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2017-01-12

[]紙切れ 21:34 紙切れ - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 紙切れ - 西川純のメモ 紙切れ - 西川純のメモ のブックマークコメント

 最近、「多くの教師は中央教育審議会答申を読まない」と断言しました。それは実体験に基づくものです。それに対して、「そんなことはない、かなりの人は読んでいる」という反応をいただきました。すみません。つまり私のような人は読まないということです。

 今から三十年以上前に東京都の高校教員に採用されました。暴走族がいっぱいいる子どもたちに物理学を教えるのが私の教師の原体験です。幸い、先輩教師には恵まれました。いっぱい慰めてもらったし、いっぱい教えてもらいました。でも、大変でした。毎日、毎日、新作の授業案を作らねばならない。それも、暴走族も聞いてくれる物理の授業です。笑いあり、涙あり、そして、最低限教えたいこと、それを50分のストーリーに組み立てなければならない。かつて、大学教師になってからある方のドタキャンの穴を埋めるために、1時間半の新作の講演を1時間で作らねばならなかったことがありますが、高校教師時代に比べれば楽でした。だって、黙って聞いてくれる人相手の講演ですから。

 そんなとき嬉しかったのが校外の初任者研修です。だって、新作の授業を作らなくてもいいのですから。どんなつまらない研修だってありがたかった。「今日は授業案を作らなくていい」それだけで満足です。講師の人が何か喋っても、明日の授業の「ネタ」に使えない限り、スルーしていました。

 当然、学習指導要領なんて、関係ありません。ましてや答申なんて関係ありません。だって、明日の授業の「ネタ」はそこにはないからです。

 だから、学習指導要領を読まない、ましてや中央教育審議会の答申を読まない人の気持ちがよく分かります。逆に、それを読み込んでいる人に対して違和感を感じるほどです。

 でも、『学び合い』を積み上げる中で、明日のネタを探すことから解放されました。そして、1年間のことを考えるようになれます。そして、1年間を考える授業の明日のネタを考えるとき、学習指導要領がよいネタであることを気づきます。というか、それ無しには授業の筋が決まりません。そして、それを理解するには中央教育審議会の答申を読むことが分かるようになります。

 みなさん、私が偉そうに、当然のように書いていること、それを昔は全然、全く、完全に、出来ていなかったことなのです。

 でもね。色々なこと解放されることによって、色々な情報を学び、色々な人と語り、色々と考えるのです。そうすると、とてつもないものが見えてくる。そうすると日本国憲法、教育基本法、歴代の中央教育審議会の意味が見えてくる。

 何度も書きましたが、それらは多種多様な人たちの利害の妥協点です。でも、その中には自分自身の志と一致する人がいます。その人たちの思いが込められています。それを生かさなければ、その人たちの政治闘争の汗が報われない。

 オバマ大統領の最後の演説を読みました(https://www.buzzfeed.com/sakimizoroki/obama-farewell-speech?utm_term=.kdZLWr28G#.irmqXNoGB)。素晴らしいものです。さすが議会制民主主義のトップではなく、大統領制のトップだと思います。前者は多様な利益団体に繋がっている議員の心を動かす能力が必要で、後者は移ろいやすい国民の心を動かす能力が必要だからです。

 多くの素晴らしい言葉、心を熱くする言葉の中で、一番、心に残るのは以下の言葉です。

「憲法はとても素晴らしいギフトだが、紙切れにすぎない。それだけでは何の力もない。われわれ人民が、力を持たせるのだ。われわれ人民が、意味を与えるのだ。参加することによって。選択することによって。協力関係を築くことによって」

 教育基本法第1条も紙切れに過ぎません。今回の答申も同じです。それに意味を与えるのは我々なのです。紙切れに力を与えるのは我々なのです。

追伸 「アクティブ・ラーニングはそこそこやればいいんです」と言う人に悪意はありません。ただ、「やる/やらない」しか頭になく、子どもたちがこれから生きる世界のことは「全く」ないのです。

[]次の一歩に進むために 10:54 次の一歩に進むために - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 次の一歩に進むために - 西川純のメモ 次の一歩に進むために - 西川純のメモ のブックマークコメント

 今年度から『学び合い』に取り組んだ方だったら、もう山は越えていると思います。『学び合い』は最初の3ヶ月ぐらいが山です。それを超えれば、「あ~、こうすればいいのね」という感覚が分かります。そして3学期を終わる頃には、「こんな風に子ども集団は変わってくるのね」という感覚を得ます。

 思い出して下さい。

 教員人生で一番忙しかったのはいつです?おそらく初年だと思います。ところが、2年目になると忙しさがグッと緩和される。何故かと言えば、1年というスパンでものを考えられるようになるからです。そこで分かれ目です。流せるようになること慣れるか、その先を進むことを望むか。

 後者の方のための本を用意しています。私の本の大多数は、最初の3ヶ月をのりきるための本です。いわば初級編です。1年の流れをとらえた方のための中級編の本として以下を紹介します。今のうちに読んで新年度に備えませんか?

汎用的能力をつけるアクティブ・ラーニング入門(http://www.meijitosho.co.jp/eduzine/interview/?id=20160759

学び合い』の手引き:アクティブな授業改革編(http://www.meijitosho.co.jp/eduzine/interview/?id=20160564

学び合い』の手引き:ルーツ&考え方編(http://www.meijitosho.co.jp/eduzine/interview/?id=20160564

追伸 上級編は「授業方法ではなく、これからの社会はどういう社会であるかとか、集団を管理するための経営学に関する本を読むこと」と「実践者同士の会話」と熟考です。

[]カリキュラム・マネジメント 07:14 カリキュラム・マネジメント - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - カリキュラム・マネジメント - 西川純のメモ カリキュラム・マネジメント - 西川純のメモ のブックマークコメント

 昨日の大学院の授業で以下のような話をしました。

 今回の学習指導要領の論点整理や答申を読むと、詰め込みかゆとりかの二項対立から脱却したいという思いが強く読み取れます。今までずっと、その繰り返しだった。あることを覚えさせることを強調すれば詰め込みと批判され、覚えたものをどう使うかを学んでないと言われる。では、覚えたものをどう使うかを強調すればゆとりと批判され、覚えていないと言われる。

 では、どうやって脱するか?覚えたものをどう使うかを子どもに経験させることによって覚えさせることしかありません。それがアクティブ・ラーニングと言えます。

 が、「子どもはでは出来ない」、「基礎基本が大事」という従来の考え方から、覚えたものをどう使うかを子どもに経験させる機会を定常的に与えない教師が大多数です。

 じゃあ、どうするか?それが分かる教師が分からない教師に伝えるのです。それも、主体的で対話的にです。つまり、教師集団のアクティブ・ラーニングがカリキュラム・マネジメントです。

 中高は教科担任制です。小学校で教科部会があります。そのような教科縦割りの教師集団の中でそれが成り立つためには教科横断的であらねばなりません。互いに同じ言葉で話すためにはプランを作り評価しなければなりません。それがPDCAサイクルです。しかし、それが教師だけでやれば、大人にするという感覚が欠如する危険性があります。だがら学校外の人を巻き込まなければなりません。以上がカリキュラム・マネジメントの3つの側面です。

 授業の内容を短くまとめると以上の通りです。

これから年度末にかけて、以上の根拠を示して書いた本を3つだします。お楽しみに。