人生を親も教師も支えることは出来ません。しかし、教師は親亡き後の人生を支える人的ネットワークを形成することが出来るのです。これは約四十年の学術研究によって到達したヴィジョンです。